「ごめん。この中で一番テロルがこの状況を何とかする手を思い付ける可能性が高いって思ったから……」
それを聞いたテロルが苦虫を噛み潰したような顔をする。
「ああもう、とにかく話は後よ! 今は、そうね。あんたの言う通りこの状況を何とかするわよ!!」
水黽は傭兵達と戦っている。ケトルも加勢しようと剣を手に立ち上がった。水の魔法陣の上を転がったせいで服が湿っているが、何度か手足を動かしてみると戦うのに支障は無さそうだった。
そこでケトルは気付いた。
「水……減ってない?」
広間の魔法陣を指差す。石畳の表面に歩くのに困らない程度の凹凸を刻み、そこに水を流すことで描かれた魔法陣。その輝きが、途切れかけていた。水黽の動きも僅かに鈍くなっているように見える。
「あの双剣使いが排水の蓋を壊したからだ!」
テロルが拳を打ち合わせた。革手袋の音がする。
「なるほどね。給水もあれば排水もあるわよね、そりゃ……うっかり見落としてたわ。やるわね、ケトル」
ポン、と肩を叩かれる。
「あっちは傭兵達に任せましょ。彼らには時間を稼いでもらって、あたし達はあたし達に出来ることをするわよ。まずケトル、あんたにはミーナを救出してもらいたいの」