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ドリパ 未来パラレル




おだやかでせつない日だった。私は君の手を握り締めていた。


「それじゃあパーセプター、そろそろ出るぞ」

 右手には手桶と柄杓、左手には掃除道具一式を持ったドリフトが、玄関先で私を呼ぶ。私はと言えばお供え物と線香をちょうど風呂敷に包み終えた所で、今行くと一言掛けて立ち上がり、削り花と風呂敷包みを持ってドリフトの元へ向かった。

「忘れ物は無いだろうな」
「さっき確認した」
「そうか」

 外に出ると、ひと月前に比べてずいぶんと暖かくなった風が吹き抜け、ようやく春めいて来たな。と空を仰げば、青い空のなかで白い雲が流れ、まだ枝ばかりの街路樹からはニ・三羽の雀が飛び立った。
 麗らかな。と形容するに相応しい小春日和の下、私はドリフトの少し後ろを歩きながら、ぼんやりと彼の足元を目で追う。
 目的地に向かう道程、お互いに無言だったが、それは気まずさを伴うものではなく、どこまでも優しく穏やかな沈黙だった。
 ふわり、風が頬を撫でる。昨日の春嵐が嘘のようなのどかさに、今日がこのような日で良かったと、そう思った。

 簡素な装飾がなされた鉄柵と門をすぎると、足下がアスファルトから白い玉砂利に変わり、視線を上げれば、似たり寄ったりの墓碑の群れが整然と広がっている。
 死者の墓へ参るという風習は、住む星や文化、人が変わろうと存在し、残された者の心を慰めて来た。
 尤も、私個人としては死後の世界だの霊魂だの、ましてや神など非科学的かつ非論理的で、存在するとは到底思えない。だいいち此処に葬られている死者の大半は、先の大戦で死んだ者達で、残りは様々な事情から、死後まともに弔ってやる事が出来なかった者達だ。それ故墓碑の下には遺体が安置されている訳でもなく、墓碑に死者の名前が記されている程度だ。だが、目の前の彼にとって、ここは意味がある場所だと知っていたし、死者や墓を粗末に扱ったり、ないがしろにして良いとは思っていない。
 先に述べたように墓参りとは、残された者にとっての慰めであり、親愛なる人々の死を受け入れる為に、必要な事なのだろう。だから私もこうして、彼の墓参りに同行させてもらっている。
 ある墓の前で、ドリフトの足が止まった。刻まれた名前の主の事を私は知らない。ただ、ドリフトにとってその人物は、初めての友であるとだけ聞いている。

「…掃除するか」
「私は水場に行ってくる。手桶をかしてくれ」
「頼んだ」

 削り花と風呂敷包みを脇に置いて、代わりにドリフトから手桶を受け取る。彼が箒で墓の周りを掃き清めるのを横目に、蛇口を捻って水を汲み、戻って柄杓で墓に水を掛ける。

「ドリフト、雑巾はどこだ?」
「ゴミ袋の下」

 ここを訪れたのは一年ぶりであるが、大して汚れた様子もなく、墓自体が小ぶりである事もあって、数分で全体を拭き終える事が出来た。彼もほぼ同時に掃き掃除を終え、隅に生えた雑草を抜いて、掃除は完了した。

「きれいになったな」
「ああ」

 満足そうに頷く彼に、風呂敷包みを手渡し、彼がお供え物の牡丹餅やろうそくを準備している間に、花立てに削り花を活ける。彼の手の中で、カチカチと何度か乾いた音を立ててライターに火がつき、ろうそくが灯される。

「はい、線香」
「ん」

 線香の頭からうっすらと白煙がくゆり、仄かな香りが立ち上るが、それはそよそよと吹く風に流され、すぐに消えてしまった。

「……」

 ゆっくりと立ち上がり、無言のまま墓前に手を合わせる彼の背中を、私はじっと見つめる。何度来ても、この時ばかりは彼が何を想っているのかわからず、どこか彼を遠くに感じてしまう。初めて来た時こそ、私も手を合わせるべきか悩んだけれども、結局こうして彼を見守るだけにとどめていた。

 もし、私が死んでしまったら、彼はひとりで私の墓にやってきて、今のように手を合わせるのだろうか。

 ふと頭を掠めた想像を、縁起でもないと深呼吸と共に吐き出し。再び空を仰ぐ。
 母星とは異なる青い空、この星の空の色が目まぐるしく変わるのは、可視光線の波長の違いによるもので、とりわけ青は大気に散乱しやすく、赤は散乱しにくい為に、太陽光が大気を通る距離が短い昼間は、このように空が青く見える。
 この色を、何の気構えや思考を挟まずに、また、他者の受け売りでなく、きれいだなと思えるようになったのは、ここ数百年の事だ。
 春風に揺れる削り花が、かさかさと軽い音をたてる。降る日差しは暖かい。こうしてじっとしていると、うつらうつらとまどろみそうになるくらいには。
 視線を戻すと、彼はもういつもの彼だった。振り向いたその青い目が、僅かに細められ、笑うのかな。と思った時にはもう彼は微笑んでいた。「帰ろうか」
「ああ」
「全部片付けていくか?」
「花はそのままでいい」

 家を出る前と同じく荷物をまとめ、ここに来た時と同じように歩き始めるが、今私の右手は空いている。

「ドリフト」
「なんだ?」
「掃除道具、もう手桶の中に入れてしまったらどうだ」
「…?そうだな」

 彼の左手が空いた。

「ドリフト」
「ん?」
「手を繋いで帰ろう」

 そう言うと、彼の青い目がまん丸になり、次に、少し照れくさそうにしながら手を差し出してきた。

「それは良い考えだな」
「そうだろう」

 彼の手に触れるその時、ふいに先の縁起でもない想像を思い出した。そうして、彼を独りきりにしたくないと、出来る事ならば時の終わりまでずっと隣にいたいと、そう、強く思った。




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AHM ドリフト+レッカーズ?

ある日突然、ブラーの頭にネコ耳が!
ドリフトには、なんとネコの尻尾が!
すべてはパーセプターの計画だったのだ!
「これが私の野望の第一歩となるのだ!」

次回「ネズミ撲滅大作戦!」
果たしてネコ耳はネズミ退治に
効果はあるのか!?


いきなり次回予告より






 ある朝目覚めると、何故か自分は猫になっていた。

「なぁーう!」

 どういう事でござるかー!と叫んだつもりの声は猫の鳴き声に相違なく、がっくりと頭を垂れれば、真っ白いふさふさの毛が生えた両腕が目に入る。いったいぜんたい、何の因果でこんな目にあわねばならぬのか。ああと頭を抱えようと手を上げれば、小豆色の肉球が目に入り、益々わけがわからなくなる。

「にゃーん!」
(誰かいないのかー!)

 はっ!と我に返り辺りを見渡せば、ここが見慣れた基地の中では無い事に、ようやく気が付いた。朝の光が障子ごしに柔らかく差し込み、足下からは真新しい井草の香りがする。

(ええと…確かこれは"畳"という和式のマットレスにござるな)

 話に聞いた事はあるが、実際目にするのは初めてだ。おお…と我知らず感嘆の呟きが漏れ、心が浮き立つ。
 部屋の奥には襖…いや、これは押し入れか。器用に爪を引っ掛け戸を引けば、使われた形跡の少ない寝具がみっしり詰まっており、どうやらここは客間らしいと想像がついた。
 トットッと軽い足音を立てて歩き、こんどは明かりのさす障子戸に手をかけてみる。カタン、と一度つっかえた音を立てた後、戸はするりと開き、爽やかな朝の光が飛び込んできた。

「こら、何を騒いどる」
「にゃっ」

 朝日の眩しさに、しぱしぱと目を瞬かせていたら、突然首根っこを掴んでぽんと抱き上げられる。驚いて顔を上げるとそこには

「なぁぅ?」
(チャー?)

 いや、チャーではない。己を抱き上げているのは間違い無く人間…彼らの基準からすると、そろそろ初老に差し掛かろうという男性だ。
 だがしかし、僅かに白髪混じりの髪に、目尻や眉間の皺、やや骨ばってはいるが、がっしりとした腕、気難しそうだが、同時に温厚さが垣間見える面差しは、どうしたってあのひとを思い起こさせる。

「なんじゃ、あっちこっちの戸を開けて、いたずらなんかしておらんだろうな」

 あのひとのボディカラーに似た、松葉色の甚平も、そう思わせる材料の一つかもしれない。やれやれと呟き、人差し指で喉を撫でる手つきは優しく、無意識のうちに頭を擦り付け、ゴロゴロと甘えた声を出していた。

「なぁぅ、なぁぅ」
(チャーなのか?)
「?なにがにゃーじゃ」

 開けっ放しだった押し入れや障子の戸を閉めながら、初老の男が笑う。残念ながらこちらの言葉は通じていないようだ。

「どれ、早起きついでにあいつを起こしてきてくれんか」

 さて、あいつとは誰の事かと首を傾げるが、そんな戸惑いが通じる筈もなく、階段の前で(二階建てだったらしい)下ろされて、後は頼んだとばかりにどこかへ行ってしまった。
 仕方無く階段を上って二階に顔を出すと、はたして奥の部屋に人の気配がする。一応他の部屋の前でも、フンフンと匂いを嗅いでみるが、やはりそこにしか人はおらぬようだ。ならばと勢いをつけてレバー式のドアノブに飛び付き、体重を利用してドアを開ける。

 ガチャッ

「にゃーん!」
(失礼いたす!)

 カーテンが閉まったままの部屋は薄暗く、しいんと静まり返っていた。これといった敷布も無く、フローリングの床の上には無秩序に本が積まれている。
 そしてお目当てであろう人物は、部屋の脇に置かれたベッドの上にではなく、椅子に腰掛けたまま、机に突っ伏すように眠っていた。よくよく見れば、寝間着ではなくワイシャツにスラックスのまま、つきっぱなしの卓上ライトは煌々と彼の黒髪を照らしている。せめて肌掛けの一つでも羽織ればいいものを、と少々呆れながら足下に擦り寄り、にゃあと一声呼び掛けてみた。

(朝にござる、起きて下され)

 しかし全く反応が無く、何度か呼び掛けを繰り返すも目を覚ます気配は無い

「にゃーあっ!!」
(起きろーっ!!)

「みゅ〜」
(うるさいなあ〜)

(!!?)

 誰もいないと思っていたベッドから声、いいや鳴き声がし、驚いて飛び上がってしまった。慌ててベッドの方を見上げると、布団がもぞもぞと動き、やがて一匹の猫がぴょこんと顔を出した。

「みゃーぅ」
(何なのさもう)

 濃いグレーの毛並み、ほっそりした姿、青みがかった緑色の瞳、いわゆるロシアンブルーという品種の猫なのだが、これはドリフトの知る所ではない。

 す、すまぬ。家人を起こしてくるよう言いつけられた故…とそこまで口にした瞬間、その猫がばっと跳ね起き、物凄い勢いで喋り(鳴き?)出した。

「みゃ、みゃーみゃーみゃー?みゅ?みゃぅみゃぅ!!」
(あ、もしかしてもしかするとご飯の時間なのかななのかな?ねえドリフト?今日のご飯おいしいかな楽しみだね!!)

 そのマシンガントークに目を丸くしている間に、こうしちゃいられないいられない!!と机に飛び乗って、先の己など比べ物にならぬほどの勢いと声量で鳴き始めた。

「みゃーみゃーにゃん、みゃ!みゃぅみゃー!みゅ、みゃーみゃーみゃー!!」
(ねえねえねえ、ご飯ご飯ご飯!ドリフトが起こしに来てくれたよ!ほら起きて起きておーきーてー!!)

猫パンチ猫パンチ猫パンチ猫パンチ

 あわわわ…仮にも飼い主(だと思われる)に対して、あまりと言えばあまりな仕打ちでなかろうか…と、そこで気付いた。目の前の猫は拙者の名前を知っていた。それにこの特徴的過ぎるくらいに特徴的な喋り方はもしや…

「にゃ?」
(ブラー?)
「みゅ?」
(なに?)

 やっぱりか!!

 ふっと、冷静な部分が警告を発する。そして改めてこの状況が異常事態である事を思い出すが、あまりの訳の分からなさにパニックになりかけた。しかし、そんな己を気遣う事無く、すぐさま更なる驚きはやってきた。

「…人を起こす時は、もう少し優しくしてくれると有り難いんだがね」

 間違いない、この、声は…

「みゃーん!みゃ!」
(パーシー!おはよ!)



 ああ、神様プライマス様
 今までまるっきりこれっぽっちも信じていなかったけれど、お願いします。これが夢なら早く覚まさせて下さい

実写 メガオプ+スタスク



なんと、メガトロンの正体は龍だった!?
龍と戦う者である親友のオプティマスはどうするのか!?
そしてスタースクリームの正体とは!?

次回、「私は人と共に生きれない」
メガトロン、どうして・・・

いきなり次回予告より
















「俺はもう、お前を守ってはやれない」

 彼の胸に去来するのは罪悪感か悔恨の情か、頭(こうべ)を垂れ、静かに奏でられる調べにも似たその声は、確かにメガトロンのそれだった。

「メガ…トロ、ン?」

 しかし、今やその身体は大蛇の如くうねり、山のような巨体を覆う白銀の鱗は、異国の騎士が抱く盾の如く輝いている。比類無き膂力を奮った腕(かいな)は、丸太のように太くなり、指の先には勇敢な獅子でさえ一撃の下に引き裂く事が出来るであろう、鋭い爪が生えていた。

 ただ唯一、深い理知と威厳を湛えた鮮やかな紅玉の瞳だけが、変わらぬ眼差しでオプティマスを写す。




 遥か昔、この地に住まう人々は、大地を耕して実りを得、大河で街を結び交易をおこなって都を築き、ささやかながらも穏やかな暮らしをおくっていた。
 しかし、いずこからか表れた龍が大河を住処としてからと言うもの、洪水で田畑が流され、河を渡る舟も沈められて、都は寂れる一方だった。
 かの龍の力は強大で、天候を操り大河を溢れさせ、その雷(いかづち)の咆哮は一騎当千の武人を震えあがらせ。押し寄せる千軍万馬の兵をいとも容易く打ち砕いたという。

 オプティマスの一族は、天より降り立った16人の尊い人々を始祖にすると言われ、彼らは逆賊であり悪神である龍を封印し、この地に新たな都を築いた。
 オプティマスもまた、生まれた時から民と、悪神の封印を守る事を定められているのだ。

 少なくとも、そう信じて生きてきた。

 だが、いいやそれ故に、オプティマスは目の前にある真実を、にわかには信じられなかった。

「我が主よ、お待ち申しておりました」

 その言葉に、びょうと、一陣の旋風が吹き荒れ、土埃と共にオプティマスの衣をはためかせる。地に写る影に揃って空を仰ぐと、そこには異形の鳥が、黒い斑点がある翼を羽ばたかせていた。

「スタースクリームか」
「大鶚(たいがく)だと…!」

 大鶚…戦乱をもたらす兆しとして恐れられるこの怪鳥が表れたという事は、この地に、避ける事のできぬ戦乱という災いが迫っているという事に他ならない

「参りましょう、貴方様の師の下へ」
「言われずともそのつもりだ」

 スタースクリームと呼ばれた大鶚は、ふわりと地に降り立ち、メガトロンに恭しく一礼をすると、じつとオプティマス見やる。しかしそれも一時の事、すぐさま翼を広げて高く舞い上がり、代々の王が眠る墳墓へと飛び去って行った。

 そして、メガトロンもまた

「メガトロン!」

 オプティマスの悲鳴じみた呼び掛けに、メガトロンは僅かに目を伏せる。だが、それだけだった。

「オプティマス…俺は、人と共に生きれない」
「メガトロン、どうして…」

 オプティマスは唇を噛み締め、碧玉の瞳を憂いに沈ませる。だが、その悲痛な問いに解を与える者はおらず。
 乾いた風が大鶚の鳴き声を都の隅々まで響かせて、災厄の始まりを告げた。
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