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「世界をこえた日常」

(P3/有里/嬢)

・前の続き
・キタロ祭じゃあああ!
・嬢は若嬢







私と有里くんは奇妙な関係である。


まず、出会い方がおかしかった。私は自宅で服をしまっているクローゼットを開き、彼はベルベットルームという彼にしか行くことができない特別らしい場所で、色んなところに通じるらしい扉を開いた。何故かそれらが繋がって、私と彼、それから件のベルベットルームに住んでいるらしいエリザベスさんとイゴールさんは出会ってしまった。

ふたつめ、ベルベットルームという存在からおかしいが、有里くんは特別な力を持っているらしい。軽く説明されたが、ペルソナというもう一人の自分が精霊や悪魔や神様のような姿をしたナニカを召喚できる力。彼はその力を使ってペルソナでしか対応できないシャドウと呼ばれる化け物と戦っているらしい。出会い頭もそうだが、まるで漫画かゲームのそれにくらりときたのはいうまでもない。ついに二次元がきましたわ、と現実逃避するしかなかった。

みっつめ、有里くんの住む世界と、私がいる世界。このふたつはどうやら別の世界軸のものらしい。舞台は平成の地球、その中の日本、だが私は彼の住む巌戸台という場所も月光館学園という学校も同じ地図上で発見することはできなかった。それは彼も同じだったらしく、ごく平凡な私の住む土地も彼は見つけられなかったらしい。日本や都道府県の形は同じ。だが、住んでいる市や所々が何故か違う。お互いの世界の地図を重ねて発覚した事実に、パラレルワールドを示唆したのは、イゴールさんだった。少なくとも、有里くんの世界ではベルベットルームもだが他の時限が違う世界に宛があるらしい。なるほど、といった彼はやけに手慣れているように見えて、理解できない私はおかしいのだろうかと真面目に考えたものだった。



そんな、「らしい」やら「ようだ」やらを連呼しないと説明できない、私と有里くんの関係。そんな普通ならありえない事例を目の当たりにしたお互いだったが、出会って早数日。
今日もまた、学校から帰宅後自室で宿題をしていると、コンコンと控えめに聞こえてくる音に、私は一瞬ビクリとするもののゆっくり立ち上がり、元凶のクローゼットの扉に手をかける。


「……有里くん」
「やあ、みよじ。お邪魔していい?」


予想通りの姿に緊張を解くが、制服で何故か本を片手にそして既に靴を見慣れたスーパーの袋に入れてる出で立ちに、断れないことを察して肩を落とす。有里くんの後ろにはいつも通りの位置で微動だにしないイゴールさんと、こちらを向いたままこれまたいつも通りの微笑みで立っているエリザベスさんの姿が見えて、彼らが有里くんを止めてくれないことを早々に理解する。


「…お茶とお菓子、持ってきます」
「ベッド借りてるから」


そう言うや否や、自室に足を入れた有里くんはクローゼットを閉じて私のベッドに腰を下ろし持っていた本を開いている。耳にはいつものヘッドフォン付きでこちらにはお構いなしだ。…男の子って異性の部屋で、こうも図々しいものだったっけ。二度目ましての状況に追いついていなかった有里くんは何処に。
彼の当たり前のような順応性を見ていると、私が間違っている気しかしないこの状況に抗えず、とぼとぼと自室から台所へと向かう。
ツッコミが欲しい…。そう切に願う私だったが、人間の順応性というものは誰にでもあるものだと理解するのはそう遠くなかった。





世界をこえた日常




(有里くん、次来るのいつ?この漫画の続きもってきて欲しいんだけど)
(……)
(なに?)
(…なんでもない)

(いつもビクビクしてたみよじは何処に…)




一年くらい前の続き!

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