「ゲンゴロー、ちょっとSEの入りが遅いかも〜。つばちゃん、さっきのタイミングでケーブルが泳いじゃってる〜」
朝霞サンが別件でこっちに顔を出せないでいる間、練習は洋平を中心に行っている。朝霞サンがいないから、内容がどうこうと言うよりはアナウンサーとの連携練習。それと、ゲンゴローにミキサーの実践練習をさせるのがメイン。
何か、3年生が言うにはクソ日高は必修残してるとかアホとかバカとかでテストがカツカツ。練習は奴がいない間にやろうって作戦。今も洋平がサクッと機材使いま〜すって取ってくれて、難しいところを重点的にやってる。
出来れば人の少ない場所の方がいい。そう朝霞に呼び出され、始まる話。差し出されたのは、星柄の巾着袋。
「朝、ブースに入ったらこれが」
「これは?」
「俺も詳しくはわからない。でも、山口が言うには須賀がなくしたって言ってる巾着の特徴と一致する。悪いけど、お前から須賀に返しておいてもらえないか」
「ええ、わかったわ。それで?」
「ん?」
「言いたいことはそれだけじゃないんでしょう」