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【SSS】戦いは西で東で

「……よしっ。行くぞ浅浦、戦争だ!」

 東都に出陣した彼女を見送り伊東が実家に戻って来ると、年末だという感じがする。数年前、うちの父さんが蕎麦打ちを始めた。それが人に出せる物になってからは、年越しには伊東家の面々も招待して年越し蕎麦を食べることが恒例行事になっている。
 俺と伊東はその年越し蕎麦や正月に向けた買い物を頼まれるようになっていた。それぞれの母や兄弟は大掃除などに忙しくしていて外に出られない。派手な片付けの必要がないと見なされていることや、1人暮らしで買い物が日常の仕事と化していることもあり、外回りを担当するのだ。
 伊東は買い物カゴを手に颯爽と俺の車の助手席に乗り込む。この買い物では基本的に俺がドライバーを担当することになっている。その理由はただひとつ。コイツの極度の方向音痴だ。と言うか、伊東家は方向音痴が多すぎる。京子さんも酷いし、美弥子も軽度の方向音痴だ。でもコイツが一番酷い。


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【SSS】趣味とタスクの共有

「フミ、アンタこーた君が来るって言うのに掃除のひとつもしてなかったの?」
「通常運転でイケると思いました」
「ちょっと酷すぎるから、布団上げて簡単にでいいから片付けなさい」
「こーた、手伝え」
「友達に手伝わせるって」
「いえ、お邪魔させていただきますし、お手伝いしますよ」
「そう? ゴメンねこのドラ息子が」

 年の瀬の野坂家にどうしてこーたがいるのかという話である。簡単に言うと、家族旅行からハブられたのだ。厳密に言うと、弟(高3)の彼女(中3・ハーフ)の家の年越し家族旅行に招待された神崎家だったワケだけど、こーたはバイトもあるし旅行を辞退したのだ。
 バイトがあるのも本当だけど、旅行を辞退した理由は弟の彼女とはそんなに仲良くないし、むしろ簡易的に分けただけの部屋でいちゃいちゃしているのを日頃から聞かされているので我慢が限界に達しているし、年末のオタ活を充実させたいという理由だ。


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【SSS】警備が緩む冬の城

 星港で雪が積もったらしい。最強クラスの寒波がどうしたとかいうニュースを聞くのは憂鬱で仕方ねえ。雪が降っていようがバイトは通常運転だし、積雪があろうが原付で生身のまま走るだけだ。殺す気かと思う。外に出たくないのはこっちも同じだ、クソが。
 ――とまあ、そんなことを言っていても仕事は仕事なワケで、しっかりとこなしてきた。一応ウチの店の原付は積雪や凍結の予想されるときにはスタッドレスタイヤを装着している。備えはあるが、走るのは恐る恐る。年末と積雪の手当が入るとは言え雪はマジで勘弁してくれ。

「はー……」

 こたつに、バニラアイス。冬のアイスは夏と比べると濃厚なヤツが多くてこたつの中で食うには最高過ぎる。俗に言う自分へのご褒美アイスということで、真ん中に穴を開けて、カルーアを流し込む。


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【SSS】ホット&クールコンテンツ

「わー! すっごーい! ねえねえ、りっちゃんの本棚もっと近くで見てもいい?」
「好きなだけどーぞ」
「やったー!」

 自分の本棚を前にして、烏丸サンは異様にハイテンション。特に変わった本棚ってーワケでもないンすけど、見る物見る物がとにかく珍しいみたいスね。
 星大の3年生だという烏丸サンは、冴と同じ大学の情報センターでアルバイトをしてるらしいス。細かいことはどーでもいーんスけど、何か冴と仲良くなったらしーンすわ。実家は西京エリアにあるそうなンすけど、年末年始に帰る予定がないとか。


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【SSS】スケジュールを埋めていたい

 星港高校卒の面々で開かれている忘年会、その会場は俺の部屋だ。俺の部屋ならあんまりうるさくしなければある程度好き勝手出来るし、眠くなったらそのまま寝ても全然平気。何より、食べたい物をその時に作ることが出来るのが最大の強みだよね。
 今日集まっているのは高ピー、浅浦、拳悟、リンちゃん、そしてこっしーだ。こないだの芋祭の時から慧梨夏アウトこっしーイン的な。つかこっしーとかマジ懐かしい。同じ部活だったけどこっしーはバスケガチ勢で俺はにわか勢だったしな。
 MBCCの無制限飲みスタイルで、食べたい物やお酒は各自で準備しなければならない。お酒はともかく食べ物は完成品を持ち込む人もいれば、高ピーのように俺が作れることをわかっていて食材を持ち込む人もいる。例によってしばらくは台所籠もりかな。


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