そうしているうちに広間の天井が開く。そこから見える空は既に異界のものだ。
遺跡が天井を閉じようと抵抗しても、あっという間に内部への侵入を許してしまう。

(駄目……!)

使い魔を連れた娘がエラムを魔術で攻撃するが、それではいけないとミーナは思った。

「無傷……!?」

「遺跡の再生プロセスと同じね。あんた、何をしたの?」

痛みを伴い、ミーナから力が抜けていく。ふわふわとした気持ちは消え去り、失墜への恐怖が迫った。
あの男はミーナから奪った魔力で異界からの魔力を得たくせに、それを自己再生には使わずに、またミーナから奪うのだ。
思えば、終始徹底して他人を自分の道具にする男だった。

(まさかここまでとは思っていなかったけれど……)

そんな相手にこのまま好き放題させておきたくないと遺跡は思った。その意思に引っ張られるように、ミーナにも強い感情が湧き上がった。

(わたしも……そう思います)

どちらともなく告げる。

(元に戻りましょう、お互いのやるべきことのために)

呼応するようにミーナの翅が羽ばたく。飛翔する。肉体に向かって一直線に。
眼下では、異界がエラムを取り込み、醜悪極まりない姿へと変貌を遂げていた。