「言ってよ、テロル。言いにくそうだけれど、おれは平気だから」

テロルはあからさまに顔を顰めた。頭を掻き、大きく息を吐く。

「なーにが平気よ。あたしでもけっこぉしんどい内容を伝えなきゃならないってぇのに、昨日まで実戦に出たこともないクソガキが生意気言ってんじゃないわよ全く」

「ご、ごめん。でもおれのこと素人扱いしないでいいから……」

「あ、そー。……もぉ言葉選ぶのもバカらしくなってきたわ」

テロルが伸びをする。
猫みたいだ、と思った。

「あたしは依頼主から資料として渡されたエラムの研究概要を閲覧したわ。その研究テーマは異界。あいつ、数十人の少女を生贄に異界の扉を開こうと試みて仲間から大バッシングされたのよ」

「その少女達は……」

「儀式の過程で全員死んだわ」

ケトルは喉を鳴らそうとして、上手く出来なかった。空気が重く伸し掛かってくるのを感じた。