「ターカーちゃーん」
「あっ、果林先輩。どうしたんですか?」
「タカちゃん相変わらず怠惰な生活だねえ。髭伸びてるし」
「ゼミ合宿から帰って来てから手付かずでした。特に誰と会う予定もなかったので。あ、じゃあ髭剃るんでちょっと待っててもらっていいですか?」
「はいはーい。急がなくていいよ、慌てたらまたカミソリで切っちゃうでしょ」
タカちゃんが住んでいるマンションのオートロックは、最近になってその解除番号を教えてもらっていた。バイトをしていないタカちゃんであれば、よっぽどのことがない限りは部屋にいるだろうと思って来てみたら、やっぱりいた。
アタシがタカちゃんの部屋に来たのにはちょっとばかり事情がある。ただ、悪い話ではないとは思う。アタシ基準ではね。去年までの当たり前が通用しなくなって、行き場を探していたというのもある。