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アイ、

アイキルユー。




 

「命乞いは…しないのか?

 

カチャリ、と、嫌な金属音。銃口を向けられる。かつて愛した人間に。

俺が、馬鹿みたいに愛していた人間。

 

正樹。俺の、恋人、だった人。

 

気付かなければ、良かったのだろうか。

正樹が、俺の敵の人間だと。けして交わってはいけない人間だと。

 

気が付かなければ、偽りの幸せに身を委ねられたのだろうか…。

愛のまどろみに、身を任せていたのだろうか。

 

敵国のスパイの俺と、この国の防衛の要とも言えるお前。

この国を壊したい俺と、守りたいお前。

初めから、違い過ぎていた。

少しも、俺たちの距離は近くなんかなかった。

 

「しねぇよ…、命乞いなんて…殺すなら、殺せ…」

 

吐き捨てるようにそういえば、正樹は忌々しそうに眼を細めた。

 

 

いつもは、俺を愛おしそうに見つめる瞳が…今は…、

 

「いい度胸だな…、」

 

凍えるように冷たい。

 

じゃり…、と、繋がれた鎖が、やけに重く感じる。

繋がれた手足。

薄暗い廃墟。周りには…、無数の死体。

 

どこか非現実な場面なのに、俺は異様に落ち着いている。

もう、殺されるっていうのにさ。

 

 

「ここで、殺されてもいいのか…?

「…っ」

 

お前に殺されるのなら…それはそれで、本望かもしれない。

だって、お前は、俺を初めて愛してくれた人だから。

初めて、必要としてくれた人間だから。

 

愛してる。その言葉を、その意味を、初めて教えてくれた人だから。

 

だから…、

 

「殺すなら、殺せよ」

 

お前に殺されるんなら、

 

俺にとっては、本望なんだよ。

 

 

 




敵対同士の恋人設定。
スパイの方が、大きな組織の一員で、裏切ったものには死を!みたいな厳しい罰則があるところで
あえて、恋人に殺されようとするのとか好きです。

で、事実を知らない恋人も、殺せず家に監禁→逃避行とか。
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