「あ、鵠沼くん。ごめん、4限終わるのちょっと押しちゃって。待った?」
「いや、そんなに。それじゃ、行くか」

 8号館の入り口前で待ち合わせていたのは、白いジャージを着た鵠沼くん。体もしっかりしてるしジャージだから見た目は体育学部っぽいんだけど、れっきとした社会学部の学生だ。俺とは同じ授業を取っているというだけの繋がりなんだけど、今日はこれから重要な戦いに出向くことになっていて。
 緑ヶ丘大学の社会学部では。2年生からゼミに所属することになっている。そのゼミの説明会が秋学期が始まった頃から開かれていて、学祭が終わる頃にはどこのゼミに入るかの申し込みをしなければならない。中には全体での説明会の他に個別説明会や面談を設けている先生もいる。俺の希望する佐藤ゼミもそのタイプだ。
 鵠沼くんは現社科の学生だけどゼミはメディ文の佐藤ゼミを希望しているそうだ。なんか、ゼミは学科とかあんまり関係ないみたい。でも現社科だし1人では不安だということで今日これからの個別面談には俺と一緒に行くことになった。正直、俺も1人じゃ怖かったし一緒に行く人がいてちょっとホッとしてる。