ぴんぽーんとインターホンをひとつ。部屋の鍵はもらったし、これから行きますという連絡もしたけど、やっぱり「来ましたよ」という合図はしておきたい。
「いらっしゃい」
「こんにちは。ついでだったので買い物もしてきました」
「ありがとう。えっと、冷蔵庫とか勝手に開けてもらっていいし」
「それじゃあ、改めましてお邪魔します」
夏に宏樹さんと出会ってから、食事療法のお手伝いという名目でおうちにお邪魔してはご飯を作ったり簡単なレシピを教えたりしてきた。宏樹さんは病み上がりで、食べる物にもある程度制限がかかっていたから。
そうやって一緒に過ごしている間にいつしか惹かれていて。それが男の人として好きなんだなって気付いたのは最近だったけど、宏樹さんも同じ風に思ってくれていたみたいで。そんなこんなでお付き合いを始めて、新しいマンションの台所で冷蔵庫チェック。