(黒バス/アンフェア♂)
・先輩ってなんだったっけ
・ノリと勢いでラリホー
以前よりスムーズに動く身体は女だったときより筋肉量が多いからか。ポカリか麦茶がパンパンに入れてあるボトル数十本キッチリ詰められたカゴは見るだけで重そうに見えるが、今ではそれを片手で運ぶことができる。道のりの途中で疲れた持ち手を返ることはあるものの、フラフラ危なっかしいことはない。それどころかもう片手に畳んだタオルを持つ余裕すらあった。
平均身長で、ムキムキな訳じゃないのに男ってすげー。
元女だった私にとって、今の状況は何の変哲もないことでも革命的出来事だった。
っていうか男になってたこと自体、革命的出来事なんだけど。
決して私――もとい今は俺――が女装男装趣味ということあらず。最近流行りのオネエでもおなべにもあらず。重ねていうが、ネパールにいったこともあらず。20数年女として生きてきた生々しい記憶が妄想だったとしたらいっそ死んでしまいたいくらいの大ダメージだが、幼稚園から小中高、大学から社会人までの緻密な記憶がそうじゃないと感じさせる。っていうか信じたい。あと胸の重みや月一の辛さは嘘じゃないと信じたい。信じないとやっていけない。
お分かり頂けただろうか。女だったはずの私は、男で高校生の俺に転生しちゃいました。どういうことなの。
とはいえ世間さまがまさかの性転換した人間がいる訳もなくいえる訳もなく、ネタぐらいに留めておけよなビックリ体験に愕然としつつ生活を放棄することはできやしない。胸部の寂しさと下半身のプラスαに悲しくなりつつも、なんでまた高校行かなきゃいけないんだろうと荒みつつも、周りに悟らせることなく当たり障りのない生活を送っている。僥倖だったのは、両親共音信不通の身寄りがないこと。親なしといってしまえば響きは悪いが、いきなり高校生になってハイ私たちが親ですって言われても実感はわかないし中身が違うし性別が変わったというハイリスクもある。施設暮らしでもなく、生活費は謎のアフターケアなんだろうが毎月未知の振込。書類上の保護者はいるが、向こうの家に迷惑をかけたくないという建前でこうやって一人暮らしできたからこそなんのストレスなく周囲に溶け込めることができたんだろうと思う。ご都合主義万歳。
ただしそんな上手くことが運ばないのが世の中の性というもの。
荷物をしこたま持って、キュッ、キュッ、と高いスキール音を響かせる目的地を眺める度に、こう胸に来るものがあって泣きたくなる。ただし感動とかそんな爽やかなものにあらず。なんで私…いや、俺、こんなことしてるんだろ…。現実逃避です。
ダムダム、ボールが床を跳ねる音はいつもは青春だなー眩しく感じるそれなのに更に切なさを掻き立ててくるが、体育館の入口に立っていた女生徒がこっちに気付いたのを見て、逃避する時間なんかないですよね、そうですよね、となんとか吐き出しそうになった溜息を堪える。
「広瀬くん!悪いんだけど、このプリント人数分コピーお願い!」
「はあ、わかりました。相田さん」
元気よく、または力強く新たな仕事をビシバシと指示してくる女生徒に、逆らう気力もなくボトルを体育館の入口において、ファイルに挟まっているプリントを受け取る。
顔を上げると、満足そうにしていた彼女は既に体育館の中へと向かっており、真剣な眼差しをコートの中で縦横無尽に走る選手たちに向けていた。数人しかいない、それでも勢いだけは他のどの学校にも負けないプレイをする選手たちを見て、呆ける暇もなくとりあえず補充してきたボトルと洗濯したばかりのタオルを誰にも気付かれないままベンチ付近に運んでおく。周囲にはアイシングをしたあとなのだろう氷を入れた袋が散乱していて、黙ってそれらをアイスボックスの中に直した。
数十分いないうちにまたバラバラと散らばるんだろうタオルのことを考えると悲しくもなるが、残念ながらそれがいまの俺の仕事だ。
「火神くん!」
「おうっ!」
コピー機のある用務室に向かおうと再び外に出ようとする途中、体育館にガコォッ鈍い音が響き渡る。今までのどんな音や声より、周囲から目を集めてしまうそんな音だ。思わず振り返り目をやってしまったそこに、まばゆい青空の色と燃えるような夕焼けの色の頭二つが並んでいた。
「相変わらずダンク馬鹿ですね」
「アリウープさせたのお前だろ!?」
相性がいいのか悪いのか。ぎゃいぎゃいわめき立てる二人に、既視感を覚えて――いや、知っていたそれに、先ほど堪えていた溜息が漏れだす。きっと今の自分は目が死んでいるのだろう。どうしてこうなった。ミニゲームを中断させられてご立腹な女帝とこめかみに谷をそびえ立たせた主将が原因二人のもとに拳を讃える姿を見て、周囲の人間が呆れてたり顔を引き攣らせていたりする姿を見て、改めて外履きの靴に履き変えた。
数秒後、背後からは怒声が響き渡りちょうど傍を通りかかった帰宅部の生徒がビクリと肩を揺らしている。あーめん。とばっちり受けないように家庭科室で炊いてたご飯でおにぎりつくって遅めに戻ろう。
運動なんて興味なかったのに、なんで男になってまでバスケ部のマネージャーしなきゃいけないんだろう。
今わかっていることは、私は既に巻き込まれてしまったということ。逃げられないということだけだった。
(よりによって黒バス…いや寧ろなんで黒バス…)
(コナンよりマシだけどさあ、男ってどういうことなの!)
アンフェア♂in黒バス
気持ち的にはコナン嬢→黒バス的なノリで書いてます。殺人あるよりマシだ。だけどなんで男。よりによって男!しかもマネージャーとかアホか!?なノリでお送りしております。別にコナン嬢なくてもいいこど。ただし元女。ホモォも好きな私に抜かりなんてなかった。目指せハーレム。夢も希望も楽しけりゃなんでもいいんだよ。
因みにアンフェア♂は運動まあまあ人並みにはあるんじゃねくらいなものでバスケは全くできません驚くほど素人。運動音痴ほどじゃないけど多分ミスディレなしの黒子っち以下か同じくらい。身長体重も黒子っち以下か同じくらい。びっくりするほど平々凡々です。中身成人医者(高校2周目)だから勉学凄いけどね。オール満点ってほどじゃないけどね。キセキ的勉学格差社会では赤司=♂>緑間だろうね。そりゃ2周もすりゃチートや。チーターや。
ツヅケバイイネ!