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【SSS】せめて誠意を積み上げて

 世間では働き方改革とか人手不足とか何やかんや言ってるし、俺たち学生ですら就活云々のことを考えるときには福利厚生や休日のことを重視しているってのに。外は大荒れ、台風がやってきているにも拘わらず、俺たちは人に働いてもらうことを望んでしまった。
 テーブルの上にはピザ屋のチラシ。最近は俺の部屋にいることが多かったから、慧梨夏の部屋の食料が限りなく底をついていたのだ。デートが終わってそのまま慧梨夏の部屋に転がり込んだら、こうですよ。だけど今から外に出るのも危ないかなあ、などと。

「ピザデリー」
「……高ピー、お疲れ様です」


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【SSS】増えるルーティンの相談

「うーん」

 慧梨夏の左薬指には、さっき観覧車の上ではめたシルバーの指輪。今日は慧梨夏の誕生日で、そのサプライズプレゼントとして用意したセミオーダー品だ。9月の誕生石のブルーサファイアが埋め込まれたシンプルなデザイン。
 今日のデートコースは水族館からの観覧車といういかにもな感じで、今は串カツを食べている。席にフライヤーがあって、自分たちで揚げるスタイル。もうちょっと雰囲気のある店を調べておけば良かったんだろうけど、慧梨夏が串カツにテンション上がってたんで、結果オーライです。
 で、最初ははめた指輪を眺めてはにかんでいた慧梨夏だったけど、ついさっきからふいに難しい顔に変わったんだ。俺は串を揚げながらそんな慧梨夏の様子を観察してたんだけど、これは何か問題でも発生したか?


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【SSS】ピンポイントのインプット

「ふぁ〜わ」
「タカシ、眠そうだね」
「大分眠いです」

 秋学期が始まって数日。まだ真っ当な人としての生活を送るようには体が戻りきらない状況で、油断をすればあくびが出てしまう。大学には何とか来ているけど、足りない睡眠を授業中に取り戻しているという感じだ。
 そんな俺の様子を見て伊東先輩が苦笑い。「寝坊で単位落とさないようにしないとね」と言われれば、俺は「春学期のレポートはそれでひとつ出せませんでした」と返すのだ。せっかく苦労して書いたのに、起きた頃には提出期限が過ぎていたとかいう笑えないヤツ。


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【SSS】かーさんを中心に回る世界

 放送サークルABCのサークル室に、今日もカタカタカタとミシンの走る音がする。お世辞にも綺麗だとは言えない部屋も、その一角だけは綺麗に整頓されていて、窓から差し込む光もそこを聖域のように照らしている。
 多分この時期はどこの大学さんもだと思うけど、青女も例外になく大学祭に向けて動き出していた。青女の学祭は10月最終週の週末。あと1ヶ月でアタシたちはステージと喫茶店の準備をしなくちゃいけない。

「さとちゃん、そろそろ休んだら?」
「ありがとうございます。でも、もう少しでキリが良くなるのでそこまで行ったら少し休みます」
「そう。無理はしないでね。家でもやってくれてるんでしょ?」
「家でもやってますけど、大丈夫ですよ」


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【SSS】22センチのステップスツール

 折り畳み式の踏み台を手に、高崎先輩はずんずん進んでいく。置いて行かれないように早足でついて行くと、普段は入っていくことのない建物の裏側の細い道にいた。軽い感じのドアが開き、失礼しますと高崎先輩が入っていく後ろをハナも失礼しますと恐る恐る歩を進めた。
 通路では、白衣を着た人たちがバタバタと銀色の車を引いている。奥の方の隙間からは、流れるレーンの上をお皿がすーっと動いていくのが見える。そう、ここは緑ヶ丘大学第1食堂の事務所。入って来たのは裏口でした。
 MBCCでは通年で昼放送をこの第1食堂でやらせてもらっている。学期が始まる時と終わった時に、高崎先輩やカズ先輩が食堂の店長さんに挨拶をしに来てるんだって。で、今日はその挨拶に何故かハナも連れて来られて。


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