「人間の壊し方って知ってる?
まずね、否定することなんだ。
弱い人間は、他者から否定されることを嫌う。
一人だったら、まだいい。
それが、二人、三人。
いや、周りにいる全てが敵だったら?
きっと、壊れてしまうだろう。
現実が敵ばかりで。
周りを見ていたくなくて。
人は、否定されることを嫌う。
生きる価値がなくなってしまうから。」
貴方の言葉を、私はぼんやりとした意識の中、聞いていた。
「そんな中で手を差し伸べてくれた人を、信頼するのは当たり前だよね。
絶望の中の光に見えてしまって、当然だよね・・・。
簡単な、洗脳術だよ。私だけは、貴方の味方。
どうしようもない、君に私だけは私は味方だと、そう信じ込ませる」
貴方は私の髪を撫でながら、誰ともなくいう。
正しく。
私が今貴方とともにいる理由はソレだった。
私は全てに否定された。
親にも、兄弟にも、友達にも、恋人にも。
すべてを失った。
すべてを失い、絶望し、死にかけた私に、手を差し伸べてくれたのは貴方だけだった。
「そうして、君は私しか見れなくなる」
そう、私はあなたしか見れなくなってしまった。
「君は愚かだよね・・・。」
そう、私は愚か。
「僕は君を利用しているのに・・・」
そう、知ってるよ。
知っているけど、言いたくないの。
自覚したくないの。
貴方の罠にかかったこと。
貴方の幻想を見ていること。
まだ。
自覚していたくないの・・・。
「ねぇ、君はどこまで壊れるんだろうね・・・」
貴方の、ことのほか、優しい声に涙が溢れそうになる。
どこまで壊れるの?
わかんない。
終わりはどこなの?
わかんない。
だけど、そう、最後の時は、あなたがいい。
貴方に止めをさして欲しい。
「君が僕にもっと壊れることを、僕は願っているよ」
貴方の黒い願いに、私はそっと微笑んだ。