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『ラッキーアイテム、武将の人形』

(黒バス/日向)先輩





「起立、礼」
「「「ありがとうございましたー」」」

「…はぁ」


やっと終わった…。伊澄は安堵の溜め息を零し、席に着いた。
朝、中学時代の後輩と電話を交わした後始まった高校生活。先日入学式を終え、オリエンテーションを含むHRだけが行われた今日は午前授業だが、如何せん慣れない環境とのんびり過ごした春休みから一転した生活のリズムに疲労感が伊澄を襲っていた。仕方ないこととはいえ、疲れた…。そうぐったりしながら机に突っ伏す。周りは帰り支度をしているのか、ざわざわと騒がしい。中には入学早々友達になったのか、楽しげに話す声も聞こえる。残念ながら伊澄にはそんな社交性もなく誰一人話すような相手はいないのだが、今の状況はそれがありがたかった。
新たな友人関係よりも自分の体力諸々優先。帝光中からもそのマイペース精神は健在だ。


「あー…お腹すいた」


グルグルと音の鳴る腹に、ポツリと呟くと胃が動いた気がする。もう12時過ぎだ。そりゃ腹も減るだろう。
動くのは面倒だが欲求にはかなうまいと、うーと小さく唸る伊澄は突っ伏した状態で教室の時計を睨む。無意味な抵抗を続ける伊澄だったが、再度訴えてきた胃の音に天平が見事に傾いた。

悩んでいてもお腹空いたものは空いた。帰ろう。

思い立ったが吉日というほどではないがガバッと机から身を起こす。隣で伊澄の唐突な行動にビクリと反応したクラスメートに構わず、伊澄はノートやプリント類をファイルに挟み、そのまま机にかけていた黒く重い皮鞄にチャカチャカとしまう。初日だから荷物が少ないのは体力のない伊澄にとって救いだっただろう。そんなことを考えもせず、ただ欲求に応えるべく一心不乱に片付けていた伊澄はふと鞄の中に視線を向ける。
黒く輝く鞄に不釣り合いな武将のキーホルダー。何これ、と一瞬伊澄は首を傾げた。


「…?……あ」


眉を顰めていた伊澄だが、それを手にした瞬間朝のことを思い出す。そういえば緑間に電話されて買ったんだった(ガチャポンで)武将のキーホルダー。買ったは良いが鞄に入れてすっかり放置したままだったそれにああーと納得する。ちなみに健忘症ではなくどうでも良いことは頭からすぐ消えてしまう故の放置なのだろう。手持ち無沙汰にキーホルダーを扱う伊澄は困った用にそれを眺めているが忘れたことは既にどうでも良くなっていた。
問題は、このキーホルダーだ。


「…これ、どうしよう」


珍しく後輩の言うことに従って買ってみた武将フィギュアのキーホルダーだが、別に伊澄自体が武将に興味があるかと聞かれたら否と答える。そんなものを家に持って帰っても次に何かするものでもないし、――要するに面倒なのだ。


「学校終わったし自分で買ったものだし…捨てようかしら」


と、ポーンポーンと何回か上に投げてキャッチする。教室の人数も少ないし、ここのゴミ箱に入れても支障はないだろう。家で捨てると分別が面倒だ、なんて考えながらキーホルダーを掴んで立ち上がる。キョロキョロ教室を見回し視界に入ったポリバケツに向かおうとした、そのとき、


「あああ!それは石田三成!?」


と、響いた声に伊澄所か教室に残っていた他のクラスメートもビクリと反応した。伊澄は声が自分に関係あるとも思わずただ反応しただけだったが、ツカツカと音源の眼鏡をかけた背の高い男子生徒が自分に近づいて来るのを見て目を丸くする。次いでガシッと腕を掴まれ、思わず「は!?」と声を上げた。


「お前、それ石田三成だろ!?すげえなこれレアもんなのに!!」
「は?ち、ちょっと、いた、」
「つか捨てんなよ!三成はすげーんだぞだって関ヶ原の立役者でもあって…」


熱心に話す男子生徒だが目所か眼鏡すら輝かせるその表情に思わず伊澄はヒクリと口をひきつらす。
誰だこれ。いや、寧ろ何この状況。
誰かに説明して欲しかったが、残念ながら遠巻きに見ていた他のクラスメートは関わるまいと決めたのかそそくさと帰ってゆく。と、あまりに熱が入っているのか捕まれている腕が痛み出し、伊澄は顔を歪めた。


「い、痛いってば!腕強い!」
「あ?あ、ああ!?わ、悪ぃ!」


訴えかけるとそれに気付いた男子生徒は慌てて腕を放す。はーと伊澄は引いていく痛みに安堵したが、男子生徒は赤く痕がついている白い肌に「げっ」と呻いた。


「うわ、手痕が…!わ、悪い俺力入れすぎてた!?つか大丈夫か!?」
「え?ああ本当。道理で痛い訳だ」
「なんでそんな冷静な訳!?いや俺が悪いんだけど…痛いのか!?」
「ああ大丈夫大丈夫。私いつもこんなものだから」


力関係なく痕つきやすいの、とブラブラ手を揺らす。中学時代に後輩から幾度となくやられて真っ赤な手のひらの痕が暫く消えなかった思い出もあるほどだ。そう苦笑して言えば、男子生徒は戸惑ったように「いや、それ大丈夫なのかよ」とつっこんだ。骨に異常はないから大丈夫だろうと断言する伊澄は伊達に何度も骨を折るなどの怪我を味わっていない。いや決して誇れることじゃないが。
無問題だと言い切る伊澄に男子生徒は気まずそうに頬をかいた。


「その…とりあえず悪かったな。えっと…名前なんだっけ?」
「杉原伊澄」
「じゃあ杉原か。俺は日向順平。戦国武将好きでさ、ついつい熱くなってた。すまん!」
「言わなくてもわかるわよ」
「…だよな」


先程の態度を見てれば一目瞭然だと、呆れたように呟いた伊澄の言葉に日向は顔を逸らす。大体こんな一見して誰かわからないような人形を一発で名指しだ。筋がね入りなのだろう。伊澄の考えはまさしくドンピシャだった。


「…それで?」
「は?」


急に話しを変えてくる伊澄に、日向は疑問符を上げる。まさか声かけた理由も忘れたの?と思ったが、本気で訳がわからない顔をしている日向に再度呆れた表情を向け手に持っていた曰く石田三成人形をカチャリと指に引っ掛けた。


「これ、私捨てたいんだけど」
「あ、あああ!?お前だからそれレアなんだぞレア!!織田信長、伊達正宗、武田に上杉にって数多く有名な武将の中でもマイナーな立場でありながらキーホルダーになった石田三成だぞ!?捨てるなんて、なんつー勿体無いことを…!」
「だって興味無いもの」
「だアホ!今の日本を作り上げてきた役者達になんて無礼だ!?」


また熱が入ってきた日向の言葉に面倒くさい…と伊澄は心の中で思う。口に出さないのは正しいだろうがいつまでも無限ループなそれに、ふうと息を吐き、日向に手もとのキーホルダーを差し出した。


「じゃあ、日向いる?」
「お前戦国武将の魅力を……は?」
「君曰わくレアなこのキーホルダー。私が持ってても宝の持ち腐れだし、大体家に持って帰っても結局捨てるわよ、私」
「え、あ、……いいのか!?」
「いらないならいいわよ。最終的に紙屑の中を泳がせるだけだから。あ、分別するならこの場合危険物になるのかしら」
「それだけは止めて!」
「冗談よ」


真顔で告げた伊澄は本気で焦る日向に「はい」とキーホルダーを渡す。手にしたそれに日向は目を輝かせていたが、伊澄が見ているのに気がつくとゴホンと一区切りし、くしゃりと微笑んだ。





ラッキーアイテム、武将の人形





(ありがとな、杉原!つか杉原ってどこ中出身?)
(帝光中)
(マジ!?でも帝光って遠くね!?)
(家引っ越したから。今はここから5分くらいのとこに住んでる)
(へー。通りで見たことない訳だ)
(じゃあ私帰って良いかしら)
(あ、何か用事あったか?)
(いや、お腹空いたから)
(……そ、そーか)(変なヤツ…)




先輩の高校生活1日目。クラッチこと日向との出会いでした。1日目から変人認識ですがお互いです。武将に熱が入る日向も大概変人だと思うよ。ここから先輩の武勇伝が始まります(始まりません)
友人第一号、日向。

思いっきり捏造だけど、とりあえず一年時は木吉やリコリコとは違うクラスかなーと。どうせ出すなら伊月にしたいです。や、捏造なんだけどね。
あと木吉に誘われるまで日向はバスケのことあまり詳しくなさそうなイメージなので帝光には反応させませんでした。…この辺ちゃんと読んでなかったから曖昧なんだよ。早く単行本、来い。
とりあえず二年生はみんな好きだから満遍なく絡ませたいです。あと日向にだアホ使わせて満足です。どんどん突っ込んでくれよクラッチ!

手痕を良くつけてたのは言うまでもなく青峰や黄瀬ですがさつきの強さでも簡単についちゃう弱さです、先輩。肌が白いから尚更なんでしょうね。また帝光時代でも書きたい。

『背負う過去、歩む未来』

(黒バス/緑間)先輩






『杉原先輩、おはようございます』
「…緑間。今日から高校生活が始まる人間の朝っぱらに電話だなんて一体何の用よ」
『ああ、そういえば高校の入学式は先日でしたか。おめでとうございます』
「…ありがとう」


人の話を聞いちゃいないわね、こいつ。
受話器の向こう側にいる中学での後輩だった眼鏡の少年に眉を顰めた伊澄だが、時計が既に7の針を回っているのを見て体を伸ばす。
3月に帝光中学校を卒業し、昨日は高校の入学式。そして今日からまともな高校生活の始まりである。朝から後輩の声を聞く羽目になるのは頂けなかったが、そろそろ学校にいく準備をしなきゃいけないとベッドから立ち上がり受話器を耳に押し付ける。とりあえずご飯だと台所へ向かった。


「それで?私そろそろ準備に取りかかりたいんだけど」
『随分と遅いですね。もう7時過ぎてるのではないですか』
「当たり前でしょう。家が近いんだから」
『…そういえば先輩が卒業前に引っ越したのを思い出したのだよ。一体どこに行かれたのですか』
「内緒」
『……』


別に言う義理もないもの、と返したら更に沈黙が深くなる。言葉の返ってこない緑間に伊澄は首を傾げたが、すぐに気にせず冷蔵庫から卵と牛乳を取り出す。午前授業だから弁当は要らないし、パンとスクランブルエッグでいいや。受話器を肩と耳で挟んでボールに卵を割ってカチャカチャと混ぜ始めた。


「ちょっと緑間、本当に何なのよ。言っとくけど帝光中には顔出さないわよ」
『っ、それはこっちから願い下げなのだよ!先輩が来てしまったらやかましいのが3人もいるでしょう!』
「それ私のせいじゃないし。大体あの子らからの電話やらで鬱陶しいのは私だし。しかし願い下げとか言われるとちょっと傷付くわ」
『す、すみません』
「冗談よ」
『……杉原先輩』
「あ、ごめん。そろそろ時間だわ」
『ぐ…わかりました』


ゴホン、と緑間が気持ちを切り替えている音を耳にしながらもマイペースに菜箸を動かし続ける。器用に受話器を調整しながら片手でフライパン、片手の菜箸を使い皿に焼けたスクランブルエッグを乗せてやる。パンをトースターに入れてセットすると緑間が『先輩は武将の人形をお持ちですか』と言うのが聞こえ、「は?」と伊澄は思わず声を上げた。


「武将人形…?フィギュアのこと?なんでそんなもの…いや、持ってないけど」
『ならば今日学校に行く前に買うべきですね。そして筆箱に入れて置いて下さい。ストラップは駄目ですがキーホルダーは可能です』
「………緑間、それなんで」
『おは朝に決まってる』
「やっぱりか。そのためにわざわざ電話してきたって言うわけか。バカか!」
『バカとは何ですかバカとは。今日の先輩の運は最悪で、下手すれば大怪我をする可能性があるのだよ。ラッキーアイテムで補正しなければならないでしょう』
「あーはいはいわかったわかった」
『杉原先輩、ちゃんと聞いているのですか!?』


大体先輩は普段から怪我が多いし体が弱いしとグダグダ不満をまくし立てる緑間に、溜め息を零した伊澄は冷めた目で耳から離した受話器を見つめる。余計なお世話だと思ったが、更に怒調されることが目に見えて聞かないふりをする事に決めたらしい。大体もう食べなければ着替えの時間が足りない。チンと音を立て焼きあがったパンとケチャップをかけたスクランブルエッグを机に乗せた。もういいだろうと頃合いを見計らい未だ怒鳴っている受話器を手に取る。


「緑間、もう電話切るわよ」
『ぬ、先輩。良いですね、武将ですよ』
「はいはいぶしょーねぶしょー」
『やはり聞いていないではないですか!?』
「聞いてた聞いてた。学校の行きがけにガチャポンでもあったらやっとくわよ。じゃあね」
『おい、すぎは』

プツ、ツー、ツー

「……やっと静かになった」


受話器を隅に置いて代わりにスプーンを手に取った伊澄はいただきますと手を合わせて溜め息をついた。なんでこんな朝っぱらから疲れなきゃいけないんだ…と、不満が止まらない。唯一の救いは学校に行ってもう緑間含みヤケに絡んでくる彼らと会うことはないことか。


「全く……」


最後の半年間、バスケ部で何があったか知らないが、雰囲気の変化に気を払いただでさえ振り回されたのに、どれだけ心労が増していたことか。前半は更に1人人なつっこいのが増えた後輩のメンバーに絡まれた伊澄だからこそ気になるは気になるが、もう私の領域ではないと思っている辺り傍から見れば冷たいと思われるだろう。だが、彼らの問題が自分じゃどうにもならないのも伊澄は知っていた。
自分が出来るのは相談を受けてカツを入れる位だ。夏の始まりに青峰から、夏の終わりに黒子から、何故か自分に話してきた彼らの顔を浮かべて思い出にふけってみる。


まあ、せっかく後輩が教えてくれたんだ。これから彼らとの関わりはなくても今日くらい言うこと聞いてやるか。


そう思うからこそ彼女はまだまだ繋がりを切ることが出来ないのだが、まっさらなセーラー服に腕を通した伊澄はそんなこと知る由はなかった。
今日から誠凛高校で、伊澄の新しい生活が始まる。





背負う過去、歩む未来





(お、ガチャポン発見)(ガチャリ)
(……石田三成?)(…誰だったっけ)



春らしく先輩の高校生活スタート編。続きます。否、続けたい←
先輩は1人暮らしで朝が苦手です。学校も家の近さで選びました。どこのナガレカワさんですかって?気にしない方向でお願いします(えええ)ちなみに後輩には電話番号は知ってるけどどの学校に行ったのか教えてない設定。ちなみにバスケ部の確執?も知ってます。学校変わったしもういいかと思ってるけど。結構冷たいというより無頓着なのかもね。
高校は勿論誠凛です。フィギュアはフラグ。さて、書きたい所だけ書いていこうか←


『楽園に陥落』

(黒バス/帝光中/青峰)先輩





「なあ、あんたが杉原伊澄?」
「…そうだけど」


ガラガラと突然開いた家庭科室の扉から入ってきた大柄な少年の言葉に、伊澄は一拍置いて冷静に答える。手元はカチャカチャと食器やフライパンを洗っている真っ最中。ここは礼儀として止めるべきかと迷ったが、意外そうな顔をして許可無くズカズカと部屋に踏み込んできた彼の姿を確認し、ままいいかと判断した。
目には目を、歯には歯を。それなりの礼儀にはそれなりの礼儀をが彼女のモットーだ。


「なんだよ、さつきの言うほど美人でもなんでもねーじゃん」
「勝手に入ってきてその言い方は失礼極まりないと思うわよ、少年」
「ああ?そっちこそ人が話しかけてるときに洗いもんするってどーなんだよ」


真横に立たれ、グイッと肩を掴まれる。あっちは大して力を入れてないように見えても残念ながらこちらはそうはいかなかった。思わず顔をしかめて「いたい…」と呟けば、少年は呆れたように肩を竦める。


「はあ?全然力いれてねーよ。つかあんたちっちぇーな。オレの胸の位置だ」
「それは良いから離してくれる、少年。本当に痛いんだけど」
「へーへー、わかりましたよ」


涙目で睨んでくる伊澄に、まるでこちらが虐めている気になってきたのか素直に手を離す。ほっと一息つき食器洗いはあとにしたのか、泡だらけの両手を水で濯いでエプロンで拭いた伊澄は「で?」と少年に向き直った。このままでいても埒が明かないと思ったのだろう。そんな伊澄に真っ正面から見据えられた彼はニヤリと笑っていた。


「君、桃井の関係者…とするとバスケ部?何年かは知らないけど、バスケ部が何の用かしら」
「さつきのこと知ってるってこた、やっぱあんたが『伊澄先輩』か。思ったより可愛くもなんともねーし、胸もねーけど」
「私に用なら早く言ってくれないかな」
「なんだよ、怒んねーの?」
「赤の他人に言われても心に響かない質なの」
「…へえ。変な奴だな。でも赤の他人っつーのは腹立つんだけど」
「だって名前知らないもの」
「1年、青峰大輝」


ああそう、とあっさり返してくる伊澄に少年――青峰は愉快気に笑う。こんなちっこいのが容赦なく切り返してくるのが新鮮だった。普段はその生まれつきの目つきと成長期真っ最中な体格でビビられるのも少なくないのだ。まあそれに伴うように多少暴力的な性格もしているのだが。


「それじゃあ青峰。1年生でバスケ部で桃井の知り合いらしい君が、2年で家庭科クラブの私に何かご用かしら」
「さつきとはただの幼なじみだよ。そうだな…強いて言うなら気になったからって奴」
「は?」


顔をしかめる以外の初めての表情に、青峰は更に楽しそうに笑う。余談だが、そんな青峰の獰猛さの無い中学生らしい表情に、伊澄は更に驚いた。


「だって部活でも大して先輩らと関わらねーアイツがいっつも楽しそうに話すんだもん、あんたのこと。バスケ以外興味ないアイツがさ」
「ノロケ?」
「ちげーよ!大体ノロケはどっちだよ、アイツが話すあんたの話の方がよっぽどノロケだろーが!?」
「…………」


それは完全に不可抗力なんだけど。
口を閉ざしながら、あの後輩は普段どんな話をしてるんだと眉を顰める。自分にその気は無いぞと思い、今度会ったときは問い質そうと決めた。降りかかる火の粉は振り払ってなんぼだ。


「それで、わざわざ幼なじみの言葉の真相確かめる為に来たってことかな。君、部活はどうしたの」
「試合明けの休み。さつきはよそに偵察行ってるから、余計な茶々は入んねーと思って来てみた」
「そう。じゃあもうわかったなら君も帰ったら?私、これ洗いきりたいんで」
「…なんか母親みてーなことしてんだな。ああそうだ、アイツにドリンクの作り方教えたのもあんただったっけ。ありゃ美味かったな」
「あら、嬉しい言葉じゃない」


素直にお礼を良いながら微笑む姿は青峰がまたまた初めて見るもの。思わず驚いて目を開く姿は先程の関係が逆転しているようだった。

『先輩のそばは安心出来るの!』

そう部活後嬉しそうに話していた幼なじみの顔が浮かぶ。これが興味を持たれなかったさっきと、少し心を砕いた今との違いか。
そろそろいいかと思ったのか、黙々とこちらに構わずスポンジを手にとる伊澄に、青峰は口の端を吊り上げる。
それはまるでバスケで強いライバルに勝とうとする強気な笑い顔だった。





楽園に陥落





(マネージャーに誘ったけど間髪入れず断りやがった)(やっぱ簡単にいかない方がおもしれー!)



先輩で楽しもうとする猛獣予定。近い未来力関係は完全に逆転します、当たり前だ←
簡単に言うと青峰出会い編だけどバスケでも強敵求める青峰なんだから普段でも素直にちょちょいといかないのを楽しんでそう。ただしグレるまで。きらっきらしたピュア峰は想像できなかったけど明るい笑顔ならセーフ…セーフな筈だ。これから如何に懐かせるかが正念場です。先輩よ、猛獣使いになるのだ!




かぷ談?
ちなみに青峰と桃井ちゃんは+な幼なじみが好きです。でも桃井ちゃんの初恋は青峰でもいいよ。中2でテツ君ラブになればそれで私は満足。ちなみに総受けは黒子っちです。相変わらずな主人公受けスキーきたよこれ!火黒も黄黒も緑黒も青黒も桃黒も日黒も伊黒も高黒もぜんっっぶ大好きだね(うわあ…)我ながら節操がないです。だがしかしラヴァーが止まらない。夢は辛うじて書けるのにCPは全く書けない腐女子ってどうなんだろう…←

『嬢、決意する』

(ぬら孫/初代時シリーズ)嬢









京で質の悪い伝染病が流行りだしたのはここ最近のこと。私が無闇やたら外に出て屋敷中に感染されるのを恐れたのだろう、オッサンのお陰で珱姫だけでなく私の警護が厚くなりすっかり私も籠の鳥と化していた。
鬱だ。鬱すぎる。こういう時こそ病気を判明して少しでも手がかりを見つけるのが私の役目なのに身動きが取れない状況が悔しくてたまらない。だが、それよりも胸にズッシリとのし掛かるものが存在するのを、不本意ながら心の何処かで理解していた。


「…はぁ」


御簾越しに外を眺めながら溜め息を零す。庭を歩いてるのがチラホラ見える護衛と称した見張りが鬱陶しくて、更に気分は急降下。こんな姿可愛い妹が見たら心配するんだろうなと思いながらも浮上することはない。というより、珱姫に会える筈もないのだ。


あの日からずっと、花開院秀元のもとで自覚した事が私を攻め立てていた。


今生きている世界は作られた世界だと感じていた。詳細が分からなくても未来の真実を知っていた。血のつながりが在るはずの『父親』が父親だと理解らなかった。

愛している『実の妹』と関わりをもった『妖怪』を、『主要人物』――『キャラクター』だと思ってしまった。

じわじわ考えるだけで胸を差す痛みに、うつ伏せになって腕に着物に顔を伏せる。こんなの今更だ。今更なのに、何でこんなに痛いんだろう。
最近は珱姫の顔を見るだけでもそう感じてしまい上手く笑えなくなってしまった。それ以来追求されるのを避けて顔を合わせていない。以前は普通に話せていた是光さんも『そう』なんじゃないかと思ったら祢々切丸を渡したっきり近寄れなくなってしまった。無論、外に出ないからぬらりひょんさんや秀元さんと会うこともない。半場ひきこもり状態である。
なんだこれ、なんでこんな苦しいんだろう。


「もう…やだ……」


帰りたい。『私』が生きていた世界に帰りたい。
ポツリと自然に零れた言葉に愕然とする。生まれて初めてだ。故郷がこんなに恋しくなったの。今までもしかしたら溜まっていたのだろうか、目頭がツンとする感覚に瞳を閉じる。
ああ良かった、と心の底からうつ伏せで寝ている今の状態と女性は御簾の奥という文化に少し感謝。そういえば『妖怪』である彼の前で泣いたことがあったっけ。そう思うと少し笑えた。痛い記憶だがあの時泣けたから今号泣しなくて済んだのかもしれない。


「そういえば…珱姫の前では泣いたことなかった、かもな」


あの子が泣く所はいっぱい見てきたけど。と、ぐずりと鼻を鳴らす。赤くなるのが嫌だから目元をこすりはしなかった。
力が発揮して父親が変わったときから毎日と言っていいほど泣いてたっけ。そう姉さまと泣きながら抱きついてきた小さかった姿を思い描く。それ以前も泣く子だったが、夜になると1人部屋の隅にいるようになったのが放っておけなかった。あやして抱きしめて撫でて、1つの布団にくっついて一緒に寝るのがあの頃の私の日課だったんだ。目元を腫らした珱姫が静かな寝息をたてるまで、背中を、頭を撫でて、自分の胸に押し当てて、トントンとリズムをとりながら優しく叩いて、たまに子守歌を歌ってあげて。
そしてその時からだった。私が外に出て、農業を学んで、医療を行えるようになって、外の話を珱姫に話すようになったのは。珱姫に同情だけじゃない親愛という愛情を本気で考え始めたのは。


「ああ…そっか」


そうだこんなに簡単なことだった。
確かに珱姫を『キャラクター』とも考えていた。彼女は登場人物の1人だった。だけど、珱姫は私の妹でもあるのも事実なんだ。
すんなり出てきた考えに自分を嘲笑するような笑いがこぼれる。


「馬鹿だなー私…珱姫だって、彼だって、ちゃんと目の前にいたのになぁ…」


『登場人物』だと認識したのは私。『傍観者』として遠ざけたのも私。そして『人』だと感じたのも私だ。
矛盾して捻れてどれが一番だったのかわからなくなってきたけど、どれも『私』が感じたことで『私』の考えだけが真実。
だったら今まで通り全部素直に感じていればいいじゃない?


「あー…馬鹿馬鹿」


だってどう考えても『珱姫』と『ぬらりひょん』をキャラクターじゃないと認識するなんて今更不可能。逆に人じゃないと認識するのも不可能。曖昧で確立しない立場にいる私だけど、それで良いんだ。寧ろその道しかとれないんだ。
傍観するって決めたじゃないか。関わるとも決めたじゃないか。だったら最後まで見届けてやればいいんだ。彼が私の大切なあの子を幸せにするのを。彼女が私から離れていくのを。


「それだけが救い、かな」


初めて『公家の壱』の居場所を作ってくれたあの子が幸せになるならば。
うつ伏せにしていた状態から上体を起こす。鼻を鳴らし目頭を押さえれば涙は止まり震えていた体は止まり、ぐいと背伸びをして御簾を上げる。
スタスタと廊下を歩き焦ったようについてくる護衛共に構わず向かったのは、最近寄ることのなかった台所だった。





嬢、決意する





(決めた)(私は最後まで珱姫の姉でいよう)(傍観者でいよう)
(彼が紡ぐ物語を、見守ろう)

(その日、久しぶりに珱姫と夕餉をとった)(珱姫は幸せそうに笑っていた)




うじうじ悩むのは柄じゃねーよ柄じゃねーよなな嬢編。まあここから気合いいれろやなターン何ですが、決意しておかないとオトす段階が楽しゲフンゲフンありきたりになってしまうので。駄目だよ、嬢はベクトルを跳ね返すからこそ嬢なんだから!(一方通行!なんちゃって←)
しかし今更ながら別の世界いったら普通だと泣くと思います。環境ががらりと変わったら尚更。少しくらい吐き出させないと普通じゃない気がして弱音タイム突入にしてみました。まだ葛藤はしてるんだよ。でももういいやと大半思ってるだけで。受け入れたんじゃないです。投げ出したの方が大きいと思う(…)。つまりは嬢も弱いんだよってことさ、多分!←

癒されるといってくれた方に土下座したいくらい鬱な内容すみません!とりあえず次回から原作予定。ただの予定。でも7割方確定。残りの3割は追加ネタ待ち。少し吹っ切れた嬢が書けたらいいなな願望です。あとそろそろ表に書き直そう。

『とばっちりで重症』

(黒バス/帝光中/緑間)先輩
『骨折より重症』の番外編
会話文のみ







「そういえば緑間、その人参またおは朝?」

「当たり前に決まっている。しかし残念ながら生の人参は持ち歩けなかったのだよ。匂いが手についてしまうのでな」

「へえ(食べるという手段はないのか)」

「杉原先輩もこれからはしっかりおは朝はチェックするべきなのだよ。また骨を折ったらたまらんだろう」

「私朝ズームイン派だから」

「くっ…!だからあんなのが懐いたりするのだよ!」


※あんなの=黒子、青峰、桃井


「(懐くの関係ねえ)…大体緑間は懐いたうちに入らないの?」

「んな…!?」

「(あ、顔真っ赤になった)」

「か、関係ないのだよ!」

「はいはい、わかったわかった。とりあえず人形潰れてるわよ」





とばっちりで重症





(ところで杉原先輩に作って欲しいものがあるのだが)
(なに、また人形?)
(人参の人形を探してて思ったのだが、食べ物を模したものは少ないのだよ。次からは出来るだけ食べるとして、普段手に入りにくい鯨やアワビ、海鼠にドリアンの人形をよろしくお願いしたい)
((…どこから突っ込めばいいんだろう)っていうか私この腕だから裁縫できないわよ。残念だけど)
((ガーン!)……青峰…貴様…!)


(次の日、緑間くんのシュートが狙ってたのは青峰の頭だったらしい)(桃井が喜んでいたのは気にしないことにした)





緑間の人形はこういうのに派生するために存在していたのだよ(嘘です忘れてただけです)(…)
ラッキーアイテムが食べ物でも緑間は何故か持ち歩く手段を探しそうとか思って仕方ないです。何故だろう。緑間…いや、キセキマジックか←
書き忘れた。虚弱伊澄先輩は風邪を引きやすいとかもよくしてた故の体調管理習得です。小学校まではもっと虚弱なんだよ。中学校からは授業中寝たりして体力回復してんだよ。でもバスケ部に連れ回されるとすぐ体力が切れちゃうんだよ。だからマネジとかできない子なんですよ。
でも別に儚くはないんだよね。性格でしょうか。あと痛点も若干麻痺してそうだ←


アオイさまのナイスツッコミにより派生しましたあざーっすアオイさま!先輩を守ってくださるなんて恐れ多い…寧ろ連れまわすような娘ですすいません(ガクブル)


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