三千世界の鴉を殺し


ひとつ前の記事のタイトルですが、これはとある都々逸で(作者に諸説あり)
素敵な内容だと思ったので記事にします。



三千世界の鴉を殺し
主と朝寝がしてみたい

―高杉晋作




古代インドでは須弥山(しゅみせん)を中心にして、四つの天界、九山八海、日、月などがあり、これが一世界とされていました。
この一世界が千集まったものを小千世界
小千世界が千集まったものを中千世界
中千世界が千集まったものを大千世界
つまり千の3倍ではなく、1000^3なので10億
この大三千世界は千が三つ重なるので三千大世界、略して三千世界というそうです



鴉(からす)はやたがらすと言われる三本足のカラスを表します。

中国では古代より奇数は陽を表すと考えられており、三足烏は太陽の象徴でした。

鴉を殺す=太陽が出ない=ずっと夜

いつまでも貴方と寝ていたい
それくらい一緒にいたい人


殺すって怖いと思ったらこんな意味だったのかと感心して終了
ではなく


有力な一説がでてきて


鴉を殺す
↑起請文が関係
起請文とは約束を破らないことを神に誓うための用紙
神様用、相手用、自分用
と三枚一組になっている

鎌倉時代後期ごろから、起請文は各地の社寺で頒布される牛王宝印の裏に書くようになる

特に熊野神社の牛王宝印がよく用いられ、そこには熊野神社で神様の遣いとされたカラスが多く用いられていた。

(誓約を破ると熊野のカラスが三羽死に、本人は血を吐いて死ぬ)



高杉氏がこの都々逸を送った遊女は有名な遊女であり、たくさんの男と婚約をしていたそうです。
その婚約に使われていたのが起請文で
カラスを殺す=たくさんの男たちとの婚約を破る

そして自分だけのものになってしまえばいいのに
という願いが込められている





作者や解釈が定まっていないけれど、二十六文字にここまで強い意味を持たせるのはすごいと思いました。
言葉とそれに潜む背景はとても奥が深いです