(黒バス/帝光中/青峰)先輩





「なあ、あんたが杉原伊澄?」
「…そうだけど」


ガラガラと突然開いた家庭科室の扉から入ってきた大柄な少年の言葉に、伊澄は一拍置いて冷静に答える。手元はカチャカチャと食器やフライパンを洗っている真っ最中。ここは礼儀として止めるべきかと迷ったが、意外そうな顔をして許可無くズカズカと部屋に踏み込んできた彼の姿を確認し、ままいいかと判断した。
目には目を、歯には歯を。それなりの礼儀にはそれなりの礼儀をが彼女のモットーだ。


「なんだよ、さつきの言うほど美人でもなんでもねーじゃん」
「勝手に入ってきてその言い方は失礼極まりないと思うわよ、少年」
「ああ?そっちこそ人が話しかけてるときに洗いもんするってどーなんだよ」


真横に立たれ、グイッと肩を掴まれる。あっちは大して力を入れてないように見えても残念ながらこちらはそうはいかなかった。思わず顔をしかめて「いたい…」と呟けば、少年は呆れたように肩を竦める。


「はあ?全然力いれてねーよ。つかあんたちっちぇーな。オレの胸の位置だ」
「それは良いから離してくれる、少年。本当に痛いんだけど」
「へーへー、わかりましたよ」


涙目で睨んでくる伊澄に、まるでこちらが虐めている気になってきたのか素直に手を離す。ほっと一息つき食器洗いはあとにしたのか、泡だらけの両手を水で濯いでエプロンで拭いた伊澄は「で?」と少年に向き直った。このままでいても埒が明かないと思ったのだろう。そんな伊澄に真っ正面から見据えられた彼はニヤリと笑っていた。


「君、桃井の関係者…とするとバスケ部?何年かは知らないけど、バスケ部が何の用かしら」
「さつきのこと知ってるってこた、やっぱあんたが『伊澄先輩』か。思ったより可愛くもなんともねーし、胸もねーけど」
「私に用なら早く言ってくれないかな」
「なんだよ、怒んねーの?」
「赤の他人に言われても心に響かない質なの」
「…へえ。変な奴だな。でも赤の他人っつーのは腹立つんだけど」
「だって名前知らないもの」
「1年、青峰大輝」


ああそう、とあっさり返してくる伊澄に少年――青峰は愉快気に笑う。こんなちっこいのが容赦なく切り返してくるのが新鮮だった。普段はその生まれつきの目つきと成長期真っ最中な体格でビビられるのも少なくないのだ。まあそれに伴うように多少暴力的な性格もしているのだが。


「それじゃあ青峰。1年生でバスケ部で桃井の知り合いらしい君が、2年で家庭科クラブの私に何かご用かしら」
「さつきとはただの幼なじみだよ。そうだな…強いて言うなら気になったからって奴」
「は?」


顔をしかめる以外の初めての表情に、青峰は更に楽しそうに笑う。余談だが、そんな青峰の獰猛さの無い中学生らしい表情に、伊澄は更に驚いた。


「だって部活でも大して先輩らと関わらねーアイツがいっつも楽しそうに話すんだもん、あんたのこと。バスケ以外興味ないアイツがさ」
「ノロケ?」
「ちげーよ!大体ノロケはどっちだよ、アイツが話すあんたの話の方がよっぽどノロケだろーが!?」
「…………」


それは完全に不可抗力なんだけど。
口を閉ざしながら、あの後輩は普段どんな話をしてるんだと眉を顰める。自分にその気は無いぞと思い、今度会ったときは問い質そうと決めた。降りかかる火の粉は振り払ってなんぼだ。


「それで、わざわざ幼なじみの言葉の真相確かめる為に来たってことかな。君、部活はどうしたの」
「試合明けの休み。さつきはよそに偵察行ってるから、余計な茶々は入んねーと思って来てみた」
「そう。じゃあもうわかったなら君も帰ったら?私、これ洗いきりたいんで」
「…なんか母親みてーなことしてんだな。ああそうだ、アイツにドリンクの作り方教えたのもあんただったっけ。ありゃ美味かったな」
「あら、嬉しい言葉じゃない」


素直にお礼を良いながら微笑む姿は青峰がまたまた初めて見るもの。思わず驚いて目を開く姿は先程の関係が逆転しているようだった。

『先輩のそばは安心出来るの!』

そう部活後嬉しそうに話していた幼なじみの顔が浮かぶ。これが興味を持たれなかったさっきと、少し心を砕いた今との違いか。
そろそろいいかと思ったのか、黙々とこちらに構わずスポンジを手にとる伊澄に、青峰は口の端を吊り上げる。
それはまるでバスケで強いライバルに勝とうとする強気な笑い顔だった。





楽園に陥落





(マネージャーに誘ったけど間髪入れず断りやがった)(やっぱ簡単にいかない方がおもしれー!)



先輩で楽しもうとする猛獣予定。近い未来力関係は完全に逆転します、当たり前だ←
簡単に言うと青峰出会い編だけどバスケでも強敵求める青峰なんだから普段でも素直にちょちょいといかないのを楽しんでそう。ただしグレるまで。きらっきらしたピュア峰は想像できなかったけど明るい笑顔ならセーフ…セーフな筈だ。これから如何に懐かせるかが正念場です。先輩よ、猛獣使いになるのだ!




かぷ談?
ちなみに青峰と桃井ちゃんは+な幼なじみが好きです。でも桃井ちゃんの初恋は青峰でもいいよ。中2でテツ君ラブになればそれで私は満足。ちなみに総受けは黒子っちです。相変わらずな主人公受けスキーきたよこれ!火黒も黄黒も緑黒も青黒も桃黒も日黒も伊黒も高黒もぜんっっぶ大好きだね(うわあ…)我ながら節操がないです。だがしかしラヴァーが止まらない。夢は辛うじて書けるのにCPは全く書けない腐女子ってどうなんだろう…←