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ジャズビー

 曰く

―恋とは決闘だ。もし右を見たり、左を見たりしてていては、敗北です―


 これはとあるフランス人作家のカクゲン(正確には作中の言葉)らしいが、今まさに、俺の目の前で激しい闘いが繰り広げられている。

「ねえ、バリケード君ってさぁしつこすぎるよ、ジャズの事はもう諦めなよ!」
「お生憎様、そうはいかねえって事だ、俺さまがっ!!

 鋭く放たれた右の拳を頭を屈めて避けた所へ、カウンターで突き上げられたビーの左膝が右頬にヒットし、バリケードが小さく呻く、そこに一瞬の間すら置かぬうちに、先の右を引き戻して脳天へ追撃の肘鉄が振り下ろされた。が

「っ餓鬼が!!」

 バリケードはそれを上体を捻る動作だけで見事にかわし、逆に肘が空振った一瞬の隙を見逃さず、腕を絡めとって関節技を仕掛け、刹那の間に攻守が入れ替わる。

「って…!二人とも、なあ、すぐに止めろ!辺りをよく見てみろよ!」

 辺りにはへこんだフライパン(へこみの部分が拳の形になっているような気がする)、割れた皿、横倒しになって床に広がる牛乳、小麦粉、ココアパウダーに砂糖、その他調理器具やら食材やらが雑多に散らかっていた。いや散らかるなどという生易しいレベルではなく、無惨に破壊されていると言う方がより正確だ。

「ここはNESTの食堂だぞ!」

 そう、ここは戦場でなければ訓練所でもない、NESTの隊員達の腹を満たし、一時の休息と憩いの場を提供する為の場所なのだが、今や見る影も無い。気づけば入り口付近でレノックスが、黙々と壊された備品をメモしていた。その後ろではアイアンハイドが右腕のキャノンにエネルギーを充填し始めている。
 あ、ヤバい。幸せなバレンタインが光の速さで遠のいてる。と言うか俺はビーのチョコを貰いに来た筈なのに、何でこうなった!


* * *



「……はぁ」

 ぷすぷすと薄く煙を棚引かせる2人を並べて正座させ、事の発端を問いただすと、何ともまあ馬鹿馬鹿しいと言うか子供じみた理由に、元々病み上がりだった事も手伝って怒る気が失せた。

「オイラが一番にチョコあげたかったのにバリケードが邪魔するから…」
「はっ!何故順番まで貴様に譲らなきゃならないんだ」

 ああもう、アホだこいつら

「つーか俺、もうチョコ食べたし」

 途端に触角をぴこぴこ動かし、誰からだとわめくビーのやきもちは可愛いが…俺がリペアルーム行きになった理由を考えればすぐに気付くだろうに

「オプティマス」
「えぇっ!!」

 ビー、頼むからそんな泣きそうな顔するな、あれは兵器…もとい義理チョコ以前の試作品だったんだから

「あとスタースクリームからも貰った」
「なんだとっ!!」

 バリケード…頼むからブレードに手をかけるな、多分お前じゃ勝てないぞ



3:7  でも、もう少し砂糖を足しても良いんじゃないか?

もう遅いとか言わないVD話@

「メガトロンメガトロン!」
「どうしたプライム、そんなに慌てるとまた爆発するぞ」

 今日は青空に恵まれたせいか、気温2℃と真冬にしては比較的暖かく、この基地という場には不似合いな、どこかのどかな空気に包まれていた。スタースクリームを伴い定例報告会に赴いたメガトロンの元へと、同じくジャズを伴ったオプティマスが、足取りも軽くぱたぱたと駆け出して…実際はガシャンガシャンという鈍く重い音が響いているのだが、まあそこはそれ、雰囲気で察していただきたい。何はともあれ彼の機嫌が良いというのは、すなわち今日1日が平和であると――

「凄くいい考えがあるんだ!!」

 その言葉が発されるやいなや、刹那の間すら置かずNEST基地に戦慄が疾る。そこからは全てが瞬間、瞬間、瞬間だった。

 笑顔のオプティマスと膝から崩れ落ちるメガトロン、真っ先にスタースクリームがF-22にトランスフォームし、逃げだそうとエンジンに点火。レノックスの撤退命令がホールに響く中、メガトロンが投げたチェーンメイスが直撃し、やっぱり逃げだそうとしていたジャズの目の前にガションとラプターが落下する。

「え?」

 とオプティマスが目を丸くする頃には、蜘蛛の子を散らしたように周辺に人っ子1人いなくなり、何か達観した(もしくは諦めた)表情のメガトロンと、逃走を阻止された哀れな部下2名のしくしくという泣き声だけが残っていた。


* * *



 というのが実は一週間前だったりする


「さて、今日のトランスフォーマーはディセプティコンの戦艦、ネメシスの厨房から物語を始めよう!」
「………ジャズ、貴様よくそんな笑顔でいられるな」
「そうでもしなきゃ心が折れる」


 ガンガンとやたら派手な音が響く厨房で、ブリテンダーの姿になった(その方が被害を軽減できると判断された為である)エプロン姿のジャズ(紺地に和柄のギャルソンタイプ)とスタースクリーム(サロンタイプでトリコロールカラーのストライプ)が向かい合って同時にため息をつき、音の発生源をちらっと横目で見やる。

「〜♪〜♪♪」

 そこには明るいメロディーを口ずさみながら右手に棍棒…ではなく麺棒を握り締め、板チョコをメタメタに叩き潰しているオプティマスがいた。因みに彼のエプロンは白のサロン+フリルという、何とも可愛らしい代物だが、体躯のいい男が着込んでいるため、いったいぜんたいどうしてこうなった!としか言いようのない状態になっている。

「なあオプティマス、もうその位でいいんじゃないか」
「そうか?じゃあ…」

 とジャズに促されたオプティマスは、用意したボウルにチョコを移そうとするが、適度な大きさに砕かれる筈だった板チョコは、さんざんに叩かれた結果、のしイカもかくやと言うほどぺっちゃんこになって、まな板にへばり付いている。

「あれ?」

 あれ?じゃねえよ。と口にしかけた言葉を寸でで飲み込み、さっとスタースクリームがゴムベラを差し出す。全く、最初からこれでは先が思いやられるな…などと落ち着いていられたのは、やはり最初のうちだけだった。


* * *



「ッざけんな!!貴様はメガトロンを殺す気か!殺す気なのか!!」
「そんな気は毛頭無い!永き争いと戦いの果てに、ようやく手を取り合えた旧き友を我が手に掛けるなど!!」

 だったら今すぐ作り直せ!!と立場も忘れて怒鳴るスタースクリームの横では、真っ青になってシンクに半ば突っ伏した状態のジャズが、腹部と口元を押さえ、必死に吐き気と戦っていた。言わずもがな、原因はオプティマスの手作りチョコである。
 いっそ吐いた方が具合は良くなると思われるが、ジャズは(全くもってスタースクリームには理解出来ないが)流石にそれはオプティマスが傷付くからと言って聞こうとしない。
 テーブルの上には、火加減を誤ったが為に焦げた上に油分が分離した「なんか黒い塊」や直接お湯を注いでしまったせいで「ただの茶色い水」…その他諸々の失敗作が無数に転がっていた。

「だいたいな、料理スペックがマイナスの癖にアルコール混ぜたり果実のフレーバーを使ったりとかいきなり高度な事しようとするな!溶かして固め直すだけにしろ!!」
「マイナスとはなんだ!!」
「現にジャズが、今にもオールスパークの元へ召されそうになってるだろうが!!」


 …これ以上すったもんだを書き連ねたところで、話が無駄に長くなるだけなので一部割愛


* * *



「おい、生きてるか?死んでたら返事はしなくていいぞ」
「はいはい生きてるよ、おかげさまで命拾いしたぜ」

 所変わってここはラチェットの城であるリペアルームだ。結局ジャズはあのチョコが原因で消化器官が機能不全をおこし、駆け付けたラチェットの荷台に乗せられて、強制的に退場と相成った。

「…胃洗浄って苦しいんだな」

 メンテナンスベッドに寝かされたジャズが疲れ果てた様子でポツリと呟くが、スタースクリームもまた、それに乾いた笑みさえ浮かべられないほど精神的に疲弊していた。

「で?あの後どーなった?」
「既製品を買えと念押しした。だが場合によっては、今夜メガトロンがリペアルームに転がり込む事になるな」

 しばし無言の時が流れ、互いにどうしようもない馬鹿馬鹿しさや苛立ちや徒労感を持て余す。

「おい、ジャズ」
「なに、まだなんかあんの」

 何だと聞き返しつつもジャズは、耳をふさいで布団の中に潜り込み、これ以上関わりたくない!と全身で拒否の姿勢を見せる。しかしながら両者の間には悲しい程の体格差があり、じたばたともがいたところで、布団ごと摘み上げられてしまえば為す術が無いのだった。

「そう構えるな、口直しだ」
「え?」

 その言葉にみの虫よろしくな状態のジャズがぴょこと頭を上げると、目の前にはピンク色の粉砂糖で彩られた一粒のチョコがある。……その出来映えからしてオプティマスが作ったものではなさそうだ。
 念の為にスキャンを掛けていると、頭上のスタースクリームが小さく肩を竦め、用心深い奴だと苦笑する。

「ほれ」
「サンキュ」

 口に含めば優しい甘いミルクの香りが広がり、融点が低いそれは噛むまでもなく溶けてゆく。舌触りも滑らかで、文句無しにうまい

「めっちゃうまい」
「フン、当然だ」
「おチビちゃん達にか?」
「ああ。…あと、そう言えば、ここに来る途中見かけたんだが、お前の黄色いチビ助も何か用意していたぞ」

 もう動けるのなら顔を出して来たらどうだ。というスタースクリームの言葉を、ジャズは一も二も無く受け入れて、先までの憔悴しきった様もどこ吹く風、と言わんばかりに意気揚々と布団から抜け出した。

「現金な奴だ」
「うるせ」



ショコラティエの不在証明

ジャズビー編へ続く

スコルポノック+オリキャラ

 年の頃は5・6歳位だろうか、ブラウンの髪を三つ編みにし、アッシュグレイのダウンコートを着た女の子が、妹…いや弟だろうか、亜麻色の髪にお揃いのダウンコート、ベージュの耳当てとマフラーを着けた3歳位の子供の手を引いて、トコトコとツリーの下を歩いている。
 別にそれだけならおかしくも珍しくも無いのだが、あの子達はさっきから同じ所を行ったり来たり、もしや迷子かとカウンターを離れ、同僚に一声掛けて店の戸を開けた。

「こんにちはお嬢ちゃん」

 腰をかがめて目線を下げ、にっこりと笑いかけた…のだが、女の子は無言のまま一歩後ろに下がり、警戒感も露わにこちらを見上げている。
 あちゃあと内心でため息をつきながらも笑顔は崩さず「私隣の店で働いてるの、お嬢ちゃん達のパパとママが近くにいないみたいだったから、もしかして迷子になっちゃったのかしらって、心配になって」と言うと、私の着ている制服のエプロンと店のロゴを見比べ、どうやら納得してくれたらしい。さっきまでの警戒感はなくなり(それでも距離は保ったままだが)、幾分か落ち着いた表情だ。そして

「わたしまいごじゃないよ、そこにブラックアウトいるもん、あとスタースクリームもいる」

 やや拙い口調だが、はっきりと女の子が示した先をみると、向かいの店のショーウインドウ越しに一組の男女が見える。黒髪をきっちり結い上げた体格の良い男が荷物を持ち、下の子とよく似た雰囲気の女性が、何やらあちらこちらを指差して指示している。…それにしても随分若いママだ。どう見ても二十歳そこそこにしか見えないが、この位の年の子がいるのだ。実年齢はもう少し上なのかもしれない。

「お嬢ちゃんのママは綺麗ねえ…」
「んーん、わたしのママじゃないよ、わたしママいないもん」
「え!?」

 予想外の展開に動揺し、我知らず声が上擦ってしまった。もしかして聞いてはいけない事を聞いてしまったのだろうか。しかしそんな私の焦りをよそに女の子はハキハキと喋り続ける。

「スタースクリームはルナのママ、わたしはブラックアウトといっしょなの、みんなでクリスマスパーティーするから、おかいものしてるの、でもルナがね、ツリーみたいんだって。だからスコルポノックがおててつないでるの」

 そう言って下の子…ルナの頭を撫で、どこか得意気に胸を反らす。どうやらさっきの心配は無用だったようで、ほっと胸を撫で下ろした。

「えらいえらい…お嬢ちゃんなら、きっとサンタクロースからステキなプレゼントが貰えるわ」
「うん、ありがと」

 話し出して初めて女の子、いやスコルポノックがにっこり笑い、それにつられてかルナもきゃっきゃとあどけなく笑う。此方も自然と頬が緩み、やっぱり子供は笑顔が一番ねと思いながら幾許か言葉を交わした。それは10分程度の短い時だったけれど、今日1日を快く過ごすには充分な時だった。


Twinkle Star



 あのね、フレンジーがね!あっ、フレンジーはともだちなの、スタースクリームがわたしのママになるかもしれないってゆったの、だからわたし、おねえちゃんになるんだよ、すごいでしょ。

 スタースクリームね、さいしょはブラックアウトとけんかばっかりしてて、わたしあんまりすきじゃなかったの、でもいまはやさしいからすきなの。

 だからわたしサンタクロースに、はやくママがきますようにってたのんだんだよ。

 願わくば、あの小さな天使達の元に、間違い無くサンタクロースが訪れますように。
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ディーノ×サイドスワイプ

「くぉらああぁっ!てめえ!またやりやがったな!!」
「はん!ノンキに昼寝こいてるからさ!」

 NEST基地に響き渡る怒声とエグゾーストノート、それとギュルギュルと耳に痛いタイヤの摩擦音に基地の誰もがため息をつく。ああ、またあの2人か。と
 目まぐるしく駆け回る紅と銀に、たまたま近くに居合わせたウィリアム・レノックス大佐は、相棒であり戦友であるアイアンハイドを横目で見上げ、なんとかしてくれよ。という視線を投げかけるが、彼は首を横に振り、深く嘆息して眉間を揉む仕草を見せるばかりで、止める気は無いらしい。
 今日の発端は何かと注意を向ければ、サイドスワイプのボンネットに、赤のスプレーでかでかと落書きがしてある。

「T.V.B.…?こっちのスラングじゃないな、略語か?どういう意味なんだ?」
「俺が知るか」

 お前たちの星の言語だろう。と鼻を鳴らして此方を見下ろす相棒に、レノックスは眉尻を下げ、小さく肩を竦めやれやれと嘆息した。
 やがて騒ぎを聞きつけた兵士達が集まって来たが、当然ながら彼らを止められよう筈もなく、無力な野次馬と化している。
 その内、1人の兵士が落書きを見て吹き出した。それが滑稽な物を見たと言う風ではなく、どこか穏やかな雰囲気だった為、おやと思いレノックスが問うと、その兵士はイタリア系で、あの落書きも英語ではなくイタリア語の略語だとの事だった。

「で?結局T.V.B.ってのは何なんだ?」
「あれはですね……」


* * *




 駆けて、駆けて、駆け回り。何時の間にか2人は、人気の無い居住スペースの最奥にたどり着いていた。

「貰ったあ!隙ありっ!!」
「隙無しっ!!」
「足払い!!」
「タイヤ払い!!」

 そして、すったもんだの末に揃って足をもつれさせ、真っ黒いスリップ痕を床に描きながら、ドンガラガッシャーン!!という派手な音を響かせて資材に激突。2人仲良くその下敷きと相成った。
 ……。数秒の沈黙の後、先に身を起こしたのはディーノだった。続いてサイドスワイプもがばっ!と身を起こし、フルフルと頭を振って埃を払う。

「いってー…スワイプお前本気になりすぎだろ」
「やかましいわアホたれ、てめえが下らない悪戯すっからだろ」

 つーかどけよ。とサイドスワイプがディーノの左わき腹に膝を叩き込んで蹴り落とす。ガラガラと小物類を雪崩させて転がるディーノを見て、サイドスワイプの溜飲も多少は下がったらしく、先までの怒気もどこ吹く風、とばかりにカラカラ笑い出した。
「ひっでーお前、好きな相手になんつー事しやがる」
「…その自信はどこから来んだよ」

 結構本気で蹴られたらしいディーノは、わき腹を押さえながら涙目で訴える。それにほんの少し罪悪感が湧いたが、元はと言えばディーノが悪いのだし、怪我をさせた訳でもないから(万一そんな事をすればジョルトのお小言が待っている)まあいいや。と気を取り直し、サイドスワイプはやれやれと散らかり放題の部屋を見渡した。
 その素っ気ない態度に、ディーノは小さな声でむうと不満そうに唸り、サイドスワイプの小指と薬指を掴んで Dai! Voltati!(おい!こっち向けよ!)と引っ張る。

「あんなに必死になって俺を追いかけて来た癖に」

 いざ捕まえたらポイってワケか?と珍しくむくれた様子のディーノに、サイドスワイプは心中首を傾げながら、お前が追わせた癖によく言うぜ。と邪険に手をはたき落とした。

「だいたいなあ…何だよこのT.V.B.って、スプレーなんかで書きやがって、全然落ちねーじゃねえか」
「…Ti voglio bene」

 真っ赤な文字が書かれたボンネットを恨めしげに見やり、指先でカリカリと引っかいていると、僅かに目を伏せたディーノが何事か呟く。何だって?とサイドスワイプが聞き返せば、今度ははっきり「Ti・voglio・bene!」と告げる。

「あなたが好き!…そういう意味だ」
「なっ…!」

 人間で例えるなら"驚いて目をまん丸に"して"羞恥で頬を赤く染めた"サイドスワイプは、二の句が告げられず、無意味にぱくぱくと口を動かしてディーノを見下ろす。 そんなサイドスワイプの様子にディーノはニヤリと唇を上げ、ゆっくりと立ち上がった。

「わかんないなら、何回だって教えてやるぜ。俺は、お前が、好きだ」

 からかうような口調だが、その目はあくまでも真剣で、サイドスワイプは我知らず息を呑む。

「C'e` un posto speciale nel mio cuore che solo tu puoi riempire.(私の心の中にあなたしか埋めることの出来ない特別な場所があります。)」

 歌うように、囁くようにディーノの口から言葉が漏れ、そうして、互いの唇が触れ合い、カツンと小さな音が響く。

 静かな衝撃に、サイドスワイプのスパークが強く脈打った。

 驚いたのだ。
 お互いの唇同士が触れたのに、全然嫌じゃなかったから。

「Ti amo(あなたを愛しています)」

 唇を離さぬまま呟かれた愛の言葉に、サイドスワイプはブレインの奥が痺れるような錯覚に見舞われ、ディーノを抱き締める事でその答えを返す。


「T.V.B.」


 好きだよちくしょう!!
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ディーノ×ジョルト

「当てはめ想像バトン2」より
○告白の練習台にされる(3ジョルト)






「あのさあディーノ、僕も暇じゃないんだよ、そろそろ解放してくれない」
「良いじゃねえか、仕事ったってカルテ整理位だろ」

 ディーノの"ちょっとした暇つぶし"に付き合い初めて早30分、本当ならラチェットの手伝いをしている頃だ。しかしながらカルテ整理だって大切な仕事!と説明した所でこの自由人が引き下がるとも思えない、ここは好きなようにさせてやるか

「ジョルト」

 にしても、何だってこんな事に付き合わなきゃならないのか

「愛してる」

 心臓(スパーク)に悪いったらありゃしない

 ここはディーノの私室、の白いソファー(革張りっぽいけど、流石に僕たちサイズの素材を用意出来る訳がないので、きっとフェイクだ)の上、僕の上にはディーノ、ってあれ?

「な、にするの」
「ん?告白の練習だけど」

 れんしゅ、う?
 でも、じゃあなんで僕はディーノに押し倒されているんだろう。いくらなんでも近すぎやしないか

 ぐっと左肩を掴まれ、ソファーに身を沈められる中、やけに大人しいジョルトは、平静を装っている訳でも、ましてこの状況を楽しんでいる訳でもなく、経験が無いためどのようなリアクションをとれば良いのか分からず。ただ戸惑っていた。

「L'amore e` un sogno; ma un bacio puo` risvegliarlo vero」
「え?えっ?」

 ラモーれ エ ウン ソンニォ…音はきちんと拾えているが、何語なのかわからず意味を変換出来ない

 チカチカとオプティックを明滅させ、首を傾げるジョルトの様子に、ディーノがふっと手の力を緩めた。そして口角を上げてくつくつと小さく笑い出したのを見て、ジョルトは益々訝しげな色を濃くする。

「ちょっと、何笑ってるの」

 声音に少しばかりの不機嫌を織り交ぜ、もういい加減にしてよ。とジョルトが起き上がろうとした。その瞬間


 ぎりっ、と装甲が軋む程、僕の肩を握る力が強くなり、驚いてディーノの顔を見上げると、彼はにっこりと微笑み…そう、微笑んでいるのに、何故か背筋がぞくぞくして、蛇に睨まれた蛙のように動けなくなってしまった。

「あ…」

 なんだこれ、僕どうしようどうすればいいのかな、ディーノはなにするつもりなんだろでも、これ、キスされる時みたいだ。いや、そんなわけない、だって僕男だし

 ディーノの顔がどんどん近づいてくるのに、僕のブレインは空回りするばかりで全然働いてくれない。そして、互いの唇が今にも触れ合うという寸前、僕はぎゅっと目をつむった。

「愛は夢、しかしキスはそれを現実へ再び呼び覚ますことが出来る」

 結局

 唇が触れる事はなかった。

「…なに?それ」
「さっきの言葉の意味」

 普段のジョルトなら、一笑に付したであろう甘い台詞も、ディーノの吐息を頬に感じる距離で囁かれたとあっては、そんな風に出来る訳がない。

 ギシ、とソファーのスプリングが軋み、それにジョルトがびくりと身をすくめる。
「お前、結構可愛いな」

 笑いをこらえるような、からかうような声音で、ジョルトははっと我に返り、思いっきりディーノ胸を突き飛ばし…突き飛ばそうとしてかわされ、逆に手首を捕らえられてしまった。

「ぼ…くもう帰るから、練習はもういいだろ、離してよ」
「んー…ま、確かに練習はもういいか」

 ディーノは少し考えるようにチカリとオプティックを光らせ、そう言った。これでようやく解放される。とジョルトが内心で胸をなでおろした時、その言葉に続けて発された
「勿論、本番にも付き合ってくれるよな?」

 という台詞に、今度こそジョルトは絶句した。


この先三叉路
(1YES・2NO…じゃあ3つ目の道って?)
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