「じゃーん、これでどう〜?」
「却下」
「え〜!?」
「蛍光が目に痛い。相変わらず色と柄が喧嘩しててかちゃかちゃすぎる。そもそも、じゃらじゃらしててステージ上で動くのには邪魔だろ、それ」
今日はステージ前の大事な準備、衣装合わせ。俺のコーディネートセンスが壊滅的だと言われることもあって、朝霞クンが俺の家で当日着る服を選んでくれる。朝霞クンのセンスは確かだし、ステージにも合わせてくれそうだから完全におまかせ。
まずは、お前はどういうコーディネートで行くつもりなんだと俺のセンスで服を選ぶ。ただ、これが早々に大却下を食らっちゃったよね。うん、知ってた! やっぱり素直に朝霞クンにお願いしよう。
「おーい、川北ー」
「はーい、なんですかー?」
バサッと前の前に広げられる紙には、格子が描かれている。その紙に書いてある文字を読んでいくと、これはシフト表だとわかる。カッコ仮と後ろについているから、これから決まる先のシフト。
今はテスト期間でバタバタしているけど、春山さんはバイトリーダーの書類仕事もこなしている。今日の俺はA番で、自習室のB番には林原さんと冴さんが入っている。あっでも今日は土曜日でテストはないからレポートの人が多めかな。
「あーさーかークン」
「話しかけるな」
人が追い込みの作業をしてるっていうのに、山口の奴は暢気な顔をして話しかけてきやがる。台本が上がってないならともかく、今はもう練習だって何だって出来るはずだ。
確かに、戸田と源は1・2年生らしくテストでカツカツ。今現在ブースにいるのは3年で履修コマ数に余裕のある俺と山口だけだ。戸田や源がいないなりにやることはあるだろうに。
これから行われるのは、緊急の班長会議。丸の池ステージを巡って緊急に各班長に周知しておきたいことが出来たと監査の宇部が駆け回り現在に至っている。
普段から宇部は多忙だが、忙しそうな様子を隠そうともせずに大変だ大変だと走り回っているのは珍しい。普段ならどれだけ多忙でも段取りがしっかり出来ているから慌てることはまずない。
「ステージ前の忙しい時間に集まってもらって班長の皆さんには感謝します」
「どうした監査、緊急の班長会議なんて。部長を通さずに、お前の独断でやることか」
「連絡が後手になったことに関しては申し訳ありません。文化会監査から緊急に周知してほしいと通達を受けました」
「あ、こっしーさん」
「よう」
こっしーさんの目の下には、クマが出来ていた。理系の研究室だと徹夜をすることもあるとは聞いていたけど、今回のクマは研究とは関係ないそうだ。何て言うか去年よく見たヤツだなーと懐かしさを覚える。
「こっしーさん目の下すごいですよ」
「昨日、まだセーフかなと思って朝霞の部屋に行ったんだ」
「朝霞クン、作業してたんじゃないですか?」
「だな。全然セーフじゃなかった。追い出されなかったのが不思議なくらいだ」