まあしかし、この塊をどうする?
 何をしていて今に至るのかを想像するのも腹が立つが、まずはゼロ距離になっているその体をひっぺがすところから始めるべきか。

 6月30日午前8時半、買った本を置き忘れていたことに気付いてゼミ室に戻ってみれば、リンと美奈がソファーに座ったまま眠っていた。机の上には各々のマグカップと、ポータブルDVDプレイヤー。耳にはイヤホンを入れたまま。
 この状況から見るに、おそらくここで一晩過ごしたのだろう。別に、ゼミ室に泊まるのはよくあることだから何がどうとかっていう問題じゃない。ただ、状況が何とも言い難い。
 中身のディスクを確認すれば、洋画のラブストーリー。コンロ脇の台には、見慣れない四角の缶。中身は香りからするに紅茶だろう。その缶を包んでいたと思われる包装紙も見つかった。単なるラッピングではなく特別なそれ。