今日は何もやることが無く、珍しくご飯を作ってみる。自分で言うのも何だが元々が器用な方だ。凝ったものは作れずとも人並みレベルの料理くらい。

スロウライフ

 思えば自炊など何百年ぶりの事だろう。ちょっと考えてみるが以前何を作ったのかさっぱり思い出せない。…とりあえずその記憶がかなり曖昧になるくらいには昔で、ならば何故この部屋に調理器具があるのかと言えば、それらは全てドリフトが持ち込んだ物で、彼は暇を見ては自分の元に訪れ、手料理を振る舞ってくれる。
 彼の作る料理は端的に表すならばチープで大雑把、良く言えば家庭的でホッとする味だ。ブラスター曰わく「それって餌付けなんじゃ…」らしいが、食費は基本的に自分が持つので本当の所餌付けしているのは私の方だ。と思う。

 そんなこんなで小一時間後。

「…おいしくない」

 ご飯に目玉焼きはともかく、決して不味い訳ではないが、お世辞にも上手いとは言い難い、どこか残念な味噌汁に("ダシ"を入れ忘れていたのが原因だった)(ドリフトはいつも"ダシ入り"の味噌を使っているのだと後で知る)はぁ…とため息をつき、もそもそと箸をつける。

 これならいつも通り食堂に行けば良かったとひとりごちながら、やはり慣れない事なんかするべきじゃないな。と火を通し過ぎてスが入った豆腐を咀嚼した。