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月光ゲーム

「せっかくの満月やのに、生憎の曇り空やね」
「曇っていようが、嵐だろうが満月であることには違いないわ。月の引力から人は逃れることなんかできない」
「引力が月の魔力の秘密なんやてね。理代に聞いたわ。人間の体の八十パーセントは水分、地表もその八十パーセントが海で占められてる。月が潮の干潮に影響を及ぼすように、人体にもその影響を及ぼす。そうやろう?僕はまた月光が人の精神を乱すのかと思ってた」
「引力……光……クンダバファー」
「何?」
「月の餌」
「……ルナ?」
「どうして私たちは地面にへばりついたままあくせく働き、日々迷い、悩まなくてはならないのか? 一体何者がこんなに大きな犠牲を人間に強いるのか? 人の見る幻想はどういうシステムになっているのか?」
「……」
「クンダバファー」
「……」
「私たちが月の餌を日々生産していることをあの天使たちは隠そうとする。人が苦役から逃亡しようとするのを阻止するために。クンダバファーを埋め込まれた、哀れな私たち。
クンダバファーは夢見る機械。地球はムーン・フード製造工場」
「クンダバファーって何?」


「月のための労働は人にとってあまりに過酷だから、天使は幻想を見せて人を欺く。人に幻想を植え付ける装置がクンダバファー。幻覚の器官。宇宙中央委員会は人間の客観理性の発達を阻止したがっている」
「宇宙中央委員会……」
「神聖宇宙中央委員会が決議した地球および地球上の有機生命に関する条項――」
「……」
「地球は位階制度的神聖宇宙において、上位から第六番目、下位より第二番目に位するものとす。
地球は一個の衛星しか従えることができず、またその衛星はそれ自身の衛星を所有することがない」
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