は、は、と吐く息が白く染まる。
ふうわり
ふわり
花が降る
ぼやけて 霞んで
全てが、曖昧になってゆく
【牡丹雪】
ラウンジの南側、外がよく見渡せる窓際の席で1人、紙コップを傾ける。砂糖を入れ忘れたコーヒーは苦く、この一杯を飲んだら部屋に戻ろうと思っていたのに、なかなか飲みきる事が出来ないでいた。別にブラックでも飲めない事は無いのだからいいか。と座ってしまったのがそもそもの間違いで、任務明けの体は椅子から立ち上がる事を頑なに拒んでいる。
(白いな)
窓の外では、絶え間なく雪が降り積もっり基地の周りを一面の銀世界に塗り替えていた。地球暦で3月になり、そこはかとなく春の香りが感じられるようになった矢先の寒の戻りだ。舞い降りる白にある者は眉をしかめ、またある者は感嘆の息を漏らして、任務明けでない連中が黙々と除雪作業をしている。
その中の1人…ドリフトが、時折薄灰色の空を仰ぎながら、白い息を吐く。そんな姿をただただぼんやりと眺めていた。
その時である。突然ぱぁん!と雪が弾け、ドリフトの頭が傾ぐ
つと視線を移せばブロードキャストとブラーが、両手に雪玉を持ち、クスクスと笑い合っている。いったいいつの間に作ったのか、彼らの足元には手のひら大の雪玉が幾つも積み上げられており、それをぶつけられたらしいドリフトが、肩をいからせて何やら二人に抗議している。しかし二人は数秒間顔を見合わせたかと思うと、にんまりとした笑みを一つ浮かべ、ドリフト目掛けて一斉に雪玉を投げ始めた。無論ドリフトもやられっぱなしではない。自慢の刀…ではなく雪掻き用のスコップを構え、流麗な太刀捌きで雪玉を全て叩き落とす。
どうだ!といわんばかりのしたり顔を浮かべるドリフトに、ムキになった2人が先よりも本気の度合いを増した勢いで雪玉を投げ始めた。
「何をやっとるんだ彼奴らは」
「変則ルールの雪合戦…かな」
いつの間にか後ろに立っていたチャーが、呆れ半分苛立ち半分といったようすで呟き、目の前の光景にため息をつく。
「随分熱心に観察しとるようだが、お前さんも仲間に入りたいのか」
「まさか」
チャーの言葉に小さく肩を竦め、ぬるくなったコーヒーを流し込む。やはり苦い
「ならそのしかめっ面はなんだ」
「コーヒーのせいだよ」
「そうかい」
嘘 本当はいじけている。私がこんなに見てるのに、彼が全然気付いてくれない事に。自分をほうっておいて他の仲間と楽しそうにはしゃいでいるのが面白くない
「あんまり見つめ過ぎると、奴さん穴ァ空いちまうぞ」
「そんな繊細な男じゃないさ」
それにこの牡丹雪の中では、しっかり見ていないと霞んで消えてしまいそうだ。と言ったら、それこそそんな繊細な奴じゃないだろうと、チャーは苦笑しながら私の頭を撫でた。