(黒バス/帝光中時代/1年なキセキ)先輩
保健室は普通怪我をした生徒や体調の優れない生徒が立ち寄る場所。
そんなある意味安らぎを求める筈の場所に暗雲が立ち込めていた。
「……」
「「「……」」」
無表情さから一転蔑んで目線の黒子、片手に人参型のぬいぐるみを持ちながら逆光を放つ眼鏡を無言で整える緑間、無邪気な笑顔はかけらも無くどす黒いオーラを放ちながら眼力を飛ばす桃井。そんな3人の圧力を一心に受けている青峰は普段の態度はどこへやらと言わんばかりに縮こまりひたすら冷や汗を流していた。
「全く信じられんな」
「…う」
「青峰くん、最低です」
「ぐ…」
「死ね青峰」
「し、っさつきテメエ!?」
「あん、たが、文句、言える、立場じゃ、ない、でしょうが!」
「あだだだいてえだろうが!!一々叩くな!」
青峰はバシバシと力の限り繰り出される拳に精一杯訴えかけるが桃井は構わず殴り続ける。普段多少(口を出す程度に)制止する筈の黒子が静観し、呆れる筈の緑間が相変わらず冷たい視線を青峰に向ける姿は異様としか言えなかった。
その原因となる人物がそんな4人の光景に溜め息をつく。
「桃井、もう良いから止めなさい。あと2人とも五月蝿い」
「だって先輩…!」
「良いってば」
「はぁい…」
呆れたように傍観していた伊澄の言葉にしずしずとしょげる桃井。その様子に解放された青峰が舌を出すが、そんな青峰の脇腹を黒子がど突き、「ぐっ…!?」と唸る青峰に構わず緑間が続けるように頭を叩く。2人の淡々とした連携プレーに涙目になった青峰。桃井は2人に親指を立てた。
「グッジョブ黒子くんミドリン!」
「て、めえら、何しやがる…!?」
「すみません。苛っとしたので、つい」
「謝る必要なんてないのだよ黒子。少しは反省するのだな青峰」
「そうよ!あんたのせいで伊澄先輩が腕の骨折っちゃったんだから!!」
「うぐ…」
反論の言葉を飲み込むしかない青峰の様子に、右手をギプスで固定している伊澄は反対の手で頭をかく。
全治1ヶ月の骨折。骨折とは言っても前腕にひびが入っただけなんだけど…。伊澄はそう思ったが口に出さなかった。別に怒ってる訳じゃない。ただ言っても3人の怒りは収まらないと何故か感じたからだ。
「最低!ほんっとに最悪!!この凶悪犯!!」
「うっせーな俺だって後悔してんだよ!大体少しのしかかってその拍子に腕ぶつけた程度で骨にひび入るか!?」
「だから言ったでしょう、私体力ないし力弱いって」
「あんな簡単に折れてたら虚弱にもほどがあるだろうが!!」
「青峰、あんた虚弱って言葉よく知ってるわね」
「バカにしてんのか!?大体伊澄も伊澄だろうが!骨折って『あ、骨折ったかも』って何涼しい顔して言ってんだおかしいだろ!?」
「青峰、貴様怪我を負わせた相手を呼び捨てとはどういう用件だ」
「先輩に何て言葉遣いですか」
「っ、ああわかったよ杉原で良いんだろ杉原で!」
「先輩、か、さんまで付けなさい!!」
ギャーギャーと騒ぐ4人に頭が痛くなってくる。困ったように「帰りたい…」と零す伊澄の言葉を誰も聞いてはいない。
解放されるのは、それから2時間後の事だった。
骨折より重症
(その、杉原……さん。本当に悪かった)
((謝る青峰って貴重だ)反省してんなら良いわよ。怪我には慣れてるから)
((骨折に慣れるってどんだけ弱いんだ、こいつ)…帰り、荷物持つっす)
(別に良いってば)
(俺の気がすまねーんだよ)
(じゃあ私今食べたいのがあるんだよね。購買で数量限定の卵プリン。あと旬の物詰め込んだ幕の内弁当)
(……明日買ってきます)
先輩は大分弱い子です、な話。
体力や力もないけど骨も良く折ったり怪我も良くするんです。運動音痴だから。あと体が弱いから。風邪も良く引きます。ただ普段体力調整が上手いから悟られにくいだけ。そんな先輩、中学時代だけであと数回骨を折るかなんかする予定です←
力有り余っちゃった青峰は先輩に敬意を払うキャラじゃないから普通に呼び捨てしてます。いやしてました?少し負い目を感じて誰かがいるときは名字呼びになるといいよ。黒子、緑間→杉原先輩。桃井、黄瀬→伊澄先輩。青峰→伊澄改め杉原さん。流石に全員違うのは無理だった。キャラ的に。
あと先輩は普通に青峰パシれます。そんだけ。
要するに全員から責められる青峰と傍観する弱い先輩が書きたかっただけだ!