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【SSS】世界の入り口に置いて行くもの

「これ、私もかぶってみていいですか?」
「いいよ。はい」
「ありがとうございます」

 今日は10月31日、ここ最近ではハロウィンで盛り上がってるね。本来のハロウィンのあり方はともかく、こういうイベント自体は嫌いじゃない。だからちょっとだけだけど乗ってみようかなと思って用意していた物がある。
 上からかぶると可愛いお化けちゃんに仮装できる白い布。お化けちゃんの顔はコミカルと言うかファンシーと言うか、可愛い感じにしてある。本気を出せばもっと禍々しくも出来たけど、トリックオアトリートを仕掛けたい相手がさとちゃんの場合、本気で怖がらせちゃいけないから。
 念には念を、お化けちゃんのテストはちゃんとやった。昨日、緑大で高崎相手に実験してみたら、いくら可愛いお化けちゃんでもいきなり脅かされればビックリはするらしい。こういうのが嫌いな高崎でそういう反応だったということで、さとちゃんにはもっと驚かせない方向で行くことに決めた。


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【SSS】衝撃のカザミドリル

 さて、今日はアルバイトだよ。とは言えポイント倍付け施策のない平日の午前中は人があまり来ないので、割とゆるっとしていてね。僕はレジ前の商品の補充をしながら、退屈なんだーとレジに立つ星羅と軽くお喋りをしていたよ。

「タンデムに憧れるんだ!」
「タンデムと言うと、バイクの2人乗りのことだね」
「そうなんだ!」
「星羅には立派なジープがあるじゃないか」
「ボクのジープもカッコいいんだ!」
「なら、どうして」


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【SSS】人の悪意を跳ね返す

「うわっ、何だいきなり」
「トリックオアトリ〜ト」

 白い袋のようなお化けの衣装を被った長野っちが、サークル室にやってきた高ピーを驚かせている。今日は火曜日で、長野っちは単位交換制度っていうのを利用して緑大の授業を受けに来ている。何でも、その筋の凄い先生がいるんだってね。俺はよくわかんないけど。
 俺やタカシがサークル室に来る前から長野っちはお化けの衣装を被ってイスの上に正座して待っていた。だけど、長野っちの狙いはあくまで高ピー。ターゲットじゃない人間が来たところで微動だにせず言葉を発することもなく。逆にそれが不気味さを増してたんだけど。

「何してやがる」


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【SSS】お麻里様は見た!

「着いたぞ」
「お邪魔しました」
「今何時だ?」
「7時過ぎかな」
「じゃあ帰って二度寝出来るな」

 かけていたアラームより早く目覚めて、ぐだぐだする理由もなかったから予定より早く帰ることにした。通勤や通学で交通量が増える前、早朝のタンデム。昨日の行きと同じように、高崎のビッグスクーターの後ろに乗って来て。
 うちのマンションの駐車場を、猫が歩いている。向かいの大きな一軒家から女の子が出て来て、ご飯なんだーと言いながらお皿を地面に置く。すると、猫は家の方に歩いて行く。こんな光景も、早朝だから見られるのだろう。


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【SSS】ただひとりだけの

「お風呂上がりのビールとは」
「お前さっき散々「まだビールの美味しさはわかんないな」とか言っときながら」
「飲んでみたいです〜」
「で、また「よくわかんないな」とか言って俺に投げんだろ、知ってんだぞ」

 菜月と飯を食う約束をして至る今。飲むのに部屋に戻れば学祭の準備に奔走する宮ちゃんに目撃されたり唐揚げを差し入れられたり。菜月とは互いの近況や学祭のこと、その他下らない事を話しながら至る今。日付が変わるか変わらないかくらいの時間帯だ。
 ムギワンもすっかり静かになったし、帰って来た時には明るかった大学構内もいつしか暗く静まり返っていた。まあ、大学祭実行委員はサークル棟の中に籠って作業をしているだろうが。
 シャワーには寒いからという理由で風呂に湯を張り、交代で入浴を済ませる。自分の部屋で湯を張るなんざ、ひょっとしたらこの部屋に住み始めてから始めてかもしれねえ。髪も乾かして、部屋着に着替えて、菜月はメガネをかけて。やることは晩酌だ。


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