昨晩は最悪だった。
オプティマス・プライムの、私に良い考えがある!に端を発しオートボットとディセプティコンが、親睦も兼ねディエゴ・ガルシア基地にて合同で宴を催し、それは大いに盛り上がった。
まあそれはいい
むしろ喜ばしい事だと思う
「なんかぁバリけぇどが三人いるぅ〜」
…それはビーが酔っ払ってるからだ。心中で密かに呟き、深く嘆息する。
「ハン、俺だって密偵なんだぞバンブルビー!」
あんたもか!!
明後日の方を向いて仁王立ちをし、力強くトンチンカンな事を言うバリケードに、呆れを通り越して疲れがどっと押し寄せる
「なんだよー!!オイラだってその気になれば〜〜っ…っふ、ふっふっふっ…」
「10年はえーんだよ!!ガキンチョが!!!」
ぐでんぐでんに酔っ払い、ちぐはぐな会話をするビーとバリケードを冷めた目線で眺めつつ、さてこの状況にどう埒をあけようかと悩む
「ジャズッ!テメエ寝ーんなーー!!Good morning!!ぉーきーろー!!」
「スタースクリーム、それはオートボットの将校殿だ。俺が代わるから手を…」
「ぐらいんだー!酌しろ!」
うん 殴りてぇ
何故俺はラプターに首根っこを掴まれ、それこそ猫の子の様に扱われているのだろう?色々と哀れむ視線を投げかける、ボーンクラッシャーとブロウルの半ば諦めた表情に、イヤ、諦めないでくれて言うか本当に誰か代わってくれと心底思う。
「グラインダー、あいつはこうなっちまえば、どうせ何言っても無駄だ。とりあえずここは、ボッツのチビに押し付けて…いやいや、この酔っ払いの世話をさせて…」
「ブロウル…せめて言葉はオブラートに包んでやれ…」
ああこいつら、自由に体が動けばマジで殴ってやるのに。
つーか誰がチビだこの野郎!自分は図体でかいからって馬鹿にしやがって、ブロウル後でフルボッコだから覚悟してろよ!!
「別に死にゃしねえだろ、酒だけ確保してとっとと逃げ…いや少し静かな場所で飲み直そうぜ」
「ボーンクラッシャー…もう建て前より本音の方が目立ってるではないか…」
潮の香りが混じる夜風に、宴に相応しい明るい音楽が乗り、それは基地の隅々まで届けられる。空は快晴、濃藍に染まった夜空には金銀の星が瞬き、猫の爪を思い起こさせる鋭い弦月が穏やかに輝いていて、これ以上は無いって位の良い夜なのに
「最悪…」
首根っこを掴まれたまま、芝居がかった仕草でよよよと涙を拭ってみせる。
…うっかり本当に泣きそうになったのは秘密だ。
「…スタースクリーム、そろそろ自重なさって下さい、オートボット方の重鎮や部下一同もいる前で酒に呑まれるなど、あなたの面目が立ちません」
「フン、それなら問題ない」
スタースクリームが空き缶で指し示す先には、派手に殴り愛(当然辺りはちょっとした戦場と化している)をする馬鹿二人がいた。正直あれが両軍のトップなど、知らぬ者からすればタチの悪い冗談以外の何ものでもないだろう
「つーかァよぉ、破壊活動をしないだけ俺のがマシって気がする」
二人を止めようとしたのか、はたまた参戦しようとしたのか定かではないが、黒のトップキックがアスファルトの滑走路にめり込み、これまた黒のMH-53ペイブロウが、逆さまの状態で外壁に突き刺さっていた。
師匠ーー!!とスワイプが泣き出せば、ギュイギュイとサソリも泣く、その惨状を見てか、はたまた単なる泣き上戸かはわからないがツインズまでも泣き出し、まさしく阿鼻叫喚、唯一軍医とその生徒だけが、医療器具片手にワクワクと負傷者の回収をしはじめ、よーく見るとドクター・スカルペルもまじっているようだ。
「おいジャズ…」
「なんだよ、スタースクリーム」
動かし辛い首を何とか上向かせると、戦場でもないのにどこか悲壮感を漂わせる赤い光と目があった。
「とりあえず飲め、飲んで全て忘れろ、それで翌日動けなくなってもなんだかんだで軍医がいるし、多分NESTの奴らがどうにかしてくれる。してくれるよね、寧ろそう思いたい、だったらいいな、いいのにな」
その願いが叶う筈もない事を、スタースクリームはわかっているようで、俺は生まれて初めてコイツに親近感を覚えた。なんかもー明日からは幾らでも優しくしてやれそうな気がする。
上げていた首を下ろすと、生暖かい笑顔のグラインダーが無言でエネルゴンビールを差し出して来た。
酌をするということらしい
毎 明 明 今 そ
日 後 日 日 う
を 日 も も や
歩 も っ
い て
て 僕
ゆ ら
く は
の `
だ
よく考えてみれば、オプティマスが私に良い考えがある!って言い出した時に逃げてりゃ良かったのだと、後になってから俺は気が付いた