スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

「世界をこえた日常」

(P3/有里/嬢)

・前の続き
・キタロ祭じゃあああ!
・嬢は若嬢







私と有里くんは奇妙な関係である。


まず、出会い方がおかしかった。私は自宅で服をしまっているクローゼットを開き、彼はベルベットルームという彼にしか行くことができない特別らしい場所で、色んなところに通じるらしい扉を開いた。何故かそれらが繋がって、私と彼、それから件のベルベットルームに住んでいるらしいエリザベスさんとイゴールさんは出会ってしまった。

ふたつめ、ベルベットルームという存在からおかしいが、有里くんは特別な力を持っているらしい。軽く説明されたが、ペルソナというもう一人の自分が精霊や悪魔や神様のような姿をしたナニカを召喚できる力。彼はその力を使ってペルソナでしか対応できないシャドウと呼ばれる化け物と戦っているらしい。出会い頭もそうだが、まるで漫画かゲームのそれにくらりときたのはいうまでもない。ついに二次元がきましたわ、と現実逃避するしかなかった。

みっつめ、有里くんの住む世界と、私がいる世界。このふたつはどうやら別の世界軸のものらしい。舞台は平成の地球、その中の日本、だが私は彼の住む巌戸台という場所も月光館学園という学校も同じ地図上で発見することはできなかった。それは彼も同じだったらしく、ごく平凡な私の住む土地も彼は見つけられなかったらしい。日本や都道府県の形は同じ。だが、住んでいる市や所々が何故か違う。お互いの世界の地図を重ねて発覚した事実に、パラレルワールドを示唆したのは、イゴールさんだった。少なくとも、有里くんの世界ではベルベットルームもだが他の時限が違う世界に宛があるらしい。なるほど、といった彼はやけに手慣れているように見えて、理解できない私はおかしいのだろうかと真面目に考えたものだった。



そんな、「らしい」やら「ようだ」やらを連呼しないと説明できない、私と有里くんの関係。そんな普通ならありえない事例を目の当たりにしたお互いだったが、出会って早数日。
今日もまた、学校から帰宅後自室で宿題をしていると、コンコンと控えめに聞こえてくる音に、私は一瞬ビクリとするもののゆっくり立ち上がり、元凶のクローゼットの扉に手をかける。


「……有里くん」
「やあ、みよじ。お邪魔していい?」


予想通りの姿に緊張を解くが、制服で何故か本を片手にそして既に靴を見慣れたスーパーの袋に入れてる出で立ちに、断れないことを察して肩を落とす。有里くんの後ろにはいつも通りの位置で微動だにしないイゴールさんと、こちらを向いたままこれまたいつも通りの微笑みで立っているエリザベスさんの姿が見えて、彼らが有里くんを止めてくれないことを早々に理解する。


「…お茶とお菓子、持ってきます」
「ベッド借りてるから」


そう言うや否や、自室に足を入れた有里くんはクローゼットを閉じて私のベッドに腰を下ろし持っていた本を開いている。耳にはいつものヘッドフォン付きでこちらにはお構いなしだ。…男の子って異性の部屋で、こうも図々しいものだったっけ。二度目ましての状況に追いついていなかった有里くんは何処に。
彼の当たり前のような順応性を見ていると、私が間違っている気しかしないこの状況に抗えず、とぼとぼと自室から台所へと向かう。
ツッコミが欲しい…。そう切に願う私だったが、人間の順応性というものは誰にでもあるものだと理解するのはそう遠くなかった。





世界をこえた日常




(有里くん、次来るのいつ?この漫画の続きもってきて欲しいんだけど)
(……)
(なに?)
(…なんでもない)

(いつもビクビクしてたみよじは何処に…)




一年くらい前の続き!

精霊恐怖症(仮)の女の子が気になる十代

(ygoGX/十代)

・一期十代と同級生
・よかれと思ってトラウマ製造する小学生男子な十代さん
・ヨハンがきたらもっと恐ろしいことになるに違いないがそこまで書く元気はなかったよ\(^o^)/







私は見えざるものを見ることはできない、ただの一般人だ。だが無駄に第六感は敏感らしく、何か周囲に普通とは違うものがあると、顕著に寒気や悪寒を感じてしまう…らしい。らしい、というのは私が所謂幽霊なんか見えないからで、寒いやら嫌な予感がすると思ったときにその手の友人に聞くところによるととにかく周りに何かいるらしいからだった。
そんな私だが、このデュエルアカデミアでは時折そんな寒気が背筋を襲う。何か姿の見えないものに触れることもある。しかも、それが顕著なのは、とある人物が近くにいるときで、私はその人物のことがとにかく苦手でそして怖くてしかたなかった。その人がデュエルが強くて、明るくて、まるで太陽な人だろうと、関わりたくなかった。


なのに、極力関わりたくないのに、なんでその件の人物は私を探しているのだろうか。


「あれー、こっちに来たと思ったんだけどなー。なあ、ハネクリボー」
「(ひいい!!やっぱりいるしなんか一人で喋ってる!?)」


物陰から顔をださずとも聞こえる彼、デュエルアカデミでいろんな意味の有名人、遊城十代くんの声にぶるぶる震えそうな身体を必死に我慢しながら決して音を出すまいと口元を抑える。一人で話す=何かいる、だが私にはそれが見えないのだから、遊城くんにはやっぱり幽霊的な何かが見えていてそれは彼の近くにいるに違いない。怖い、恐ろしく怖い。しかもそんな彼が私を追って来る意味がわからない。周囲に助けを求めようにも、彼から脱兎した私はどうやら勢いで人の少ない追って校舎うらに来てしまったらしく、私と遊城くん以外には誰もいない。普段、私が彼のことが怖いとわかっているのか、呆れた顔でストッパーとなってくれる天上院さんや丸藤くんもいない。声をかけて、いや助けを求めてくればよかったとこんなにも後悔をするとは思わなかった。


「なんだよ、せっかく翔も明日香もいないから、話できると思ったのに」
「(ああいない間を狙われたんだ!!なんてこった!!)」
「っていうかなんか俺避けられてるのか?目茶苦茶必死に逃げられたし」
「(避けてます逃げましたすみませんでも怖いんです!だから早くあっちに行って!!)」
「あんなにビビられること…俺なんかしたか?」


不安げな声を出す遊城くんの独り言に申し訳ないと思いつつも、やっぱり後に続く「ハネクリボーもわかんないかー…だよなあ」なんていう声に身体が強張る。ハネクリボーは遊城くんがよく相棒といっているカードの一つだが、カードに話す割には話が成り立っているように思える。彼が電波ならそれはそれでよかったが、微妙に離れた位置でもぞわりとするんだから、カードの名前に称された「何か」がそこにいるのは最早確実だ。
…やっぱり無理だ。不気味だ。怖い。遊城くんは悪くないとわかっていても、私はビビりだから得体のしれないものはそれだけで怖い。そんな遊城くんが私を追って来る理由がわからない、それが更に恐怖を増やしていた。


「(このままどこかにいってくれないかな…)」


そう震えながら願っていたそのとき、ぞわりと強い寒気が襲い、顔の真横に姿の見えない何かがいるのを感じる。思わず悲鳴を上げそうになるのを堪えたが次の瞬間聞こえてきたのは、一番恐れていた人の声だった、


「ハネクリボーナイス!そんなとこにいたのかよ、みよじ!」
「ヒッ!?」


遊城くんが明るい声でこちらに顔を出してきて、寒気も相俟って思わず離れようとするが、隠れていた場所が悪かった。校舎裏の建物の角っこで、死角にもなりうるここだが真正面から来られると逃げ場がない。遊城くんはいつものように笑っているが、追い詰められた感満載で恐怖しか感じない。寒気も先ほどから酷くそれが更に悪化させている。涙を零さないようにするだけで限界だった。


「う、うう」
「え、ちょ、泣くなよ!俺なんかしたか!?」
「うえええ」
「わあああ、追ったのは悪かったから!でもお前に俺のハネクリボーとか他の精霊たちも懐いてるから仲良くなりたかっただけなんだって!本当に!」


遊城くんは何やら必死に目茶苦茶重要そうなことを言ってる気がするが、寒気やらなんやらでパニックに襲われた私の頭では何が何だか理解できない。懐くとか、精霊とか、訳がわからない。


「訳わかんないぃぃ」
「だから泣くなって、俺が明日香に怒られるから!あっそうだデュエルしようぜデュエル!きっと楽しいぜ!」
「うええええ誰か助けてえええ」
「だあああああ助けて欲しいのは俺だよ!!」


我慢の糸が切れボロボロ泣きだしてしまった私の声と宥めようとしてくれるが正直逆効果な遊城くんの焦った声を聞き付け天上院さんたちが助けてくれるまで、あと十数分。
(天上院さんに怒られ責められ)ボロボロになった遊城くんにカードの精霊の存在を教えられるまで、あと数十分。
それらに懐かれているという爆弾を投下しながら、私と仲良くしようぜなどという遊城くんが、トラウマになるまで、あと――。





ヒーローはトラウマ製造機





(あ、なまえ)
(うわああああん天上院さああああん)
(おい、だから逃げんなって!仕方ねえ、いけハネクリボー!!)
((クリクリ〜!))
(いやあああああ)

(…なんで逃げられるとわかりながら追いかけるのかしら、十代は)
(あはは、多分アニキも悪気はないんだよ…ただ好意が全く逆の効果になっちゃうだけで)
(小学生か)



『放し飼いの賢犬』

(軌跡/遊撃士主)

相変わらずロイドでない続き




困ったときの遊撃士協会。
そんな、民間人の些細な頼みから国家からの大規模な要請まで、多少の縛りはあるけれど事件の大小関わらず立ち回れるこの組織は国を越えて大陸全土に支部が存在してる。
大陸の二大国家に挟まれるというお国柄上他国に関わる問題を起こす訳にはいかないクロスベル警察は犯罪撲滅に力をそそぎ、逆に民間人の相談に乗ることが少ないクロスベル州では遊撃士の仕事が他の支部より多いのが特徴だが、それでも遊撃士協会としてのスタンスは全く変わらない。

ユウリ、エステル、ヨシュア。三人は三人ともそれぞれ自身の正義を貫ける場所である遊撃士協会を誇りに思い、日々依頼をこなし力を高めている。それは場所が変わっても揺るぐことはない。

どんな依頼でも受け付けるカウンターに、重要度がさほど高くなければ誰でも処理できるよう依頼を公開してある掲示板。1階は民間人からも遊撃士からも開けた場所であり、2階では仕事を終えた遊撃士の休憩スペースだったり民間人の相談をじっくりきける場所だったり、やはり開放的な作りになっている。それは国も地域も違えど共通したものであり、支部転属の挨拶に訪れたギルドの雰囲気にエステルは感嘆の声を上げた。


「うわー、やっぱりギルドはどの国も変わらないわね」
「そうね、でもうちは依頼数がかなり多い方だからあなたたちが来てくれて本当に助かったわ。今からアリオスも出張だったけど人手不足はこれでバッチリね!」
「アリオスさん、相変わらず忙しそうですね…」
「君達のお父上に比べれば大したことはないさ。それに彼の愛弟子にもな」


ちらりとユウリの方に視線をよこしたアリオスだったが、エステルとヨシュアを連れて来るなり早速依頼書を一人黙々と確認していた彼女は素知らぬ顔で依頼を選別している。こちらの話は聞いていただろうに、見事なまでのスルー。受領する依頼の数が束になってきているのも気のせいじゃないだろう。ここ最近増してきた仕事の鬼っぷりにミシェルとアリオスはため息を零し、しかし何を言ってもこの頑固者は苦言を聞かないだろう。
エステルとヨシュアは、事前にミシェルから連絡を受けていたとはいえ、そんなユウリの様子に唖然とするしかない。リベールにいたころも多々個別行動をとり、丸三日間寝る間も惜しんで仕事をするという無茶をしていたものだが、これは確実に悪い方向へレベルアップしている。今日一日はエステルとヨシュアにクロスベルの市内外を案内をするといっていたが、どうみても明らかに仕事片手間といった感じだ。


「よし、これでいいか。ミシェルさんお願いします」
「あんた…今日は二人の案内が仕事だって私いったわよね?」
「ちゃんと期間が長そうなの選びましたって。依頼主に説明受けるくらいの時間はあるでしょう?」
「…」
「討伐依頼もこいつらがこの辺の魔獣のレベル確認するのに丁度いいし」
「…」
「三人いればすぐ終わるでしょ」
「…」


ひー、ふー、…とう。……。
10枚を越えたあたりからとうとうミシェルは口を閉ざし、倍以上ある紙の束に最早なにもいうことがない。依頼期限、難易度、移動時間、それにエステルとヨシュアという信頼できる二人がいるというメリット。全て計算にいれてギリギリまで可能であろうことがわかって受領しているのだから質が悪い。
エステルもあまりの依頼数に文句を言おうとしていたが、馴れるためにというユウリのいうことは一律あり、自身も早速依頼を少なからず請け負う予定だったからか口をパクパクいわせるだけでなにもいえない。ヨシュアはただただ重いため息をつくしかなかった。


「エステル、ヨシュア」
「…はい」
「すまないがユウリをよろしく頼む」
「アリオスさん…」


国外への仕事も多く、忙しさでは協会トップクラスであるA級遊撃士である風の剣聖。そんなアリオスに頭を抱えさせる最年少A級遊撃士のユウリ。自分の力量を把握した上で無茶ばかりする同僚は、いつの間にこんなに大物になっていたのだろうか。当たり前だが、悪い意味で。


「ヨシュアー…」
「うん、わかってるよ…」


既に内容を手帳に書き込み、案内順と依頼者の場所を照らし合わせ終えていたユウリは、すぐに出発できるといわんばかりに戦術オーブメントの簡易点検を行っている。エニグマと、二人も見覚えのある前世代のものと、見たことのない三つを並べているのは何故だろうかと思いつつ、頭から鈍痛がしてつっこむ気力は朝だというのに残っていない。だが急かされていることは嫌でも理解できた。

だが、エステルと、特にヨシュアは激しく思った。このワーカホリックな問題児をほったらかしにしなくてよかった。クロスベルにきて本当によかったと。





放し飼いの賢犬





(さて、じゃあアリオスさん見送りに駅に行くわよ。あと駅で一件依頼あるから。そのあとは空港によって、ウルスラ間道ね)
(あんですってー!?初っ端そんなにあるの!?)
(どちらがついでなのだろうな)
(すみません、多分悪気はないんです…多分)
(なんだか切ないからやめてちょうだいヨシュア)




エステルを疲れさせるってなかなかないなと思ったが放浪者がいたからそんなことなかった。ただしアリオスを疲れさせるのはユウリだけだよ多分。
いつの間にこんなとんでもワーカホリックに進化したのか不思議でしょうがないけどセシル姉ちゃんの妹だったらこんなに働くのもしょうがないと思いました。ノイエス家の勝手なイメージが酷い。


ちなみにユウリは戦術オーブメント複数持ち。理由はちゃんと文章にできたらいいな。ただの願望妄想。あとエステルヨシュアが知らない戦術オーブメントってのは閃のアークスです。マスタークオーツ先取りライン増って零時のクロスベルだと脅威だと思うのだよ。オリビエいるし手に入れるのは問題ないでしょう多分。

高校生真月くんの黒歴史

(ゼアル/同い年)

・高校生真月くんがベクター期を黒歴史ってる話
・ムラッとしてやった





「真月くんってベクターのとき目茶苦茶生き生きしてたよね」


本当にふと思い至って、ぽつりと投げかけてみる。すると、ボトリと何かが落ちた音がする。ファーストフード店で目の前の席に座っていた彼が、いきなりの話題に固まっているのを尻目に、私は気にせず言葉を続けた。


「な〜んちゃって!っていうときとかさ、あれは一種の才能っていうか?あそこまで嘲るって言葉が似合う笑い方知らないわー」
「……」
「っていうかギャップが凄い。あんなにヘコヘコしてたのに、あそこまで人を見下して尚且つ弱みを作るっていうのが凄い。あれは遊馬じゃなくてもショックだよね」
「……」
「いや、遊馬だったから立ち直れた訳か。アストラルとは喧嘩しちゃったけど。すぐ仲直りして、でも疑心暗鬼の心は残っちゃったけど」
「……」
「おーい、真月くん。聞いてる?」
「……あの」
「ん?」
「……お願いしますやめてください」


あまりの反応のなさに、ついに言葉を投げかければ、真月くん本人がぎこちなく頭を抱えてうなだれて机に突っ伏してしまう。顔がすっかり見えない状態で小さく「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」と呟くのが聞こえてなんか怖い。だが気にせずポテトを頬張った。
真月くん。目の前の彼はまさしくあの時のベクター本人だったが、年を重ね、遊馬とぶつかることで落ち着いたのか。高校生となった今ではすっかり物腰の柔らかいイケメン少年になっていた。時の流れって凄いね。あ、でも遊馬はあの頃と変わらずいつもいつでも「かっとビングだ!」なままなんだから、真月くんが凄いのか。ただどうしても真月くん、ベクターってなると印象が強いのはあの頃で。


「あとはあれだ、仲間が遊馬のせいで危険な目にあうっていう煽り方とかさ。原因あんただったっつーの」
「……」
「ドルベさんやミザエルさんにも目茶苦茶嫌な顔されてたし。あそこまで外道だといっそ感動するよね。いやあの頃は果てしない絶望感に襲われたけど。仲良しって思ってたし。仲間だって思ってたし」
「………」
「そういえば、あのときの私服って真月くんの趣味?ああいうジャケットが似合う人って中々いないよね。真月くんはイケメンだったからまあ似合ってたけどさ。でも最近はああいう服着ないよね。割と大人しめのカジュアル系ばっかだし」
「…………」
「もう着ないの?あれ」
「…………あの、なまえさん」
「ん?」


一人ポテトかじってシェイク飲んでってしながら返答がないのに気にせず続けていたが、漸くのろのろと身体を起こしてきた真月くんに首を傾げる。なんだか変な哀愁漂わせてるね。相変わらず顔は両手で覆ったままだが、真月くんは小さく、少し震えた声で呟いた。


「怒ってます、か?」
「……」
「……」
「……」
「……あの、」
「……」


シェイクを口にしてズゴーとだけ音をたてる。返答は、しない。目の前の彼は青ざめたまま、身動きもしない。
怒る。ほう。なるほど、私は確かに怒っていた。心機一転、イケメンUPした目の前の男に。如何せん敬語がデフォルトで優しいからといって女の子に囲まれることが多い目の前の男に。あんなことがあったことなんて知らない女の子たちに黄色い声を上げられる目の前の男に。


私がどれだけ真月くんの黒歴史時代に振り回されたかと思うと、ねえ。
例え今の彼がベクターだった頃と決別して、尚且つあの頃の自分を恥だと思っていたとしても、八つ当たりくらいは許せるんじゃない?


ズゴー、ゴゴゴ。シェイクがなくなった音がして、意識を取り戻す。ハッとすると、真月くんの顔はまだ悪く、なんか切羽詰まっている。だが、私は気にせず満面の笑顔を向けてやるのだった。


「―――いや、別に?」
「―――ッ、本当に、すみませんでした!!!」


いやいや真月くん、こんなところで土下座なんてするもんじゃありませんよ。このイケメンくんが。目立ってる、ただでさえイケメンなんだから目立ってるよ、君。まあ私には関係ない話だけどね。ははは、じゃあそろそろ帰るわ。また明日学校でね!


「ちょ、待って下さいなまえさん!お願いですから、どうか許して…!!!」





五体投地の黒歴史





(ねー遊馬、あの頃の真月くんは忘れられないよねー)
(あ?ああ、ベクターのことか。確かにあの頃は凄かったよなーアストラル)
(……私はまだ許してないぞ)

(ああああもうお願いですからやめて下さい後生ですからああああああ)




ゲス改めた高校生真月くん。でも黒歴史化。いつまでも弄られつづけるヘタレ化するといいよ。可愛いよ。敬語デフォだよ。

『スタートしますか』

(デジF/お台場小5年(02))


・アド・02のデジタルワールドによく行ってた(巻き込まれてた)子
・選ばれし子供たちじゃないよ
・パートナーデジモンもいないよ
・でもよく巻き添えくらってたよ


・そんな子がフロにいったらなお話








私の知ってる、デジタルワールドはどこにいっちゃったんだろう。



なまえは、周囲の景色と前方を歩く数名の同い年くらいの子供たちを眺め、人知れず嘆息した。

現代の規律から大きく外れた未知の景色、常識、そしてデジモンと呼ばれる不思議な生き物たち。コンピュータネットワークの中の電脳空間であるデジタルワールドに存在し生息する彼らは、その身体がデータで構成されていようとも命があり感情があり、生きている。決してゲームとは違う、かけがえのない存在。選ばれし子供たちはそんなデジモンをパートナーにし、協力し、心をひとつにして、現代とデジタルワールド、二つの世界を救ってきた。
それがなまえの知ってるデジモンと人間の在り方。デジタルワールドの在り方。残念ながらなまえは選ばれし子供などではなくパートナーデジモンはいなかったが、それでも何故か戦いに巻き込まれたなまえを助けてくれていた彼らの関係は羨ましかったし、優しくて心強いデジモンは大好きだった。1999年と2002年、その年に大きくデジタルワールドに関わったことは、なまえにとってかけがえのない思い出であった。


ところが今はこれまたどうしたことか。




漸く安定を取り戻したデジタルワールドに安心し、デジヴァイスやD3がなくたってデジモンとは会えるから満足し、学生生活を満喫していたなまえだったが、ある日登下校中のなまえの携帯に謎のメールが届いたのがきっかけだったと思う。
曰く、


スタートしますか
しませんか

Yes No


見知らぬアドレスと不可解な内容になんだこりゃと思いながら、適当に押したのが悪かったのか。YesかNo、どちらを押したのか本人もわからず、ただ「あ、」と思ってしまったそのとき。なまえの視界は白く染まったのだけは覚えていた。
そして気付けばなんとなく心当たりがあるのに全く見覚えのない世界。そう、なまえはデジタルワールドにきてしまったのだった。


またか。
過去幾度となく選ばれし子供たちというトラブルメーカー共に巻き込まれ続けたなまえは、現代とは違うその景色に慌てることなくそう思った。無駄に鍛えられた順応性は押して図らず。どのエリアかなー見覚えないなー誰か知り合いのデジモンいないかなー。緊張感なく真っ先にディーターミナルを取り出したなまえはキョロキョロと辺りを見回すが周囲には人間は勿論デジモンの姿も一切ないことを確認する。デジタルワールドでは携帯は使えず、ここでとれる通信手段はディーターミナルの無線メール端末しかない。とりあえず、いつもPCを弄っているであろう泉さんか井ノ上さんにヘルプでいいだろう。
が、デジタルワールドだったら彼らを呼べば大丈夫だろうとある種の信頼を寄せていたなまえは、次の瞬間愕然とする。ディーターミナルから、メールが送信されなかったのだ。


まさか壊れたのか。デジタルワールドにいくら慣れてるとはいえ、パートナーデジモンも誰もいない今誰かに連絡をとることもできないなまえの状況は最悪である。仕方なくいくら押してもメールを送信してくれないディーターミナルを仕舞い、デジタルワールドの各エリアに必ず一つはあるはずの、ゲート機能を備えたテレビを探すことにした。それか知り合いのデジモンに会えれば万々歳である。肩を落として歩き始めたなまえは、スニーカー履いててよかったと真剣に思った。
のだが、

何分歩き回ってもテレビが見つからない。

知り合いのデジモンが見つからない。


それどころか、この場所がいつもと見慣れたデジタルワールドと、何かが違うことに、なまえは気付いてしまった。


歩き疲れ始めたこともあり、暗くなり始めた草原のど真ん中で再度愕然とし始めたなまえは、更に未知なるものに遭遇することとなる。



何故か興奮しているフライモンに襲われ、必死に逃げた先で出会った人間の子供たち。見知らぬ顔の彼らに、まさか新しい選ばれし子供!?と驚いた矢先、その一人である少年はパートナーデジモンを連れず、フライモンの攻撃からなまえを守ろうと立ち塞がる。思わず「危ない!」そう叫んだとき、少年は光に包まれ、そこには炎を纏ったデジモンの姿があったのだった。





スタートしますか





(は!?はッ!!?)
(大丈夫か?)
(危ないわよ、あなたは下がって!)
(いけー!拓也お兄ちゃん!)
(なにあれ!?なにあれ!?)
(何って伝説の十闘士の一人、炎の闘士アグニモンじゃマキ!!)

(バーニングサラマンダー!)

(……はあああ!!?)





アド・02に巻き込まれてた子がフロのデジタルワールドにいったらなお話。
パートナーデジモンはいない。デジヴァイスももってない。だがやたらめったらデジモンには詳しい。そんな子がフロいったらとりあえず人間が進化するって展開についていけないと思います。クロウォのゼンジロウは俺らの代弁者、みたいな()
でもお台場組と連絡つかないしテレビないしで仕方ないから拓也たちについていくよ。年齢は小5だよ。大輔たちと同い年だけど違うクラスだよ。あまりの自分が知ってるデジタルワールドとの格差に助けて知識の人状態だよ。そんなお話。

ついムラッとした結果がこれでした。
多分続かないよ

前の記事へ 次の記事へ