行きたいところがあるというだけの理由で誘ったっていいとか、相手も自分を誘ってくるんだからお前から誘っても何ら問題はないーみたいなことを林原さんが言ってたのを信じてみたい。
片想いがこんなにツラいとは。ふう。何か動きを起こすのも精一杯。一緒に行きたい場所があるんだって声に出すのもなかなか緊張する。ましてや、行きたい場所が場所だもんなあ。
「タカティの誕生会だし、やっぱりお酒はいっぱい必要なんだよね」
「エージとおハナにも話してあるし、大丈夫だよミドリ。緑ヶ丘のしきたりじゃないけど、やるからにはがっつり満足してもらわなきゃね」
タカティの誕生日が割と近くにあるらしい。いつしか俺たちインターフェイスの1年の何人かはこうやって集まって遊ぼうっていう機会を設けるようになっていた。その辺は2年生の影響かもしれない。
そんなこんなでユキちゃんと作戦会議の真っ最中なんだけど、正直それどころじゃないですよね! タカティごめん! なんだろう、でもユキちゃんと行きたい場所があるんだもんなあ。
「会場はタカティの部屋でいいってエージが言ってたし、お酒のことも多分心配いらないでしょー? あれっ、何か話し合うことなくなっちゃったかも」
こういう会が開かれるときの会場は大体俺の部屋かタカティの部屋って感じのローテーションになってる気がする。星港市内で、ある程度交通の便もいいからだろうな。
「ミドリって春休みどうするの?」
「どうするって?」
「実家に帰るとか、こっちにいるとか?」
「少しは帰ると思うけど、バイトもあるしこっちにもいるよ。でも、春休みには行きたい場所があるからそこにも行きたいなーって」
「へー、どこに行きたいの?」
これは誘うチャンスなんじゃないかとか、でも引かれたらどうしようとか、そんなようなことがぐるぐるぐるぐる回ってわーってなって、でも平静を装いつつ行きたい場所をストンと整理する。
「あのね、緑風にある緑風市立図書館と、山浪の山浪市立図書館に行きたいんだ」
「図書館? 珍しい本でもあるの?」
「えっと、俺が見たいのは本じゃなくて建物の方」
「そっか、ミドリだもんね」
「この2つの市の図書館は有名な建築家の人がデザインして割と最近出来たんだけど、そういうのを自分の目で見て勉強したいなと思って」
「ミドリは目標があるもんね、何でも勉強にしちゃうってすごいな」
「あっ、でも観光もしたいんだよ。藍沢の美術館にも行きたいし。現代アートって言うかシュールレアリスムって言うか」
うう……そうだよなあ、普通は図書館なんて建物を見に行く場所じゃないしわざわざエリアを越えた旅行みたいな移動の仕方で行く場所じゃないよなあ。うん、知ってた!
ユキちゃんを誘うならもうちょっと近場で、かつ楽しいところの方が絶対いい。そもそも建築どうこうっていうのは俺の興味であって。もうちょっとしっかり考えるべきだったなあ。
「あたし、藍沢の美術館にいつか行きたいって思ってたんだよね」
「えっ、そうなの?」
「うん、あたし美術館とか結構好きなんだー」
「あっ、えっと、そしたら一緒に行かない?」
「いいの?」
「ユキちゃんと一緒の方が楽しいし」
「そしたらみんな誘……ううん、美術館とか図書館だし人数は増やせないね」
「えっ」
「ぐるっと回って全部見ようよ、美術館も図書館も。建物アートみたいなことだよね、今回の図書館って」
うわー、言ってみるものだなあ。ありがとうございます林原さん! お礼に何かおみやげ買ってきますね! うわー、うわー、うわー……うわー、うれしい。これでしばらく頑張れるや。
「タカティの誕生日前に行けたらお酒も買って来れるんだろうけど」
「そうだねー」
「じゃあ、詳細プランを詰めよっか」
「そうだねー」
end.
++++
ミドユキのあれこれ。ミドリは結構アクティブな方だと思うので、建物見たさにぱーっといくこともあるかなと
ミドリが1人でわーってなってひゃーひゃー言ってるのを楽しむだけの話のような気がしてきた。リン様へのお土産は何がいいかな!
ユキちゃんは美術館などが好きらしい。でも確かに羽飾りなんかは独特のセンs……森ガールの設定でしたねそう言えば。でも森ガールって羽飾りつけてるのか…?