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節分の遊戯(皇帝と暗闇の雲)

節分をすっかり忘れていました。
今更ながら小噺です。

「退屈だな」
妖魔が嘆くように呟く。
私は鬱陶しさに眉を寄せた。
「だからとて私にまとわりつくな」
余程暇なのか暗闇の雲はこうして触手を伸ばし私へちょっかいを出してくるのだ。私はこの妖魔を気に掛ける程時間を持て余している訳ではないのだが。
「ファファファ、わしの悪戯位で目くじらを立てていては策士など名乗れぬぞ?」
聞き捨てならない台詞に私はつい反応してしまった。
「用があるなら早く言え」
「用などないわ。面白い物を見付けたからお主と遊ぼうかとな」
つくづく気紛れな妖魔だ。暗闇の雲は相変わらず優雅に空中へ浮遊している。艶やかな女の姿をしているがその思考は私にも計り知れない。
「意味が分からん」
「つまらぬ男よのぉ。折角の節分の豆が勿体ないだろう?」
「では私にそれをどうしろと?」
何とも上手く話に乗せられている気がするがまぁいい。こやつなら闇のクリスタルについて聞き出せる可能性がある。私が豆を投げる役、妖魔が鬼役になり、奇妙なる遊戯が始まった。
ところが暗闇の雲は中々私の豆に当たらない。躍起になって檻の罠を張っても見事にかわされる有り様だ。
「ふふふ。ただのふざけとてわしは手加減などせぬぞ?」
「ふん。ならば私も容赦なくやるだけだ!」
柄になく我を忘れて必死になるが暗闇の雲にのうのうと逃げられてしまった。
月の渓谷に残された私は結局良くも豆だらけにしてくれたとゴルベーザの説教を受ける。
覚えていろ、あの妖魔め。
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