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【SSS】旅のしおりは書きこみ式で

「うう……圭斗先輩、どうか俺を嗤ってください」
「どうしたんだい野坂」

 突然野坂が僕に連絡を入れてきた。かなり逼迫したような感じだったね。野坂だし、それはもう大変なことだと思うじゃないか。僕は鬼じゃない。後輩からのヘルプにはまあ答えてもいいかなとは思っていたんだよ。

「もうすぐ、対策委員で春の番組制作会が行われるのですが」
「ああ、そういう時期だね。対策委員としてのラストスパートだね」
「はい、それでダブルトークのことについてヒロと一緒に高崎先輩に聞きに行ったりもして、準備をしていたんです」
「へえ、それは随分と本格的だね。それで?」


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【SSS】微笑みは爆弾

 ぴんぽーんとインターホンをひとつ。部屋の鍵はもらったし、これから行きますという連絡もしたけど、やっぱり「来ましたよ」という合図はしておきたい。

「いらっしゃい」
「こんにちは。ついでだったので買い物もしてきました」
「ありがとう。えっと、冷蔵庫とか勝手に開けてもらっていいし」
「それじゃあ、改めましてお邪魔します」

 夏に宏樹さんと出会ってから、食事療法のお手伝いという名目でおうちにお邪魔してはご飯を作ったり簡単なレシピを教えたりしてきた。宏樹さんは病み上がりで、食べる物にもある程度制限がかかっていたから。
 そうやって一緒に過ごしている間にいつしか惹かれていて。それが男の人として好きなんだなって気付いたのは最近だったけど、宏樹さんも同じ風に思ってくれていたみたいで。そんなこんなでお付き合いを始めて、新しいマンションの台所で冷蔵庫チェック。


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【SSS】出会いの糸を結う

「こんにちはー」
「何もないけど上がってくれ」

 もうすぐ卒業して実家に戻るということで、少しずつ物が減っている越谷さんの部屋。今日は私たち姉妹の家を圧迫しつつある物を越谷さんにもお裾分けに来た。原付でちょっと(結構)走れば来れるので楽ですね。

「越谷さん、よかったらお菓子どうぞ」
「ありがとうと言いたいところだけど、黄色くて丸くてふわふわしたヤツだったら俺も大量に持ってるんだよなあ」
「あっ、そうですよね! 出所を考えたら…! 完全に失敗です!」


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【SSS】桜柄のティータイム

「ハルちゃーん」
「あらあずさ、残念。ちーならプールに行ってるわよ」
「ンもう! ちーが「日曜の昼ならいるよー」って言ってたから時間合わせて来たのに!」
「そのうち帰って来るわよ。上がって待ってなさい」
「お邪魔しまーす」

 長い休みのちーはバイト詰めだってことは知ってたけど、一応いつなら空いてるかなって聞いてみた。そしたら、忙しい日は朝の7時半から夜は10時半くらいまで働いてるし、休みの日曜にはプールに行きたいからそれが終わってからならいいよって。
 プールで泳ぐことがちーのストレス発散とかリフレッシュ法だってわかってるから、無理にあたしの用事で止めることはしない。あたしは家も近いし時間もたっぷりあるから。本当にちーの時間が取れるときで。
 

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【SSS】高崎悠哉の料理帳

 どうしてこうなった。俺はただいつものように飯を食いながら駄弁って飲むだけのつもりだったのに。気がつけば、あれよあれよと担がれて台所に立っている。それも、間取りが同じと言え人の部屋の台所だ。

「高ピーがご飯作ってくれるとかすげーレアだ、よく味わって食べないと」
「高崎クンの料理か〜、楽しみでしょでしょ〜」
「高崎先輩て俺と何かするときはなんっもしないっすからね! これは本当に貴重っすよ」
「Lてめェ、はっ倒すぞ」

 いつものようにLの部屋にビールと適当な食料を持って乗り込んだら、伊東と山口がいやがった。メンツ的にIFサッカー部とかいう都市伝説的な派生サークルだろう。そこまではいい。
 飲むならつまみが必要だ。このメンツなら普通に考えて料理をするのは伊東だろう。次点で家主のL、それがダメでも居酒屋バイトの山口がいるのにどうして俺が台所に立っているのかと。


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