ピンポーンとインターホンが鳴って、はーいと出るより早く殴打されるドア。向こう側にいるのは見るまでもなく下の人だろう。

「だから、そんなにドア叩かなくてもすぐ出るっていつも言ってるじゃないすか高崎先輩」

 同じアパートに住んでいるこの先輩は、用がなくても突然うちに遊びに来ることがある。もちろん俺の用事なんて聞かれたことはないし、俺が暇なんだからお前も暇だろ、と押し切られることも多々。
 駐輪場を見れば乗り物の有無で部屋にいるかいないのかはわかるし、互いのバイトのシフトも大体わかってるから仕方ないと言えば仕方ないのかもしれない。