カラン、とドアベルが鳴り、薄暗い店の中へと歩を進める。ちょうど空いているカウンター席に陣取って、適当な物をオーダー。ここは西海駅前にある、とあるバー。二十歳を過ぎてから、たまに足を運ぶようになった。
「あら福井ちゃん、いらっしゃい」
「こんばんは……」
この店を切り盛りしているのが、女装家のベティさん。185センチはあるだろう大柄な体で、とても迫力がある。昔、柔道をしていたそう。とてもお洒落で、流行にも敏感。立ち振る舞いが本当に綺麗だし、私はいつも勉強させてもらっている。
ベティさんとはバイト先で知り合った。私はFMにしうみでディレクターとして働いているのだけど、ベティさんはそこで週に一度のレギュラー番組を持っている。最初は近付き難かったけど、コスメやファッションの話で意気投合してからは早かった。