小説版のアイ・アム・レジェンドやリアル・スティールを書いたリチャード・マシスン原作の映画。スーパーマンを演じたクリストファー・リーヴがリチャード役で主演。舞台はマキノー島に実在するグランドホテル。
1972年。ミルフィールド大学で脚本家志望のリチャード・コリアーの処女作上演後のパーティー会場に、成功を喜ぶ彼を会場の隅から見ている上品な老女がいた。
彼女はリチャードに歩み寄り、「(私の所へ)帰ってきて」という不思議な言葉と共に懐中時計を手渡し去っていった。周りの皆は誰一人として彼女が何者なのか知っている者はいなかった。そして彼女はグランドホテルの自室に戻り、リチャードの書いた脚本を胸に抱いて思い出の曲を聴きながら、その夜静かに息を引き取った。
8年後の1980年、脚本家となったリチャードは仕事も私生活も行き詰まっていた。彼は原稿を求めに来る編集者から逃げるように車で旅に出る。
そしてドライブの途中で通りかかったグランド・ホテルに、引き寄せられたかのように宿泊した。レストランのオープン前に立ち寄ったホテル内の歴史資料室で、リチャードは背中に熱い視線を感じた。振り返ってみると、そこには若く美しい女性の写真が掛かっていた。しかし、名札は外されていた。ホテルの老ボーイのアーサーに尋ねると、彼女はそのホテル内の劇場で公演をした女優であることを知る。
その時から、リチャードは彼女のことが頭から離れなくなり夜も寝つけなかった。そして彼女についての調査に没頭し、写真の主は1912年当時、人気のあった女優エリーズ・マッケナであり、1912年以降活動しなくなったことを知る。また、彼女のメイドだったローラに話を聞きに行ったさいに、彼女が1972年の夜に亡くなったことも知る。
彼はさらに調査を進めていくが、彼女の愛読書がリチャードの哲学教師の著書である『時の流れを超えて』であることに驚き、ここで「帰ってきて」の意味を知る。さらにホテルの過去の宿泊名簿から自分が1912年に時間旅行している事実を見付け出した。リチャードは時間旅行を研究するフィニー教授に相談し、「現代の所持品を捨て、行きたい時代の品物を身に付けて催眠術をかける」という方法を聞き出し、1912年の衣服・硬貨を身に付け、ホテルの一室で自分に催眠術をかける。

目を覚ますと、リチャードは1912年に時間旅行していた。彼はホテル中を探し回り、ホテルの側の湖畔で佇むエリーズを見付け出し彼女に接触するが、マネージャーのロビンソンに追い返されてしまう。リチャードは警戒を続けるロビンソンに追い返されながらもエリーズと接触を繰り返し、彼女は次第にリチャードに惹かれていく。ロビンソンの予言めいた言葉−−運命を変える人と出会う、彼女はそれを信じていたからだ。
エリーズはリチャードを公演に誘い、舞台で台本を無視した台詞を言い始める。その言葉はリチャードに向けた愛の告白であり、リチャードは彼女の気持ちを確信するが、その直後にロビンソンに呼び出される。ロビンソンは、自分がエリーズの才能を見出し、世紀の大女優にするために人生を捧げてきたことを告げると同時に、リチャードに対して彼女に近付かないように警告した。
それはロビンソンが純粋にエリーズを女優としてスターへと導こうとする純粋な気持ちからだ。
リチャードはその場を立ち去ろうとするが、ロビンソンの部下に殴られて気絶してしまう。翌朝、馬小屋で目覚めたリチャードはエリーズを探すが、既に公演の役者たちはホテルを出て行ったことを知りショックを受ける。エントランスで立ち尽くすリチャードは、役者たちと別れてホテルに戻ったエリーズと再会し、互いの気持ちを確かめ合った。エリーズは女優としての人生よりもリチャードと生きる幸せを選んだのだ。
エリーズは女優を引退してリチャードとの暮らしを満喫し、結婚後は彼の書いた脚本で女優に復帰することを夢見ていた。リチャードも彼女と人生を共に生きることを考えていたが、衣服のポケットから不意に取り出した硬貨が1979年製造の物だったため、リチャードは1980年に引き戻されてしまう。リチャードは再び1912年に戻ろうと催眠術をかけるが、二度と時間旅行することは出来ず、ショックを受けた彼はホテルの部屋に籠り食事をとらなくなってしまう。数日後、異変に気付いたアーサーが部屋に入り、憔悴し切ったリチャードを発見する。アーサーが医者を呼ぶ中、リチャードは薄れゆく意識の中でエリーズと再会する。
時間旅行が題材のSFラブロマンスで現在と過去でフィルムを使い分ける手法が使われているのが特徴。とにかく過去で写真でしか見れなかったエリーズと出会うシーンは淡い色合いでとにかく幻想的で美しいです。劇中曲としてパガニーニのラプソディーが流れるのですかとても情緒的かつ切ない。違う時代に生きてる2人だからこそ決して結ばれません。悲しい事にリチャードは最終的にエリーズの後を追ってしまう訳でありますが、エリーズが生きた歳まで生きる結末にするとか墓参りへ行くとか別のラストが良かったなぁ。