(夏目/夏目)クラスメート


・前回の続き
・肩凝り娘(原因:妖怪)と夏目くん




私は夏目くんと仲が良い。


最近そう周りからはよく言われるが、それを嬉しいと思う反面少しだけ否定したい自分がいる。誤解させるような言い方だが、それは決して夏目くんが嫌いだからという理由でじゃない。絶対に違う。寧ろ私は夏目くんのことが好きだ。…誤解させそうなので重ねていうが、一個人として好きなのだ。男の子としてじゃない。普通に夏目くんが好きなのだ。
(そりゃ夏目くん美人だし優しいし気がないといえば嘘になるけど)

でも、私は夏目くんを好ましく思っていて夏目くんも私とよく一緒にいてくれるが(女生徒の中では、という前置詞がつくけど)、私と彼の関係はそれほど親しい関係ではないと思う。何せ、繋がりはただのクラスメートという関わりしかなくて、一緒にいるといっても偶然なことが多い。例えば昼食だって夏目くんは西村くんや北本くんと食べることが多いし、家は近所じゃないけど帰り道の方向がちょっと一緒なだけ。クラスが一緒でも席は離れてるから話す機会なんてそうないし委員会も違う。ただ顔を合わせたらたまに話す、それだけ。
それだけの関係で仲が良いといわれてもピンと来ないのが正直なところだった。



「ねえねえ、夏目くんはどう思う?」
「どう思うって言われても…」


学校からの帰り道。今日はそのたまたま偶然になったらしい、夏目くんと二人で小道を歩く途中、気になっていたことを告げる。
いきなりだな、と呆れたように返されるが彼はしっかり話を聞いてくれる人だとわかってるからふて腐れたりなんかしない。思った通り、今まで私が一方的に口に出していたことでもちゃんと聞いてくれていた夏目くんは少し口を閉じて、困ったように目線を少し下にさげた。


「その…みよじは、いやか?」
「え、何が?」
「だからさ…その…俺と仲が良い、っていわれること」


きょとんと目を丸くする。思ってもみない言葉に驚いてしまったが、夏目くんが少し寂しそうに見えて慌てて否定した。


「え、ち、違うよ!?いやっていうか気恥ずかしいっていうか、その、私は夏目くんが迷惑じゃないかなって思ってね!ほら噂とかね、たったらいやじゃないかなって!」
「うわさ?…………あ、ああ、噂な!え、そんなのあるのか!?」
「ないですないです。寧ろ噂されたら私の方が申し訳ないっていうか夏目くんこんなに美人さんで優しいんだから釣り合わないっていうか、仲良くしてもらってるのもなんか、そう、申し訳ないっていうか!!」
「は?」
「っていうか私は夏目くんのこと好きだけど仲良しっていえるほど仲良しって思ってていいのかというか!!」
「は!?」


夏目くんが声を上げた気がするがとにかくすみませんすみませんと頭を下げる。
夏目くんかっこいいもんね。儚い系の美人さんだもんね。イケメンだもんね。まともに顔見たら免疫あってもなくてもぎゃふんって思うもんね。しかも中身も優しくて人見知りっぽいところがまた良い味だしてるよね。あと少し初なところがたまらないって意見もあるし。あ、そういえば夏目くんと仲良くなってから私の肩凝りも最近減ってたりするんだよね、確か。原因がツボなのか夏目くんのオーラなのか知らないけど、とりあえず夏目くんのお陰なんだよね。凄いよね夏目くん。
そんな、タキシード仮面もびっくりな夏目くんと仲良くしてもらってていいのかなとね、思うのですよ。私は。しかもきっかけとか全くない訳じゃないか。不安に思うんですよ、自分の魅力なんてこれっぽっちもないのだし、尚更。あれ今更だけど私なんで夏目くんと普通に喋れる仲になってるんだろうと疑問に感じてきた。
少しネガティブになりながら、そうつらつらまくし立てていると、言ってる自分が情けなくなってくる。いや本当にこんな自分で申し訳ない。夏目くんもそう思っているに違いない。そう思うと怖くて夏目くんの顔が見れないが、ふいにいつぞやのように肩に力を込められる。思わず顔を起こせば、真正面にうつるのは夏目くんの真剣な表情でした。(ぎゃふん)


「そんなことない」
「へ?」
「そんなことない!俺だって、みよじと仲良いって言われて凄く嬉しい。嬉しく思う。だから申し訳ないなんて思わなくていい。釣り合わないとかそんなことない。俺はみよじと仲良くなりたい。みよじがいいんだ!」
「!」


おおっと、夏目くん。凄くかっこいいこと言われてしまってびっくりしたのと同時に感動したのは良い。嬉しさで涙腺刺激されてしまいそうになりかかったが、それはいいが、その台詞、凄く、その、告白的なあれに聞こえてしまったの、だが。いや私か。私の思考がおかしいのか。
でも夏目くんの顔が近くて(2度目)(慣れたとかそんなのありませんから)真剣でそれが相俟ってじわじわ嬉しいけど恥ずかしくなってくる。夏目くん、正気に、正気に戻るんだ。夏目くんの理性よ、ウェイクアップ!まだ離れない顔に、耳が熱くなってきたのが嫌でもわかった。て、あれ、以前は夏目くんすぐに驚いて真っ赤になって離れてくれたのに、あれ、まだ離れない。おかしい、な。
思考がぐるぐるしてると、ふと真剣だった夏目くんの表情がふっと緩む。なんていうか、少し微笑むようなそれになって、私の心臓にそれはダイレクトアタックだった。(ぎゃふん!)


「それにさ、覚えてないかもしれないけど、みよじは俺に初めて話し掛けてくれたんだ」
「ひ、え?いや、で、でも、まともに話したのって夏目くんが転校してきて暫く経ってた、ような、」
「…やっぱりか。それでも、俺は嬉しかったから」


驚きもしたけど、さ。
なんて凄く優しい表情でいいながら、肩を離して離れてくれる。学校じゃあまり見たことない、凄く柔らかい、そんな表情だ。それをあんな近くでまともに見てしまった私の脳内は大パニックを起こしていて、夏目くんのいっていることに全く検討がつけられそうもない。
初めて?私が?でも学校で初めて話し掛けたのは多分近くの席の西村くんか他の誰かでしょ?でも私が初めて?夏目くんの?いつ!?


「ごごごごごめん、わ、私全然思い出せなくて!お、驚かせるようなことしたの?私が!?」
「いや驚いたのはみよじのせいじゃないけど……まあいいか」
「え、よくないよ!?」


凄く気になるんですが、私は一体何を仕出かしたのか。知りたいのですが夏目くん。
笑って先を歩く夏目くんに慌てて追いつき顔を覗き込むが、彼は楽しそうに笑うだけ。私には自分がしたことも夏目くんが楽しそうにする理由も、全く意味がわからなかった。


「だから私何したのーー!?」
「だからみよじがした訳じゃないってば」


結局夏目くんは何も教えてくれないまま、私たちは別れるまでこの押し問答を続けることとなる。
これでまた一つ、夏目くんへの謎が増えてしまったのだった。





仲良し公認の夏目くん





(夏目くんって結構意地悪なのね)
(みよじって結構鈍いんだな)
(訂正、凄く意地悪)
(追加、それと少しビビりだ)
(なっ、意地悪ー!)
(ははは)


(……なに、あの二人付き合ってんの?)
(……見せつけられてるのか。これ)




お医者さん志望の夏目くんの続き。ちょっと距離近付けました。そしたら夏目くんが少し意地悪になりました。どうしてこうなった。
夏目くんは男女関係について凄く初だと思いますが友人関係だったら凄く真剣になるので少し大胆なことも平気でしてしまうと思います。そんで鈍いと思います。夏目級の美人さんに顔近付けられてみろ。2度目でも戸惑うし、内容によっちゃ照れるわ。気が少しでもあるならぎゃふん言いたくなるわ。夏目→←夢主になりそうで怖い。
ちなみに時間軸はまだ田沼来てない頃です。もちろん多軌ちゃんもいません。夏目の初めての女友達です。初めてっていい響きだね。それから夏目が驚いたのは夢主についてた妖の数がハンパなかったからです。ケロリとした女の子に妖が大きいのから小さいのまでくっついてたからです。前話から度々追い払ってるから最近肩凝りなくなってきてるんだよ。夏目くん陰で頑張りすぎだ。

肩凝り(妖怪付き)クラスメートと夏目くん、夢主の性格が迷走しそうですがとても楽しいよ。