もしかして同じ道

母の昔話はよく覚えている。
子供時代〜高卒後に社会人になった後のことまで、よく話してくれた。
そして私もよく覚えている。

私はこれから引っ越すので、次の物件を探したり、部屋のレイアウトを検索してみて、こんな風にできたら…と楽しみにしてみたり。
多分、北欧風とかキラキラ女子みたいな部屋にはならない気がする。
そういう気でいるからならないのだと怒られそうだけど。
ちょっと頑張ってみようかな。

それで、「理想のインテリア」みたいなページを見てて思った。
あー、これも母みたいだな。

母も言ってた。
「子供のとき、家の間取り描くの好きだったんだよ。実際の家はボロいから、『こんな家に住めたらいいな』って理想の家の間取りを紙に描いてたんだよ」
母は確か、笑ってて、自慢げに話してた。
自分の発想力が自慢なのか、絵の上手さの自慢なのか(間取り図だからほぼ直線のみだけど)

「夢のお家」を紙に描いてた子供時代の母はどんな気持ちだったんだろう。
そう考えてしまう。
今の私と同じ気持ちだったのだろうか。

子供の頃ピアノが欲しかった母は、私が欲しがったピアノを買ってくれた。
ピアノを習っていた友達の家にあって、素敵に見えて、ピアノも習いたくなって。
ピアノも習わせてくれた。

なんだ、良い母だったじゃん。

自分の解毒の面倒なところが、
「そもそも母が毒なのか分からない」
「そんなの『毒』じゃない」
と思うところ。

「自分で苦しんでいる(いた)なら『毒』認定でいいよ」説が好きなんだけど、どうだろう。
「またそうやって人の所為にする甘ったれたクズが」って言われるのが怖いんだよなあ。
「あなたは現実逃避と責任転嫁をしているだけです」って。

話しが逸れちゃったな。
母の昔話の話。

「お母さんは昔カップラーメンばっかり食べさせられてたんだよ。だからデブでね。それが嫌だから栄養学を勉強して、働いたらお料理学校にも行ったんだよ」

って話も思い出した。
母がカップラーメン嫌いだったので、カップラーメンは滅多に食べられなかった。
父はカップラーメンが好きなので、父は勝手に食べていた。羨ましかった。
そんな父のことを母は「お父さんはああいうものが好きだから」と言っていた。
子供の私は、母は父をバカにして呆れているように感じていた。

母の家はカップラーメンとスナック菓子ばかりの家だったらしく、それが嫌で、その反動でうちは油を避けていた。

ポテトチップを買ってもらった記憶はない。
カップラーメンは少しずつ買ってもらえる頻度が高くなっていったけど、もしかしてあれは母の解毒が自然と進んでいっていたのだろうか。

まあそんな訳で、脂質を極端に嫌う母だったので、炒めものもほとんど食卓に上がらなかった。
大体、具だくさんで、薄味の味噌汁。あとは煮物とか煮魚とか。

母がパートに出るようになってからは半額のお惣菜と弁当になった。
それ自体は別に忙しいし、そこまで手作り料理に拘ってるわけじゃないからいいんだけど。
母が作った塩分、脂質を減らした料理よりずっと美味しかったし。

私が幼稚園か小学校低学年の頃には結構凝った料理を作ってくれた記憶がある。
ミートソースのスパゲッティは大好きだったし、一緒にコロッケも作ったし(出来るだけ油を油を使わないで野菜多目で)、ヘルシーな砂糖控えめニンジンケーキも作ってくれた。

料理学校に行って習ったから、そういう技術や知識は身に付けていたんだと思う。
母は家庭料理を知らなかったかもしれないと考えると、なんだか切なくなる。

忙しさもあるんだろうけど、
時間が経つにつれてやっぱり生まれ育った、よく分からない食生活に戻って行ってしまったのかなあとも考えてしまう。

母の手料理の記憶はあるんだけど、その大半は味が薄すぎて美味しくなかったし、主食は玄米100%だし。
私も一般的な科手料理を想像することが難しい。
そもそも「一般的」が何か置いておいて。

家のご飯=美味しくない
家の食卓=父が居て怖い
のイメージしかない。

ご飯とみそ汁と…他に何が必要なのかと言われるとちょっと考えてしまう。
魚とか、小鉢とか?
小鉢には何が入ってるんだ…?

テレビとか、あとネットの普通の人が自分で撮った食卓の写真には皿がいっぱいあって、
「なんであんなに種類沢山食べるんだ…」と思ってしまう。

「普通のご飯」「普通の味噌汁の味」が分からないので、ネットで検索して作れるようになった。
普通の食事を作って、食べて、経験したい。
一人暮らしをしてから、料理の知識を増やした。

鍋を作ろうとして、具材が全然わからないことに驚いた。
うちは、「安くて栄養価が高く、塩分脂質がない」を一番にした食事だったので、鍋の具材は白菜と豆腐ぐらいだった記憶がある。あと大根。
これで充分なのかもしれないけど、なんかパッケージの写真と違うんだよな。

そもそも、食卓を思い出そうとしても、怖いとか嫌な思い出しかなくてあんまり思い出せない。
少しずつ、思い出していきたい。


理想の部屋を夢見たり、料理を勉強したり、無意識か意識かわからないけど、母を追ってるなあと思った話でした。