コンクリート打ちで、さらに奥まった廊下の突き当たりにあるサークル室は、暑さが外よりこもって大変なことになっている。ダイヤル式南京錠を解除して扉を開けた瞬間の熱気を想像すると……うわあ。
 ――というのを覚悟しながら扉を開けると、涼しい顔をして出迎えたのは直。ミキサー席に座って、機材のあれこれを調整しているようだった。ヘッドホンをしているから声はまだ届かないだろうけど。

「あれ、おはよう啓子」
「おはよう直。暑くない?」
「さすがにちょっとはね」
「ちょっとで済んでるとか」