ケトルは祭壇に目を戻した。松明を受けて少女の裸身が朧気に浮かび上がっている。死んでいるのかもしれない――ケトルの背を悪寒が走る。思わず叫んでいた。

「ミーナは? ミーナはどうなったの!?」

「心配せずとも――」

男の仕草はどうにも芝居がかっていてケトルを苛立たせる。

「プリンセスは生きている。妖精界の扉を開いて疲れているのだろう。……元々意識は失っていたのだがね」

「どうせおまえが意識を奪ったんだろうがっ!!」

当推量だったが、どうやら当たっていたらしい。男が髪を掻き上げた。

「……だったらどうだというのだ? 彼女が自らの意思であそこにいることの方が重要だろうに」

「それはっ……!」

ケトルは歯噛みする。自分が強ければ、あの時ミーナに命乞いなどさせなかった。
無理して微笑もうとした彼女の表情を思い出す。
剣の柄を握り締めた。強く、強く。

「それに、只生きて死ぬだけの生を、私の目的の為に使わせてやったのだ。感謝して貰いたいくらいだが?」

「なんだと……」