「おー、菜月ー」
「おー、亮介ー」

 生きてやがったかしぶとい奴め、と再会の挨拶もそこそこに本題に向けて動き出す。なんてったって寒い。ここのところ異様に寒かったし、今日も例に漏れず寒い。でもって夜だから余計に冷える。早く行くところに行ってぬくぬくしたい。
 目鼻立ちのはっきりした痩せ型で(――と言っても圭斗ほどひょろくはない)、高崎と同じ銘柄(色がちょっと違う)の輸入煙草を手にうちを迎えたのは橘亮介。今は西の都・西京のお隣で古都・青丹エリアの大学に通っている。専攻は確か史学系だったかな? 歴史とか、そんな。

「ヤスは?」
「遅れるってー。何か風やら雪やらで電車アレだと」
「あー、あっちの方はなー」
「ま、先行ってやってましょうや」