スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

『寝過ごしてゲームスタート』

(SAO/嬢)


・寝てたら強制転移関係なくなってこんなこともありえるんじゃないかなと思った結果がこれだよ








「……はっ」


危ない危ない。爆睡してた。
昨日は別のゲームのしすぎで徹夜だったからかどうやらいつの間にか意識が飛んでいたらしい。周りの風景はよく知る自身の部屋じゃなくどこか趣を感じさせるゲームでいう宿屋のような場所で―――って、ようなじゃなくてゲームの宿屋か。石ころだけでレベルアップまでしてしまったしドロップアイテムで袋の中はいっぱいだったのでなにより回復のために一度《はじまりの街》に戻って、そろそろログアウトしなきゃなーと思いながら借りた部屋のベッドに座ったがいいがそのふかふかさにやられたのだった。恐るべし仮想世界。ふかふかもふもふさはリアルのうちのベッド以上だ。
今何時だろうかと窓の外を眺めるが、どうやら既に外は暗くなっている。この仮想世界と現実世界の時間は同じらしいからもう夜をまわっているのだろう。


「ん?」


ログアウトする前に寝オチしてできなかった道具売ってこようかなと考えるが、ふと道具欄を確認していると寝る前にはなかった筈の道具がある。


「手鏡?」


道具の説明は一切なし。ランクもなし。ただ《手鏡》とだけかかれたそれに首を傾げ、なんだこれと思う。なんかのイベントアイテムか?発売当日で情報はないので検討がつかず、もしかしてバグかもしれないと念のため選択してみる。手元に出現したそれは何の変哲もないただの小さな鏡だ。映る姿はパッとみリアルの私と遜色ない――5割増しではあるものの――アバター。特殊効果もみられずなあにこれと更に不思議に思うしかなかった。
が、ふと鏡を改めて覗き込んだ瞬間一瞬光に包まれる。え、と反応する暇もなく視界が真っ白になる。ただそれはたった数秒のこと。瞬き程度のそれに、気のせいかと思うくらいで、周りの風景がかわったのかと思いきやそんなこともなかった。


「やっぱバグか…?」


目を眇ながら頭をかく。鏡もどうかなった気配はないし、と覗き込むが、そこにいたのは普段の5割増しでもなんでもない私の姿で。


「……あれ?」


髪型、色は全く変わってないから違和感なんてなかったが、私だ。リアルの私だ。体型もそのままの私の姿になってる、気がする。
というのも元々アバターは私似にしていたため、変わったかなと首を傾げるぐらいにしか変化がなかったのだ。もういっかい改めて確認しようとするが、


パリンッ

「え」


まるで昼間倒したモンスターのように光の塵となってゆく鏡に固まる。いきなりなんだ、え、今私なんかした?
覚えがない行為に目をしばたせるしかない。手元はすっかり空。道具欄にはもう手鏡という文字はない。


なんなのいったい



暫くして宿屋から外に出た私はぶらぶらしているところ赤毛の野盗ファッションのような男の人につかまり、ゲームからログアウトできないことに漸く気付くことになるのだった。




(あ、本当だ。何で?)
(何でって、チュートリアルあったじゃねえか!?夜なのにふらふらしてるから危ねえなと思って声かけたのにマジかお前)
(チュートリアル?戦闘のならもうやりましたよ?)
(……マジかお前。今まで何してた)
(え、寝てましたけど)
(……………マジかお前)
(?)




デスゲームになったことにまだ気付いてないよ


『リサールウェポン石ころ』

(SAO/嬢)


・前のやつの続き
・仮想世界のリアルラックが異常に高い設定となっております
・キャラでてこないよ
・いつも狩りしてごめんなさい









仮想世界アインクラッド。
広がる世界はまさに異世界そのものだった。


電信柱など文明の利器が一切排除された広大な草原に、森に、湖に、そして城壁に囲まれた奥ゆかしい街。空は無限で、息を吸ってこれが空気だと改めて感じることはないが透き通ってるのが一目でわかる。触覚がたまに肌を撫でる柔らかな風を感じ、太陽の日差しは猛暑日のように刺すことがないもののやはり特有の暖かみを与えてくれる。空を舞うのは見慣れない鳥だけでなく飛竜らしきもののように見える。ここはまさしく正統派ファンタジーの世界だった。
初期装備しか構えていないアバターの姿は、せっかく初プレイだからと自分に似たもの……の5割増しで可愛くしてる……で、現実より確実に手入れがされている黒髪がさらさら靡くのを感じシャンプーのCM並の靡き具合だと場違いなことを思う。試しに髪を結んでもふわっと緩んでしまうそんな定番なことは出来るのか、と現実でなんとなくできなかったことをしたいと思ったが、ふと大人しく草を食べる青いイノシシの姿が視界に入った。


まあ、普通に考えてモンスターだろ。


運がいいのかなんなのか、ぼーっとしてたこっちに気付いた様子はなく黙々と食事を行う様子は中々癒されるものの、RPGといえばモンスター倒して経験値貯めてレベルアップ!が基本中の基本。ここは《はじまりの街》というゲームスタート地点のすぐ外のフィールドなので、この辺でレベルを上げておくべきだろうと考える。1番道路でレベル10まで上げるタイプな私が見逃す訳なかった。もしくはあれがチュートリアルの対象なのかもしれないし。
説明書で読んだ内容を思い出しながら、手元にある武器、初期装備の《スモールソード》を持つが……なんだろう、これ。気のせいかもしれないがなんか重い気がする。初期装備がこんなんで大丈夫なのか。この先が不安になってしょうがない。なにせ、このゲームは《ソードアート・オンライン》と、その名の通りソードスキルというものしか使えない、RPG定番の魔法要素が一切除外された所謂脳筋たち大歓喜のものなのだ。


そんな剣を使わないとやっていけないゲームで初期装備が重いってどういうことなの。


アバターの選択を間違えたかと、少し後悔しつつ、だがこの先やっていくにはレベルとお金が必要で、そのためにはモンスターを倒すのは不可欠でしかない。ぶつくさいっても始まらないし、とりあえずまだこちらに気付かない鈍感すぎる青いイノシシにちょっかいかけたらなんとかなるだろうか。接近してもいいのだが、ああいうタイプは鼻息荒くして突撃アクションかましてくるだろうからとりあえず遠距離からなんかできることはないか。そういえばレベル的にまだ2つしか選べないないスキルに《投擲》というものがあったことを思い出す。投擲、つまり物投げること。当たればそれもダメージになるのだろうか。地味だが初手には丁度いいかもしれないと、こっそり距離をとりつつ投げられるものを探す。剣はいつでもとれるようにして、足元にあった野球ボール大の石を握り、軽く構えてみる。そういえばスキルがセットしてあったら自動で敵認証してダメージを与えるはずなんだけど、と説明書の内容を思い出そうとしたその瞬間、


「え」


まだ投げるつもりはなかったそれは勝手に動いた身体によって、それはもう気持ちいいくらいにヒュンッと音をたて真っ直ぐもしゃもしゃし続けていた食欲旺盛なイノシシに向かって飛んでいった。自動で敵認証、なるほど。と、スキルの出し方はわかったがまだ心の準備ができてなかったこちらとしては血の気が引く。まずい、いきなり戦闘とかまずい。だが無情にも正確かつピンポイントで飛んでいった石の固まりは鈍い音をたてて青いイノシシにぶつかり「ピギャア!」とイノシシらしい叫び声が上がってしまう。
あ、当たった。感動とかそんなものの前に、まだよくわかってないソードスキルで戦わなければならないという展開がまずい。まずすぎて逃げ道が見当たらない。
逃げるコマンドはどこだとあたふたするが、しかし


パリン

「……は?」


可哀相な悲鳴を上げたイノシシの身体がガラスのように砕け、破片は宙で消えてゆく。次いで目の前に紫のフォントで数字が現れ、一瞬何があったのかわからなかった私だったが数字を眺めるにつれ真っ白な頭に定番の勝利のBGMがテレレテッテッテーと流れてきた。あ、これはレベルアップの曲だった。


「え、初戦闘終了?」


いくら見回してもモンスターが完全に消えている。つまり今現れた数字は経験値とお金(ここでの通貨はコルというらしい)だったのだろう。だがまさか石ころいっぱつ投げただけで倒せると思わなかった。1番道路でさえコラッタやポッポに瀕死にされることもあるという難易度なのに、石ころで一撃。スライムだって一回目の戦闘じゃあ剣で2〜3撃喰らわせないと倒せないというのに、石ころで一撃。剣すら使ってない状況に運がいいんだか悪いんだかわかんなくなり、一人寂しく草原に立ちすくむ。誰かいないのが唯一の救いかもしれなかった。
だが立ち止まっててもしょうがない。今のは偶然クリティカルでもだしたんじゃないかと自己完結し、とりあえず次に挑むとする。
暫く歩くと見つけた今度は赤いイノシシは死角なのかまたこちらに気付いていないらしい。赤か、なんかさっきのより強そうだ。次こそ剣も使おうと思いつつ、ただ油断は禁物なので再び足元の……こころなしか野球ボールよりは小さくなった石ころを拾う。先制攻撃(石ころ)で体力ギリギリにして、剣でズバーンととどめを刺す。一応簡単なイメトレをしながら再び構える。

だが、2度目は石ころがこちらに振り向いたイノシシの顔に当たりまたまた一撃KO。続く3回目4回目、更にそれ以降の挑戦でも《魔具石ころ》の威力が120%発揮され、一度も剣を使わない戦闘に、思わずこの剣売ったらいくらぐらいになるだろうと遠い目をして考える自分がいた。






本来石ころなんかで倒せるわけないイノシシさんごめんなさい

ちなみに赤いイノシシはちょっと珍しいタイプ。経験値が青より多めでレアアイテム落としたりします。その分強いけど。



『リンク・スタート』

(SAO/嬢)


・相変わらず現代生まれな嬢がちょっと未来にいってやっぱり巻き込まれてしまう話
・SAOのことはそんなアニメがあった気がするくらいの認識しかないよ
・元医者が14歳くらいになったけどなんかもういいやって慣れちゃった感じだよ
・原作〜8巻まで読んでまだ6日も経ってないからノリだよノリ







仮想大規模オンラインロールプレイングゲーム ソードアート・オンライン


初回盤が1万ロットしか発売されないそのゲームをゲームハードであるナーヴギアごと手に入れたのは全くの幸運としかいいようがない。もちろん昔からゲーム、特にRPGものが好きだからこそ手に入れたのだが、わざわざ何日も前から並ぶほど熱意があった訳ではない。店頭で並ぶこともせず、予約をする訳でもなく、それはたまたま眺めていた雑誌のプレゼントコーナーに興味本位で応募して、本当に偶然運よく当選して手に入れたものだった。ニュースでは三日も徹夜行列ができたと流れていたし、通販では数秒で完売になったものだと聞いている。テストプレイヤー募集のときなんて1000人という狭き門に10万人という募集があったという噂もあった。私なんてポケモンの新作を予約して、開店30分前に10人くらい並んでるだけでうわあと思うのに。廃人怖い。ネット中毒者マジ怖い。
ただそこまでする価値はあるのだろう。オンラインゲームは初めてだが期待してるのは確かで、ゲームがはじめられる時刻まで説明書を読むだけでわくわくが止められない。お値段的にもお財布に優しくないそれを手に入れられたことで私の気分は有頂天に達せられていた。



現在は2022年11月6日。



私のよく知る現実のほんの少し先の未来のゲームは革命といえるほど遥かに成長を遂げていた。タッチパネルや動作認識なんかは既に旧ハード扱いとなり、画面を見ながらコントロールを操作するという当たり前なゲームは―――勿論神ゲーはいくらでもあるのでいつまでたっても捨てられるものではないが―――ナーヴギアの前では古いものとして扱われる。
曰く、現実世界からゲームの世界である仮想世界にいく――フルダイブするもの。視覚や聴覚は勿論、触覚、味覚、嗅覚といった人が人として生きるために大切な五感が全てゲームと一体化するらしい。らしい、というのは私もまだ体感したことがないからで。そんな脳からの情報を引き出し伝えゲーム内で活動させるヘルメット型のハード。それがナーヴギアだった。



説明書を読破し、そろそろ時間かとベッドに腰掛ける。仮想世界にいく、といってもそれは意識だけのもので体は勿論現実のままなんだから、ナーヴギアをつけるのは寝た状態が1番いいとネットで見た気がするので素直にその通りにする。ギア、というだけちょっとゴツい気がするそれを持つとずっしりとした重みを感じ、確かに座ったまま長時間つけておくと首を痛めそうだとなんとなく思った。頭に被るというあまりやりなれないやり行為に違和感を覚えつつも、ゲームは寝ながらするのが日常なので、まあこれも慣れだろうと勝手に一人で納得する。
「リンク・スタート」と声を上げれば確かゲームの中に入れるんだったか。頭にナーヴギアを装着してベッドに横になり、固い感触に眉をしかめつつも目を閉じて一呼吸おく。



―――そういえば、こんな光景とソードアート・オンラインって言葉。どこかでみたことあるような。



はたしていつのことだったか。色々な情報が詰め込まれすぎててデジャヴュかもしれないそれが頭を掠めるが、サービス開始の13時が経過したのがわかり、慌てて改めて目を閉じる。



「リンク・スタート」



小さくだが部屋に響いた声が自分の耳に届くや否や、真っ暗だった視界が一転しまるでジェットコースターにのっているように目まぐるしく情報を認識する。
唐突に変わっていく景色に若干酔いそうになるものの、それでもゲームはゲーム、新作ともなれば期待に胸が膨らむだろう。口元が緩むのを止められない中、いきなり開かれた世界に、鼓動が大きく音を立てた気がした。



しかしいつものことながら、目先にしか集中できない自分に、未来の私は訴えてやりたくなるはめになるのだった。とあるキャラ風にいうなら《いつもお前は遅いんだよ》と。



前の記事へ 次の記事へ