「伊東。そう言えば、ミキサーテストの結果はどうだったんだ?」
ぶっちゃけ聞かれたくなかったし、正直に言えばめっちゃ逃げたいこの瞬間。夏合宿3日目、番組モニターのために来てくれた4年生の先輩から突き刺さる視線が痛いやらキツいやら何やらで。
「あ、えーと……」
「当然、95点以上を取ってトップ通過だっただろう?」
「と言うか、本当に話通りだな」
「つばちゃんがキレるのも納得でしょでしょ〜」
夏合宿2日目夜。これまで作ってきた番組のモニターが始まり、今日は1班から3班までの番組が発表された。俺をはじめとした前対策委員(合宿参加者の菜月と帰省中の長野を除く)はそのモニターのために青年自然の家に足を伸ばした。
モニター終了後、俺と石川、それと山口は喫煙所に陣取った。そして、これまで見た限りでの率直な感想をぽつり、ぽつりと吐き出していく。行きの車の中でも話していたが、俺たちの印象に残ったのは三井のイタさだ。
インターフェイスの夏合宿が始まった。1日目はダイさんによる全体講習と親交を深めるための簡単なレクリエーションをやって、夕飯。それが終わればリク番講習が始まる。
リクエスト番組の講習は前後半の入れ替わり制で行われる。前半組は2・5班と、3・6班。後半は1・4班と7班。講習をしていない班は番組の打ち合わせ。
講習はレクリエーションルームを2つに分けて行われる。機材を使う方と使わずに理論を教えてくれる方。もちろん、時間が来たらそれらを入れ替えてみんな平等に機材を使う。
「――というワケですので、よろしくお願いします」
「まあ、3班には学生が講師なんざナメてんのかと言いかねない男がいるからな」
「大人の事情ってヤツでしょ? 大丈夫大丈夫」
「よし、目標5分! 行くよ!」
つばめの号令で、俺たちはわーっと例のビルに駆け込んでいく。ガラス張りのエレベーターで6階まで上がったら、俺は企業サマの担当者に挨拶をして機材を運び出す。
今日は合宿前日と言うことで、対策委員はギリギリまで打ち合わせ。そして青年自然の家に持っていく機材を、定例会でお世話になっているビルの物置から搬出するという大事な仕事があった。
近くに駐車場はない。あってもクソ高い。だから路駐にならないようドライバーの啓子さんとゴティは車内で待機。スーパーDのつばめがいるとは言え、男手が一人いないのはちょっと痛い。
向舞祭も終わって、夏合宿があるけど俺の中では折り返し地点を過ぎたところだ。同じように、慧梨夏も同人イベントの方が少し落ち着いて、今はまた秋のイベントに向けて(俺のパソコンで)原稿と向き合っているようだった。
秋の足音が近付いているとは言え、まだまだ暑い。今は夜だから昼に比べれば全然いいけど、それでもじわっと汗ばむ陽気であることには違いない。部屋にはクーラーがかかっている。
「慧梨夏、アイスでも食うか」
「あっいいね! Ctrl+Sからのドロップにインで、休憩ー」
――と、慧梨夏が伸びをした瞬間のことだった。突如、外からガシャーンという大きな音。辺りを見渡していると、部屋の電気がフッと消える。室内灯も、エアコンも。テレビも扇風機も炊飯器も冷蔵庫もWi-Fiも全部! テレビの録画予約もおじゃんだ。