Dear starscream.
I am writing to tell you that…
手紙、というツールに興味を持ったのは、つい最近の事だ。それはこの惑星においても古風と言うか、人によっては時代遅れとも感じる、手間がかかるツール。
しかし手紙とは不思議な物で、時に直接会って話すより雄弁に相手に言葉を伝え、また面と向かっては言えない事も、気負わずに伝える事が出来るらしい
また伝えられる側も、間接的であるが故に感情的にならず、落ち着いて言葉を受け取る事が出来るらしい
先かららしいらしいと、煮え切らない言葉ばかり使っているのは、自分にとってこのツールが未知の物である為だ。
我々の文化はあまり文字を必要としない、セイバートロン文字というのもあるにはあるが、最早公用語としては使われておらず。文字を読めない者も少なくない
幸いにも自分とあの人はその例に添わず。彼ならばこれが手紙というツールである事に気付いてくれる筈だ。
自分はあの人に、伝えたい言葉が沢山ある。でも話そうとする度に、それらはいつも判然とせず正しい形になってくれない。
想いを上手く言葉に出来ないもどかしさだけが募り、自分は自然と無口になる。
だから無性に、ブラックアウトが羨ましくなる時がある。あいつはいつだってあの人に、善意であれ悪意であれ遠慮なく言葉をぶつける。またその逆も然り、互いに諍いになろうとも物怖じしたりしない。
自分に出来ない事を、いとも容易く行う2人の関係が羨ましく、そう感じてしまう自分は疎ましい。
だから自分は、手紙を書く事にした。
あの人に想いを伝える為
しかしいざ書こうとして、ペンも、便箋も、封筒も、自分は手紙に必要な道具を何一つ所持していない事に気付く
トランスフォーマーサイズのそれらを用意出来る筈も無く、プリテンダーのボディを使って人間の街に買い物に出る。
所狭しと並ぶ白、ピンク、グリーン、無地、ストライプ、ドット、アニマル、フラワー、カラフルな色と様々な種類の柄に目が回りそうになりながら、封筒にうっすらと青空がプリントされている。シンプルなレターセットを選んだ。
単純かもしれないが、これを見て白雲を蹴散らし、青空を裂くように飛ぶあの人を思い出したから。
何本かペンも買った。インクはどれも黒だが、力加減を誤って壊した際の(人間用の製品は、どれも自分にとって脆すぎる)保険と言う奴だ。
* * *
親愛なるスタースクリームへ
私がこの手紙を書いているのは、当たり前かもしれないが、貴方に伝えたい事があるからだ。
断っておくが、まかり間違っても貴方への批判や軽蔑の類いではない、だからどうか最後まで、この手紙を読んでくれるよう願う。
スタースクリーム、私は貴方が心配だ。
最近の貴方は、ディセプティコンの重鎮という立場を鑑みても多忙過ぎる。
どうかもう少しだけでも自愛して欲しい。余計な世話だと貴方は言うかもしれない。だかそれでも、言わずには居れないのです。貴方はお気づきではないかもしれませんが、他者である私から見ても、貴方は疲れているように思えます。
私程度に助力出来る事は少ないかもしれませんが、些細な事でも構いません、どうか手を貸させて下さい。
グラインダーより
* * *
ゴン、と鈍い音を立ててスタースクリームはデスクへと突っ伏す。
その顔は、人であったなら朱を挿したように染まっているのだろうと予測できる。
排熱の為の呼吸で、床へと吹き飛ばされそうになる小さな紙片を、素早く、しかし破らないように慎重に爪の先で捕まえ、今度は安堵のため息をついた。
(こんなもん、他人に見られたら一生の笑い種だ)
本文と文末の間に、妙に空白が多い気がして注視すると、一度綴った文を消したのか、筆跡だけがでこぼこと残っていた。単なる書き損じかとも思ったが、気になったスタースクリームは、適当なデスクから鉛筆を借り、表面だけをこするようにして文字を浮かび上がらせてみたのだ。
(あの馬鹿…)
こんな状態では、仕事に集中など出来るはずがない
(くそっ…散々にこき使ってやる)
しかしそれこそが相手の望む事なのかと思うと、訳の解らない、悔しさと嬉しさがごちゃ混ぜになったような感覚が湧き上がり。その気になれば容易く灰に出来るそれを、鍵をかけてしまい込む。
内容は兎も角、封筒から便箋に綴られた文字の一つまで、全てグラインダーが自分の為に用意したのかと気付いた瞬間、これを処分する気が失せてしまった。
「はあ…」
がりと頭を掻く仕草をして、手紙の入った引き出しを眺め、また一つため息をつくスタースクリームだった。
いつかお前に、嘘がつけなくなる。
I do not want to watch the figure which you make hot.
Because the reason is because I like you.
With best wishes,
From Grindor