「おい! 日高はいるか!」

 物凄い剣幕でミーティングルームに殴り込んで来たのは、朝霞だ。その様子は常軌を逸していると言うのが正しいかもしれない。怒りに打ち震えている、そんな感じ。元々“鬼のプロデューサー”なんて呼ばれておっかないと言われているけど、そんなモンじゃない。修羅だ。
 俺は自分の班、鎌ヶ谷班のブースからその様子をチラリと窺っていた。朝霞の怒号と、その朝霞を挑発するような日高の応酬。幹部系の班だろうと、反体制派だろうと誰も近付けない空気だ。近付いたが最後、流れ弾を食らうのは自分たちだからだ。

「トラさん、どうなってんすか外」
「部でファンフェスにステージを出す件で朝霞がキレたって考えるのが自然だな。朝霞班にその話は伝わってなかったから」
「えっ、マロ先輩、怖いんですけど…!」
「俺も怖い。トラさん、大丈夫なんすか。俺たちも何かされたりしませんよね?」
「大丈夫だ。……とはまだ言い切れないな。とりあえず、しばらくお前たちは外に出ないでここで静かに待機しててくれ」