たまにはご飯でも食べに行かないか、そう誘うと菜月さんはわかったと一言、出てきてくれる。夕方5時半、彼女の住むマンションに迎えに行けば、3時間前に電話をしたときの寝ぼけた様子はすっかりなくなっていた。

「お邪魔します」
「どうぞ」
「どうしたんだ圭斗、ご飯でも食べないかなんて。また何か作りすぎたのか?」
「いや、今日は外で食べたいと思ってね。せっかくだし、菜月さんと一緒にと思っただけだよ」

 それに、夏合宿が終わってしまえば彼女はまた引きこもり生活に舞い戻っているだろうと。元々インドア派の上にまだまだ残暑厳しいこの時期に、外に出ているはずがないと確信を持った上での電話だった。