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うだうだしながら語る

イラスト書くのが、ちょっと苦痛になりかけていたので、うちの子Tシャツっていう、前から気になっていた企画に参加してみようかと、ラフを描いてみたり。

金魚草は、あの通りキャラが濃いので、考えるより感じて描いている感覚だったからまだ良かった。それに何より楽しかった。

あ、小説の方は、現在二冊読破しました。新しく買った物と、愛読している本と。

両方とも、読んでいて顔がにやけっぱなしだったw

やっぱりいいよね、読書。魔法使いのハーブティーまた読みたい。

昔から絵を描くより本を読む子供だったので、なんやかんや言っても、やっぱり本は落ち着きます。絵はどちらかというと、ハッスルする。これが好きなんだ!ってのを詰め込んでいるからな、私は。だからなのか、「これが好きなんだろ?お?」みたいなイラストは、萎えちゃって……。まあ小説もそうなんだけど。

例えばさ、

こういうシュチュが自分はキュンときた!だから書く!

って人と、

こういうシュチュが好きそうな人だし、これ書く

って人だと、圧倒的に前者の方が上手い人は少ない。形にする能力より、妄想する能力が高いから。でも、形にする能力も得たら、その人の作品は、何よりも輝いているし、胸に来る。

小説読んでてもさ、色んなシーンあるでしょ?得意と言うか、楽しんでいるパーツを捜し当てて、後書きで答え合わせすると、小説が二度美味しい。

まあそんな事より(ぇ)

野崎くんの新刊どういうことですか!!!!!

ラストの野崎くん、あの、…………キュン死にするかと思った。あれは反則。

奇声は抑えられなかったよね、当然だよね。

……あれを目指して書きたい。奇声を上げてしまうような、突然起こるラブイベヤント書きたい。

くっそ……流石は少女漫画家……侮れない。

プロになりたいて訳じゃない。ただ、読んでくれた人(見てくれた人)を驚かせたいんだ!
自己満足とシリアス以外では、行動原理はそれに尽きるね!!ごめん私こういう人間なんだ!!!!


では、明日病院なのでそろそろ寝ます。おやすみなさい!(五時起きなので眠い)

鬱が進行しまして。

最近ちょっと……いや、かなり鬱の波が深くて、暫く小説の方をおやすみしたいと思います。

と言っても、一週間程度ですが。

さすがに、無意識に首に手を伸ばしていたのは、もうあかんよな、と。

……小説も、続きの構想は出来ているのですが、小説はイラストよりも心を映す鏡のように私は感じています。楽しい物語を書きたい、と……まあツイッターとかでも言っていたんですが、まあ今は書ける心理状態ではないと判断しました。

フラッシュバックが多発して、途中でよく手が止まって。苦しくて、今は、薬飲みたてなので割と落ち着いていますが、それでも物語は無理で。

すみません、愚痴みたいになりましたね。

まあそういうわけで、しばらくおやすみしながら、吸収の日々に入ろうかなあ、と。

簡単に言えば、書くのではなく、読むことに徹します。

ツイッターでも、出没頻度は低くなるかも?

正直言って、今の私だと、どこに居ても胸糞悪い愚痴吐きになりそうです。今ここで書いているような感じで。

これ以上はあれなので、一週間おやすみ、ってことで。

あと、日記、ここで再開出来たらな、って思ってます。

しかし予定は未定。
もしそうなっても、ツイッターに日記はリンクも貼りません。

だって、進んで読みたくないでしょう?

空木が咲く前に 四十二

役人さんに案内されたのは、待たされた部屋から程無い場所にある、大きな部屋だった。上の間と下の間に分かれているようで、私たちは下の間に二列になって座った。
前の列には左からお姉さん、宿木さん、私。後ろの列に明さん、梟さん、月丸と並んでいる。
侍従だろうか、同じ歳くらいの少年が、まるで守るように上の間とを仕切る襖の前に座り、藩主様の言葉を待ちながらチラチラと此方を見ている。
まあ、此方は正装とは言い難い格好なので、その瞳に滲む不信感は仕方ないとしか言えないのだけれど。
ほんの少しの居心地の悪さを感じながら、私は待った。時折、キィンと何かがぶつかるような音がするものの、其方を向けば皆は何事もないような顔をして、先程見たままの姿勢で座っている。
「ねえ、もしかして……」
そう小さく尋ねる前に、チリンと鈴の鳴る音がした。
それを合図に、二人の侍従が襖を開ける。
はっと姿勢を正すと、朱色の紐で彩られた御簾が目に入り、更にその奥、御簾のせいでぼんやりと輪郭しか見えないが、多分男の人が床から上半身を上げた状態で座っているのが見えた。
「殿の御前である、控えおろう」
侍従のその言葉に、宿木さんが頭を下げる。それに続き、みんなが頭を下げたので、私も慌ててそれに倣った。
「町に潜む者達と……ごほっ、木蓮の者達だな。頭を上げるがいい」
「では失礼して」
そう言いながら宿木さんが頭を上げる。私も頭を上げつつ周囲をチラリと窺うと、シュタンッ、と音をたてて、先ほどまで頭があった場所……目の前にクナイが刺さっていた。……やっぱりか。
先ほどからの音は攻撃されて、それを防いでいた音だったんだ。気付かなかったけど、……目の前のクナイは確かな殺意を感じられる。
それをチラリと見やり、宿木さんは静かに微笑んだ。
もうさせませんから。
声を出さず唇だけでそう伝えると、宿木さんは前に向き直った。
「木蓮の宿木と申します。しみったれた小競り合いなんか止めて、正々堂々話し合いませんか?」
「ほう、此処までの事をしみったれた、などと申すか。肝の大きな奴よ」
「いえいえ、そんな事ありませんよう。私の様な矮小な存在なんて、まだまだですよ。……で、此処に潜んでいるのが、」
「二人、だな。男女だろうか?」
「動きに硬さと柔らかさがあるな」
「片っぽが梟さんくらいで、もう片っぽが月丸さんくらい?」
「身近な例えしなくてもいいじゃん〜。天井と床下から攻撃なんて意地悪い〜」
「へ〜……」
みんなそこまで分かってたんだ。
……あれ、もしかして私お荷物?
「まあそういう事で、話し合いで穏便に済ませましょうよ。これじゃあ何の為に私たちが呼ばれたのか、分からなくなるではありませんか」
「ふむ……それもそうだな。おゆう、斎、もういいぞ」
藩主様がそう言うと、二つの気配はコトコトと音をたててどこかへ消えた。二人がお庭番なら、そう遠くへ行ってはいないだろう。いつでも飛んできて、此方の首を狙って来るだろう。
「ふむ、では本題に入りましょうか。失礼に当たるかもしれませんが、私は気の短い性分でしてねえ。いいですか、藩主様?」
「構わぬ、申すがいい」
「では……。藩主様、あなたは本気で雪継様を後継者にするおつもりはあるのでしょうか?」
「……何故そう思う」
藩主様のその言葉に、宿木さんはくすりと笑って返した。
え、え、これ、どういうことなの?
「雪継様と私たちが接触した事はもうご存知ですよね?先程の二人と似通った気配を雪継様の家で感じました。一応護衛だったのでしょうかね?しかしそうなると疑問が残るのです。後継者とするのなら、あのような荒ら屋などに住まわせず、城に招き入れて後継者としての教育を施せばいいものなのに。雪綱様は城外に大きな屋敷を持っていますね?雪定様も、城外ですが一軒家に住んでいる。では何故雪継様だけ不平等なまでの生活をしているのか。まず疑問はそこですね」
宿木さんの言葉は、私も疑問に思っていた事だった。雪継様は、あの小さな家にたった一人で住んでいる。手入れをする余裕すらない生活を送っている。服だってろくな物を着ていなかった。見た限り、食料もあまりないようだった。
あまりにも不遇過ぎる。
苦い気持ちで目を細めると、藩主様は低く笑った。
「城下町にたどり着いて、もうそこまで把握しているとはな。だから常の国の者は侮られぬ」
「誉め言葉として受け取っておきます。で、問いのお答えは?」
「くっくっく……。雪継を後継者としようとはしている。正式に知らせも出している」
「では……何故でしょうねえ」
「答えは簡単だ」
にやり。
御簾の奥で、ろくに見えもしないのに、藩主様が心底意地の悪そうに笑ったのが、私には感じられた。
「儂は……三人の息子、誰が後継者となっても良いのだ。継ぐ力さえ持っていれば。雪継を後継者と謳ったのは、雪継が一番力を持っていなかった。それだけの事よ」
「そんな……。藩主様は、それはつまり……!」
「意図的に、後継者争いをさせているんですね?」
藩主様は、その言葉を肯定するかのように、くつくつと低く笑った。

空木が咲く前に 四十一

城内への侵入は、呆気なく出来た。出来てしまった。
入り組む構造を物ともせず宿木さんはすいすいと上っていき、道中見咎める人はおらず、寧ろ此方に見とれる人すらいた。
まあ、身内的な見解を含むだろうが、みんな綺麗だ。
先頭を歩く宿木さんは、絹糸のような白髪に、溶けた鉄のような瞳が見る者に微かな畏怖と、それを上回る美しさを持っている。男性的な、スッと伸びた体には女性らしいしなやかさがあり、まるで物語の中の天人のようだった。
それに続くお姉さんは、動きに凛と麗があり、紅い着物がそれを引き立てている。普段はあまり着飾らないせいだろうか、今のお姉さんは何処までも女性的に感じられ、それでいて溢れる位の力強さも窺えて。なんだか着飾らないのは勿体なく感じた。
隣を歩く月丸はもう言わずもがな。油断なく辺りを見渡す動作さえいつもの三割り増しで。あまり見つめていると此方の心臓が保たない。
後ろを歩く梟さんと明さんは、賭場にいるような格好なのに、何故か俗世を感じない。梟さんの飴色の髪は、今は少し伸びているようで、お姉さんの手で綺麗に纏められて、瞳と同じ翡翠色の簪がよく映えている。腰の辺りまで帯は下げられていて、柔らかな頂は紺色に紅い花のサラシで、思わずそこに目線が行ってしまい、隣の明さんは複雑そうな顔をしている。そういう明さんは、珍しく赤銅の髪を下ろしていて、それだけなのに違う人間に見える。
……なんて一団だ。と言うか、この中に私がいても良いのだろうか。確かにお姉さんの魔法で、鏡を見た時は心底驚いたが、しかし基礎は私だ。私でしかない。
しかし、ここで暗くなるのはお姉さんに失礼だし、何より……強い気配が近くなってきている。
別の意味で気後れしてしまいそうな気配。感じる数は一つなのに、とても大きく感じる。
「では、ここでしばし待たれよ」
役人さんがそう言い、木製の床に机を囲むように座布団が置かれた部屋に入るように指示される。
「はい、分かりましたー」
宿木さんはそう答え、のんびりとした動作で座布団の一つに座る。
そう言えば、とふと気付いた。座布団の数が私達の人数と一致している。
偶然……と考えるには少しの疑問が残る。
「まあまあ、皆さん座って待っていましょうよ。藩主様にも用意があるでしょう」
そう言って宿木さんが促す。
「……座ってもいいのか、これは」
「どうしたの、月丸」
そう尋ねると、月丸は座布団を少し探る。すると、座布団の中から鋭い針が出てきた。
「……わぁ」
「……客の座布団にこのような物を仕込むのだろうか」
そう言いながら月丸は針を机の上に置いた。
「縫う時に混入でもしたのでしょうねー」
「毒が塗られていたとしても、か?宿木どの。此方にもある。皆気を付けた方がいいだろう」
「ど、毒って……」
「案ずるな。死ぬような物ではない。痺れ薬だろうな」
「……私も確かめてみる」
そう言いながら座布団を探ると……座布団の下から剣山が出てきました。
「大当たりだね〜、しのぶちゃん?あ、こっちは針なしだよ〜」
「同じく俺も無事」
「なんでみんな平然としてるの?なに、剣山が座布団に刺さっているのって日常茶飯事に含まれるの?」
そう矢継ぎ早に告げると、梟さんは事も無げに答えた。
「私達忍びだよ〜?これしきって感じ〜」
「あ、そうだった」
最近忘れがちになっていたが、私たちは忍者の一団だった。
と言うことは、これは通過儀礼か何かなのだろうか。
そう考えていると、す、と襖が開けられ、妙齢の麗人が茶器を持って現れた。
「粗茶に御座います」
そう言いながら、それぞれの前に茶器を置いていく
「ありがとうございますー。あ、でもこれいりません」
「はい?」
「流石に女性に酸漿のお茶は駄目だと思うので。三人分、別のを頂けませんか?」
「分かりました」
ではごゆっくりと、と三人分の茶器を盆に乗せ直した麗人が出て行くと、私はそっと宿木さんに尋ねた。
「酸漿のお茶って……なんで女の人は駄目なの?」
「堕胎の効果があると言われているんですよ。嫌なことしますねえ、あちらさんは」
「堕胎……」
私はがっくりと肩を落とした。
もう、相手が何をしたいのか分からなくなってきた。
それから暫くしてから、再び襖が開かれた。
そこにいたのはここまで案内……は宿木さんがしていたので……付き添い?をしてくれた役人さんが現れた。
「お待たせいたしました、殿の用意が整いました。どうぞ此方へ」

空木が咲く前に 四十

目立ってる。私達ものすっごく目立ってる。
それは決して民衆が英雄に向ける華々しく恭しいものではなく、ただ単に悪目立ちをしているのが現状だ。
原色で彩られた派手派手しい着物。それは故意に崩されていて、肩が見えていたり、着合わせが腰の辺りだったりして、とんだ歌舞伎者だった。肌にはこってりと白粉が塗られ、唇だけではなく目尻にまでも朱に縁取られ、上半身裸な明さんの背中には、顔料で竜までが描かれていた。
いったいどういう状況なのだろうか。
そう問いかけを含めて宿木さんを見ると、ほんにゃりと笑顔を返された。
どうやら異論は認められないようだ。
なのでそっと隣にいる月丸に目線をやる。
群青を基礎として、赤や黄色の紋様で描かれた着物。不服と顔に書かれてはいるものの、見方を変えると冷徹で傲慢そうな、女子としては少し強気に思える表情。目尻にほんの少し落とされた朱には、微かに色気さえ漂う。
あ、どうしよう、月丸格好いかも……。
ぽーっと顔を赤くさせながら月丸を見ていると、視線に気付いたのか、月丸は「どうした」と表情はそのままだが、優しさを感じる声色で問いかけられて、私は、私は……。
「もうだめぇ……」
とのぼせた。
「しのぶ!?」
よろよろと月丸に歩み寄る私を月丸が抱き留める。
しかしそれは逆効果だった。何せ顔が近い。それだけで全てを察してほしい。
「ひゃぅ……っ!」
「おい、体が熱いぞ。熱でもあるのか?」
そう言いながら月丸は私の前髪を払い、おでこをくっつけてきた。
「熱い……」
お願いです至近距離で囁かないでください頼みますからあなた今いつもの三割り増しで格好いいんですから本当に後生ですから。
「はぅぅう……」
くてりと月丸の腕の中で力が抜けた。
それをどう受け取ったのか、月丸は厳しい声で宿木さんに向かって叫んだ。
「宿木!しのぶが病にかかったようだ!」
「そうですね、不治の病ですね」
「そんな……!しのぶ、しっかりしろ!」
「しんけんなこえさんわりまし……」
「駄目だ、宿木!助かる見込みはないのか!?」
「ですから不治の病ですってば」
「恋っていうな」
「……ねえ〜、この茶番終わらせてもいい〜?今、この手で〜」
「おやおや、いったい何をする気ですか梟さん。……まあ、この位でいいでしょう。いい加減戻ってきなさいしのぶさん」
ぺちり、と宿木さんが私の頬を軽く叩く。すると体から熱が抜け出て、はっと正気に戻った。
突然の事に辺りを意味なく見渡すと……黒山の人集りが出来ていました。
「なんだこいつらぁ」
「大道芸人みたいな格好しているねぇ」
「何か芸でも始まるのかのぅ」
「刀持ってるぞ刀ぁ!あれで綺麗にすぱぁっと物を斬るんだぁ」
「いやいやぁ、それより剣舞の方があたいはいいねぇ」
以下略。
昨日は興廃しているとしか思えなかった町中なのに、今はこの有り様だ。て言うか皆さんどこから来たんですか。
「ふむ、これは一つ芸でも見せないとこの人混みは抜けられそうもないですねぇ」
「宿木さんは、な」
「……明?」
「ゴメンナサイユルシテクダサイヤドリギサマ」
「不問としましょうか。……じゃあ明、台になりなさい」
「あれやるの?」
「はい」
「あれって……?」
通じ合っている二人には悪いが、此方には意味の分からない会話だった。明さんは「まあ見てなって」と、首や肩を回しながら、人集りの輪の一番端に移動し、両指を組んだ。
「ほい、いつでもどうぞ、姉御」
「応。……行くぞ」
逆側の端にいつの間にか移動していたお姉さんは、コクリと頷く。
いつもとは違い、華やかで明るい色を纏ったお姉さんは、正直綺麗で羨ましいくらいで。お姉さんは此方に向かってふ、と笑い……明さんに向かって走っていった。
減速は一切無く、加速して加速して。明さんにぶつかる、と思ったその時、お姉さんは明さんの組まれた腕に足をかけ、そのままブンと放り投げられる。
お姉さんは空中に浮いたまま、横に三回転、縦に一回転し、スタンと人集りの向こう側に綺麗に着地した。
一瞬の静寂。しかしそれは歓声によってかき消された。
ワア……!と群集から声があがる。お姉さんはそれに対し、綺麗な所作でお辞儀をすると、いつのまにか人集りから抜け出した宿木さんの所へ駆け寄った。
「凄い……」
「て言うかあいつ一人だけずるい〜。衆目を利用するなんて〜」
「宿木さんのこと?梟さんも気付かなかったの?」
「……人混みが動いたのは感じた〜」
それはつまり、梟さんもお姉さんの跳躍に見とれていたのだろうか。
そう思うと、自然と笑みが浮かんだ。
「……何〜」
「ううん、なんでもないよ、梟さん」
「ふ〜ん?……じゃあ私はこの流れを利用させて貰おうかな〜」
そう言って梟さんはお姉さんと同じく端に寄った。
「え、梟さんも飛ぶの?」
「暮麻とはちょ〜っと違うけどね〜」
そう言って梟さんは助走をつけると、明さんの腕ではなく……なんと顔面を踏み台にして群集から飛び出した。
お姉さんのように回転は入れていないものの、それは人々の度肝を抜き、違った意味でざわめきが起こる。
こ、この流れって……。
その予感は的中し、群集からこんな声があがる。
「次はどんなことをするんだろうなぁ」
「楽しみだなぁ」
「なぁなぁ、賭けないか?どんな飛び方をするのかをよぉ!」
「お、いいねぇ!」
良くないです。全然良くない。
普通にあの距離を飛ぶのは難しいのに。高く長く飛ばないと、人集りの誰かに落ちそうで怖いんですが。
そんな私の心中を知ってか知らずか、明さんは笑顔でおいでおいでしている。顔面蹴られても明さんは動じていなかった。逆に怖い。
でも、人集りはなぜか逃がさないとでも言うようにみっちりとしていて、宿木さんみたいにすり抜けられそうにもない。これはもう……
「やるしかない、よね……」
ぐっと拳を握り、端へ歩く。それに合わせて明さんも重心を低くする。
息を吸って、吐いて、整えて。
助走をつけようと走り出したその時。
「ええい、何の騒ぎだ!」
と、黒紋付きの役人らしきおじさんが人集りを散らした。
「へぁ?」
突然の登場に、私はこけそうになったが、なんとかこらえた。
群衆は不平不服を口にしながらも、路地の奥へと散り散りに消えていった。
最後に残った役人は、背の丈は月丸より少し低いくらい。しかしそれよりも高く見えるくらいの気概が伺え、体は細く、しかし動きは機敏だった。
その黒い目が此方へ向くと、役人は慌てたような顔で此方へ走り寄ってきた。
「雪継様……!?何故このような格好を!」
その言葉に呼ばれたように、何処からか宿木さんが現れ……と言うか今までどこにいたの。と、まあ、役人に声をかけた。
「雪継様を知っている……と言うことは、それなりの地位のお方ですね。いや、だった、と言う方が正しいでしょうか?」
「……貴様何者だ」
ギリリと音がしそうな程役人は宿木さんを睨む。
しかし宿木さんはそれに動じず、いつものヘニャリとした笑顔で応じた。
「聞いていませんか?常の国から来た……忍びです。あ、因みにその子はただのそっくりさんですよ」
「……木蓮と……町に潜むものか。耳にしたことはある」
「あ、じゃあ話は早いですね。案内して下さい、現藩主様の所へ」
「……何故、と問うのは愚問か」
「ですねぇ」
「いいだろう。そこの子供は雪継様と称しておくがいい。その方が通しやすい」
「ええ、そのつもりです」
ああ、それで納得がいった。派手派手しい着物なのに、私だけ紅をさされなかったねはそのためか。
宿木さんはヘニャリヘニャリと笑うと、役人さえを連れて、私達を城の中へと導いた。
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