「朝霞クン、お豆腐食べる?」
「ああ」
「はいどうぞ」
「ありがとう」
それぞれの趣味の場所を巡るツアーが終わって、夕飯時。寒かったし、ノリと勢いで鍋をすることに。当然、場所は唯一の下宿生である俺の部屋。メニューは湯豆腐(と言う名の雑多な鍋)だ。嫌いじゃないけど得意でもない。
ここで言う得意不得意というのは好き嫌いという意味じゃない。俺は猫舌で、これまでも豆腐には殺され続けてきた。よそってもらった豆腐を箸で切り、しばらく放置。ここで俺は台所に立ち、器をもう1枚持ってくるのだ。
「文房具屋! 文房具屋に寄っていいですか…!」
「よかろう」
今日は、各自の趣味の店を歩き回るというツアーの日。参加者は私にリン、それからロイとあずさ。ルールは簡単。各自行きたい店をリストアップして、どういうこだわりがあるのかなどを紹介しながら歩くだけ。
基本、他人の趣味を否定しないメンバーだからこそ出来る歩き方だと思う。共通の趣味でなければ同じ時間を過ごすのがしんどいという関係もあるにはある。ただ、このメンバーはいい意味で不干渉なのかなと思う。
ふらりと通りかかった文房具屋で、ロイが挙手をした。本来ロイの時間には知る人ぞ知る古本屋へと立ち寄り、絶版になっているような本やCDなどを買い漁っていたのだけど。こういう思い付きも一応オッケーというルール。