「この食事内容なら、おそらくミーナは植物系の妖精でしょうね。鉱物系なら鉱石を粉末状にするなりして混入するでしょうし」

ケトルは水を口に含み、頭を整理する。

「……ええと、あの男は妖精の力を使って、妖精の世界から力を引き出して、自分のものにしようとしている……?」

テロルは肩をすくめた。

「大まかに言うと、そんなところだと思うわ。ついでに言っちゃうと、妖精郷と繋がるためにこの遺跡を利用するつもりよ」

ケトルは周囲を見回す。大戦時代に建造されたという石造りの遺跡は沈黙を保ったままそこにある。

「五百年前に魔王が世界を掌握しようとし、人間種族やそれ以外の種族に阻止された――」

ケトルは思わず口を挟む。

「勇者が世界を救ったんだ」

テロルは「今それは重要じゃないのよ」と言いたげな顔をした。

「ご、ごめん」

「まーいいわ。……続けるわよ。人間種族達は各地に転移装置を作って、いつでも最前線に駆けつけられるようにした……らしいわ。王国所有の資料によると。だから、ここには『別のどこか』に行くための力が備わっているの。儀式の場として最適じゃないかしら」