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『奪われたガラスの靴』

(NARUTO/クシナ/連載後)世界主


8/1時、本誌ネタバレ注意

ついでに百合表現というかガッツリ要←クシナ表現あり。もっと正確にいうとミナト×要←クシナです。

さて、苦手な方は戻ろうか!









恋ってなんだろう。



ふと呟けば、一緒の部屋でのんびりしていたカナメがとても嫌そうな顔をする。理由を知っているから仕方ないことだと思ったが、それは明らかに女がする表情じゃないってばね。思わず零せば眉間に寄せられた皺が更に深まった。


「……どしたの、いきなり変なこと言い出して」
「………最近、わからないことが多い気がするの」
「クシナ?」


カナメの呼びかけに応えず、近くにあったクッションに顔を埋める。それ以降一体どうしたんだと思いつつも聞かずにこちらを気にしてくれてるだろう、顔を起こさずチラリと見てみた。途端、目があった瞬間走るのは小さな痛みにも満たない刺激。とある事情で数少ない友人である彼女はいつも通りの姿でこちらを伺っているというのに、いつもと違う自分がいるということに気付いたのはいつからだろうか。

ああそうだ、あいつが、波風ミナトがカナメの傍にいるようになってからだ。

金色の髪に青色の瞳。頼りないが第一印象だったあの男。そいつは最近漸くといっていいものか、カナメの隣にいるようになってしまった。考えただけでもやもや、むあむあ。そんな気持ち悪い感情に腹の奥で何かが疼きそうだ。


「カナメはミナトが好きなの…?」
「は!?な、何をいきなり…」
「ミナトはカナメに恋してるし愛してるって言ってた。にやけながら」
「………!」


あ、真っ赤になった。
見たことのない彼女の姿を新鮮に思う一方、もやもやが大きくなるのを感じる。何これ、何なの、これ。落ち着こうと大きな溜め息をついたカナメがガシガシと頭をかくのを見ながらそれにならって私も大きく深呼吸してみたが収まる気配はなかった。ついでにいうと、彼女をこんな風にしてしまった男の顔が浮かんで眉間に皺が入った。
おっといけない。私も女らしくなるって決めたんだから、これじゃあさっきのカナメに文句言えないってばね。、と、口調も直さなきゃ。


「……っていうかあんたと波風、一体何話してるのよ」
「カナメの話に決まってるでしょ?…でも最近のミナト、デレデレして気持ち悪いんだ」
「そりゃ最初からだ」
「でも最近になって更に気持ち悪いもん。頼りないなよなよした男から実は凄い奴だって見直した時期もあったけど、一気に格下げしたってばね!」
「クシナ、口調」


おっと、また出てしまったみたい。
勢いよく顔を起こした私にカナメは突っ込んだが、まあそれでもカナメは口調を咎めることよりも話を逸らしたかったみたいだって知ってるからあまり気にしない。それに私がお淑やかになりたいといって口調を治そうとしたときもカナメだけは渋ったんだし。そのとき嬉しくて思わず抱きついてしまったのは良い思い出だ。(そしてミナトが頬をひきつらせてたのも良い思い出だ)


「でね、恋は人を変えるのってこのことかなって」
「はあ?」
「まずミナトでしょ?それから最近ミコトも好きな人できたみたいだし。あとカナメもだし」
「…私、そんな変わった?」
「………やっぱり恋ってよくわかんない」


どうにも無自覚らしい、不本意そうな彼女の表情に唇を噛む。何故だろう、無性に悔しくてならなかった。


「唇、噛みすぎて切るんじゃないわよ。ったく、にしてもクシナだって誰かを好きになったことくらいあるんでしょ?」
「……わかんない」
「はーあ?」
「だって周りだってムカつく男共ばっかりだもん」
「…ああ、ハバネロだもんね」
「う、うるさいってばね!」


カナメの言葉に思わず焦るが、それでも私の事情を知ってるカナメはハイハイと苦笑して頭に手を伸ばしてくる。人柱力だと知っていても変わらないその手の暖かさに恥ずかしくなって握りしめていたクッションにまた顔をうずめた。


「カナメはさ、」
「うん?」
「ミナトのどこが好きになったの?」
「…………絶対にあいつに言わない?」
「言うわけないじゃん」


そんなあいつを更に喜ばせること、したくないってばね。顔をガバッと起こせば難しい顔して重い溜め息をするカナメの姿が見えた。これが恋する女の子の姿で良いのかしらと疑問が掠めるが、次いでふと見えた微笑みに時間が止まった気がする。というか、私の体が止まったのか。訳が、わからなかった。
な、に、これ。


「……私を、好きでいるって、ずっとそばにいたいって言ってくれたとこ」
「―――」
「性格とか外見とかそんなんどうでもよくて……まあ、髪と眼の色は綺麗だと思うけどさ。それでもやっぱり好きって言われたから。隣にいたいっていってくれたからさ。……恥ずかしかったし面倒だったし、姉さんのこともあったから逃げ続けてたけど、でも嬉しいって気持ちが段々生まれちゃった。よ、要するにミナト押し負けちゃったの!以上!」
「そ、か」
「……ちょっとクシナ、リアクションなし?っていうかあんた顔真っ青になってるわよ!大丈夫なの?!」


カナメに肩を支えられて、心配そうな眼で見られて、思わずその眼を見てられなくて俯いた。
ショック、だったのだ。彼女のその瞳の輝きが、緩まれる口元が、下がる眉じりが。そして語られる内容が。

一言一言告げられる度に鳩尾あたりがグルグル気持ち悪くてめまいがして手が震えて背筋に汗が流れて、血の気が引いていく瞬間を自分は理解してしまった。

そしてその理由も。


「クシナ、…クシナ?」
「、カナメぇ……ッ」


私の髪だって好きだって、綺麗だって言ってくれた。眼はわかんない、でも真っ直ぐ見つめてくれた。
変なあだ名付けられても寧ろ助けてくれたときもあったし、人柱力に選ばれたことがわかったときも、それに泣いたときも、彼女は傍にいて変わらないでいてくれた。器に愛を満たしてくれた。
厳しくて、皮肉屋で、それでも優しくて。女同士でもずっと一緒にいられるって信じてた。ミナトがカナメを好きだってわかっても、それでもカナメがずっと友達だったらいいやって思ってた。


でも違った。これは親愛でも友愛でもない、恋だったんだ。


じゃなきゃ、なんで今私は泣いてるの。なんで涙が止まらないの。胸が痛いの。グルグルしてるの。
絶対私の方がカナメのこと先に好きになったのに。私の方がずっと大好きなのに。想いだってこっちの方が大きいのに。嬉しいって、ありがとうって、好きだって愛してるって言われるのは、私の筈だったんだ。そうだ。それなのにミナトに盗られちゃったんだ。イヤだ。ヤだ。ヤだよそんなの…!
そんな冷静に考えれば理不尽だとわかる考えが頭を駆け巡ってゆく。ボトボト零れる涙の止める術なんて知らない。ただ、顔を合わせてくるカナメの表情を視認した瞬間、思わず私は手を伸ばしていた。


「――カナメ!!」


首に腕を回してすがりつく私に、カナメは驚きながらも頭を撫でて強く抱きしめてくれる。
嬉しくて、普段だったら涙なんて直ぐに止まっちゃうようなそれ。抱擁が初めて苦しいものだとわかった今、私はそれでも彼女の背中に必死に手を伸ばすしかなかった。





奪われたガラスの靴





(女同士なんて知らない。だって私はこんなにカナメのことが好きなんだから)
(失って、奪われて、初めて気づいた)(――遅いよ、私)






ガチ百合のターン←
連載後で素直になれないけどちゃんとミナトが好きな世界主とそんな世界主と親友だと思ってたクシナさん。要するに私はクッシーナも愛してますってことです。泣かせてるけど。捏造しまくってるけど。番外編ってことですいません。
ミナト×世界主←クシナが当サイトの真理になりそうです。好きだ、公式親子。そして過去編を知った今時間軸決定しました。いつか書く。
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