一次創作小説「風の魔物」A

風が鳴るのは一瞬。次の瞬間には宙に舞い上がった者達が次々と石畳に投げ出された。あちこちで苦悶の声が漏れる。それを一瞥するとサルファーはケトルの元へと飛んだ。
背後から矢の気配が迫る――身を捻って躱す。飛ぶ。矢の射程範囲外へ。

「……ケトル」

少年は動かないが、少なくとも外からわかる傷は無い。どうやらただ気を失っているようだった。
数回、軽く羽ばたいて風を当てる。

「う……」

ケトルが目を覚ました。しきりに頭をさすりながらきょろきょろとしている。

「えっ……おれ、こんなに吹っ飛ばされたの? うそだろ? そ、そうだ、敵は!?」

「粗方打ちのめしておきましたよ。でもまだ弓使いが二人います。儀式に掛かり切りの魔術師達もいます」

光球を消し、少しでも相手から自分達の姿を見えなくする。一気に暗くなった空間の中、サルファーの聴覚は弓使い達の距離を詰める足音を捉える。

「走れますか? 移動を……」

「それはいいんだけれども……」

ケトルは苦笑したようだった。

「テロルと喋る時と雰囲気違うな」

「よく言われます」

主人の性格があれだから、せめて己だけは周囲に丁寧であろうとしているだけなのだが。

模写【緑の筋のあるマティス夫人の肖像】

模写しました。
画材はクレヨンと水彩絵の具です。

緑の筋のあるマティス夫人の肖像
アンリ・マティス

これは模写です。
完成してみたら、あまり似ませんでした。
GW中に絵が描きたい欲が高まったので、かねてより描きたかった模写に挑戦。一ヶ月ほど暇を見つけてはぽつぽつと描いていました。
仕事と家事の繰り返しで毎日のソシャゲも一時凌ぎで、精神の疲弊を自覚し「そうだ、精神の強そうな人物を描こう」と思い至ったのが動機です。まあ精神が死んでいるから描き始めるまで数カ月かかったのですが…。
いけるかと思いましたが肖像画って難しいですね。似ません。何かが決定的に違います。描いている最中は楽しかったんですけどね。

一次創作小説「風の魔物」@

サルファーは斧の刃が己の毛並を掠めていくのを見た。
術が揺らぐ。相手にはサルファーがテロルと入れ替わりで現れたように見えただろう。斧使いの大男が呻く。

「化けて、いたのか……!」

違う。風を操り光の像を生み出し、己にテロルの姿を貼り付けていただけである。
だがサルファーはいちいち否定する気はなかった。既に次の呪文の詠唱に入っていたからである。
気流が渦巻く。
再度降り下ろされる斧をかわし、翼の被膜を拡げ、力強く羽ばたく。
わざわざ光球を生み出したのはケトルを戦いやすくするためと、出来る限り敵の注意を惹き付けるため。
天井近くまで飛翔し、サルファーの術が完成する。
風が旋風と化し、十数人の敵を呑み込んだ。

一次創作小説「防衛戦」F

少年が悲鳴を上げながら吹っ飛び、自分が入って来た扉に激突して動かなくなる。
サイードはいつの間にか扉が閉まっていることに僅かな引っ掛かりを覚えたが、それ以上は気にせず雷火の魔女に向き直る。ちらりと見えた閂は綺麗に元通りになっていた。
風切音が響く。雷火の魔女が立て続けに風の刃を放ち、一対多で戦っている。

「怯むな! 常に二人以上で攻撃しろ!!」

叱咤――祭壇に行かせまいとする鎧兜の男。

「邪魔よあんたら!」

怒声――雷火の魔女から迸る旋風。

「こいつ……まだこんな力を!」

一人一人確実に圧倒されていく。
手薄になった広間を雷火の魔女は走る。ジグザグに動き回り、包囲されまいとする。
祭壇の手前に立つ二人が矢をつがえた。

「くっ……!」

雷火の魔女が身を翻す。
近接戦闘役の傭兵の人数が減るまで待機していた弓使い達――その矢が魔女のマントを、長い髪を、掠める。
どんどん後退を余儀無くされる魔女――暴風で矢を打ち払う。
ばらばらと落ちる矢――サイードの足元にも。
魔法を放った直後に出来る絶対的な隙――サイードはその無防備になった背に駆け寄り、魔女が振り向くにも構わず斧を袈裟懸けに降り下ろした。

「――――!?」

だが、

「……手応えが、無い!?」

サイードは驚愕に目を見開く。
魔女の姿が陽炎の如く揺らぎ、蝙蝠の翼を持つ黒猫が現れた。

一次創作小説「防衛戦」E

雷火の魔女が掲げた腕から光球が生み出され、広くを周囲を照らし出す。
壁際で燃える松明の揺らめきと頭上の魔法の光を受け白刃が煌めく。

「ミーナはどこだっ!!」

少年が吼える。その動きは風の後押しを受け、先程の戦闘よりも、

「精度が上がって、来ている」

サイードは戦斧で少年の攻撃を受け止める。彼の剣筋は真っ直ぐで、決して基礎鍛練を疎かにしていないとわかる。
だがサイードは先程の戦闘で少年の戦い方を見ていた。対し、少年はこちらの戦い方を知らない。
だからサイードは懐に入ろうとする少年の動きを見切り、斧頭で胸元を突き上げた。
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