君の為に過ごす日々も、変わっていく日々も、悪くないかなぁ、なんて思ってしまう。
たぶん、それは、愛しいってこと。
日もようやく登り始めた早朝、俺はキッチンにて毎朝必ずと言っていいほど目玉焼きを焼く。
毎朝、二枚ぶん。
目玉は焼きすぎず生過ぎず半熟に。
ベーコンやハムといった飾りもつけて。
ご飯も味噌汁も熱々なうちに一気に茶碗によそう。
ベーコン付き目玉焼き、味噌汁、ご飯それから昨日の残りの食材。
これが、本日の朝食のメニューだ。
少しレパートリーがないと思う人もいるかもしれないが、去年まで一人暮らしの不摂氏な俺からしたらかなり立派な朝食だ。
我ながらここ何ヶ月かで結構上手く出来たもんだ。
今日も、黄身を潰さずに綺麗に丸く焼けた皿に乗った目玉焼きを満足気に見つめた。
食卓の上に2つの目玉焼き。
もちろん、一人で2つ食べる訳じゃないし一人ならもっと簡単にすませる
めんどくさがり屋な俺。
不摂生と‘きちんとする’という言葉が不似合いな俺は多分一人だったらこんなにも朝早く起きたりしない。
全ては…
「あ、おはよ…大和起きた?」
「…おはよ」
全ては愛しの目玉焼きが好きな恋人への愛の手料理の為だ。
愛しい恋人は眠気眼に俺を見つめ、椅子へと座る。
「飯…珈琲」
「はいはい」
ぶっきらぼうに女王様のように愛想なく俺に命令してくる大和。
とにかく夜ベッドでは俺の言いなりな淫乱な大和は、朝起きればこうして夜の仕返しなのか我が儘な野良猫へと豹変する。
まぁ、そのわがままな顔も朝と夜のギャップもどうしようもなく俺は好きなんだがね。
毎日ぶつくさ言いながらそれでも美味しそうに目玉焼きを頬張る大和も、目玉を子供のようにグチャグチャにして食べる大和も。
全てが、愛おしい。
だから…
大和の為に、と、なんでもやってしまう。
大和主義な俺へと変貌してしまうのだ。
「大和〜
口の端…黄身ついているぞ〜。」
大和は口の端に卵の黄身をこれまた器用にくっつけていた。
子供っぽいというか、なんというか…
「…取って」
あぁ、ぼんやりとして舌っ足らずな口調で言っちゃってまぁ…。
俺は大和の命令通り黄身を取ってやった。
と、言っても寝ぼけていたからこれ幸いにと俺の唇で直接取ってあげたんだけど。
「おぃ…」
「寝ぼけているようなので、奪っちゃいました」
えへっなんて思わず大学の奴らが見たらひいてしまうような口調。
大和は案の定少し頬を赤らめながら俺を睨み返した。
毎朝、眠気眼に目玉焼き。
そして俺の目の前には我が儘な恋人大和。
俺はやっぱりとてつもなく幸せだ。