ログイン
FHH
2024-5-5 16:42
スポンサーサイト
この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。
2011-12-3 18:58
青い車と 3
「君が待っていたのは誰かな?」
男がそう聞いてきて、私は呆然と驚愕した。
「なぜ、そう思うのですか」
そう尋ねた声は心なしか震えているように感じた。尋ねられた内容によってではなく、私の思考が透けて見られているような感覚によって、だ。
「質問に質問で返すということは、図星だね?」
「な、んで」
「そうするのは何故相手がそう思い至ったのか知りたくて返す言葉なんだよ。それがただの勘なのか、根拠を持った詰問なのか、知りたくて聞くんだ。……私の考えは当たっているかな?」
「…………………、」
「沈黙、ということは正解だね?」
男が僅かに首をかしげると、それによって黒縁の眼鏡がキラリと光を反射した。普段見るのなら綺麗だ、不思議だと思う現象なのに、今は怖くて仕方ない。
「なぜわかったんですか」
「知りたい?」
「……意地悪な人ですね。性格悪いって言われません?」
「虚勢を張っちゃって。まあいいか。大した種明かしでもないし。
ただし、種明かしは車の中で、ってのはどうかな?」
そう言いながら男はベンチから立ち上がり、車のドアを開けた。
――目の前の、私がついさっきまで見ていた青い車のドアを。
「――その車、貴方のだったんですか」
「ああ、そうだよ。言ったよね。「青は好きなんです」って」
「貴方、何者なんですか」
眉間にしわが寄るのを体感しながら尋ねると、男は意地悪そうな笑みを浮かべてこう言った。
「この青い車の持ち主で、名前は宮間 修一。仕事は内緒。まだね。
その他にも私を表す単語はあるけど、それは自分で探るのも楽しいとは思わないかな?」
「……信用できる根拠が何一つないんですが。」
名前だって偽名かもしれないし。
ただ一つ確かなのは、この青い車が彼の持ち物だということだけだ。それは車のドアを開けたキーが証明している。
「さあ、助手席にどうぞ、群青色の御嬢さん?」
悪魔のような男だ。そう感じながらも私は彼の手を取った。
久しぶりに触れた男性の手のひらは私の手が収まってしまうと感じてしまうほど大きく、温かかった。
<<prev next>>
カレンダー
<<
2011年12月
>>
日
月
火
水
木
金
土
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
最近の記事一覧
編集中
空木が咲く前に 五十八
空木が咲く前に 五十七
空木が咲く前に 五十六
空木が咲く前に 五十五
空木が咲く前に 五十四
アーカイブ
2016年8月(1)
2016年3月(1)
2016年1月(1)
2015年12月(2)
2015年11月(1)
2015年4月(2)
2015年2月(1)
2015年1月(1)
2014年12月(1)
2014年11月(3)
2014年9月(2)
2014年8月(2)
2014年7月(2)
2014年3月(5)
2014年2月(22)
2014年1月(7)
2013年12月(7)
2013年11月(2)
2013年10月(1)
2013年9月(7)
2013年7月(5)
2013年6月(4)
2013年3月(2)
2013年2月(4)
2013年1月(2)
2012年12月(15)
2012年11月(4)
2012年10月(9)
2012年9月(6)
2012年8月(6)
2012年7月(10)
2012年6月(8)
2012年5月(1)
2012年4月(3)
2011年12月(1)
2011年10月(2)
カテゴリー
小説(124)
未分類(29)
プロフィール
誕生日
9月14日
もっと見る
最近の話題
メンタル
お菓子
ひとりごと
靴下
一品おかず
飲み物
好きな芸能人
鬼滅の刃
新着のバトン
質問バトン
簡略プロフィール
うちの子お店紹介
オーバーロードプロフィールバトン
さっきの
はい
もしもまだ誰かがここに居るのなら新境地
2次元キャラ初恋バトン